(本記事は、中島聡氏の著書『なぜ、あなたの仕事は終わらないのか』文響社の中から一部を抜粋・編集しています)
「並行して進む仕事」は1日を横に切る
仕事を縦に切り分ける方法は、一つの長期の仕事に集中して向き合える場合にのみ有効です。しかし多くの職種では、複数の仕事を並行して行うことがあります。
ふたたび本の編集者の仕事を見ていきましょう。彼らは無謀にも、ある期間に2冊3冊と並行して本をつくろうとしています。平均的な本1冊の編集に大体5ヵ月程度かかるとしましょう(ここでは、企画立案から文章の校正終了までを編集と呼びます)。
今が4月とした場合、その3冊のうち、本Aは5ヵ月後の9月に、本Bは6ヵ月後の10月に、本Cは7ヵ月後の11月に出るとします。
3冊分の編集が重なっている期間があります。これはきついです。編集者が締め切りを守れないのも無理はありません。実際、多くの出版社の編集者は私に原稿の締め切りをきつく言い渡すのに、原稿チェックは当然のように遅れる「興味深い」方ばかりです。
まず、3冊の編集はいずれも5ヵ月に渡る長期的な仕事なので、これらを縦に切り分けて10日〜14日のブロックにします。そうして切り分けた仕事を、ロケットスタート時間術を使ってこなしていきます。
しかしそれでは、1冊終わるまで次の1冊に取り掛かれないことになってしまいます。先ほど見たように、編集者は同時並行的に本の編集をしなければなりません。これでは本が出せなくなります。だから諦めなければいけないのかと言えばそうではありません。
複数の仕事が並行している場合は1日を横に切れ、です。
仮に1日に12時間仕事をするとしましょう。複数の大きな仕事を抱えている人は、それくらいしないと終わらないでしょう。実際私は、朝4時から夜10時半までですから、1日18時間半ほど仕事をしている計算になります。
難しいと思うかもしれませんが、仮眠も複数回とりますし、午後以降は完全に気持ちを切り「流し」で仕事をしているわけですから、遊んでいるようなものです。つまり、午後以降の「流し」の期間にシームレスに「休息」をとっているのです。
話が労働時間の話に逸れてしまいましたが、大きな仕事を複数走らせている場合、1日を朝・昼・夜の3つに切り分けます。それぞれ4時間あります。そうして朝に1冊目の編集、昼に2冊目の編集、夜に3冊目の編集をしていきます。
考え方の例としては、1日を3つに分割するというものです。12時間を4時間に分割して3つの仕事を行うというわけです。3つなら朝・昼・夜と区切ることが簡単です。
この3つの4時間の中でも、「界王拳→流し」の時間術は堅持します。最初の2日は、ずっと20倍界王拳を使いますが、3日目以降は、仕事始めの2時間に10倍界王拳を使い、残りの2時間は「流し」ます。
要するに、通常の時間術を4時間単位に縮小して3つ並べただけです。基本は変わりません。メールや電話への返事、会議などの雑務も流しの時間にやります。流しの時間は2時間×3回ありますので、その中で適宜こなしていきましょう。
とはいえ1日に3つの仕事を順にやっていくのも大変です。ですから仕事の合間に睡眠をとるのも大事です。昼寝は脳の老廃物を取り除く唯一の方法です。睡眠は積極的に取って頭を上手に切り替えていきましょう。
ただし、並行すると言ってもマルチタスクは絶対にしません。1冊目の仕事をしている時に2冊目や3冊目の仕事のことを考えないようにしましょう。そうした頭の中のマルチタスクを防ぐために、わざわざ1日を3分割しているのです。
いまやっている仕事だけに集中してください。ある仕事をやっている時に、ほかの仕事のことを考えていると、その仕事は終わりません。
多くの大きな仕事を並行して抱えている期間でも、実際には各仕事の納期(この例の場合はそれぞれの本の発売日)はズレているでしょうから、適宜20倍界王拳を使わなければいけない時期を散らすことができると思います。あまりに重なる時は、うまく調整してかぶらないようにしてみてください。
また、1日にメインの仕事を3つ抱えているというのはあくまで一つの例にすぎません。ですからもしも4つも5つも抱えている場合は、1日を4つないしは5つに横に切って下さい。
が……、実際には私は、あまり多くの大きな仕事を並行して抱えて仕事をすることを推奨していません。実際には3つの時点で結構限界だと思います。できれば3つの仕事の並行もやめていただきたいほどです。
ですから、あまりに多くの大きな仕事を抱えている時は、4章でお伝えした、上司に納期延長を申し出る方法を使って抱える仕事自体を減らす工夫をしてみてください。
ここでお伝えした1日を横に切る方法は、あくまで「ロケットスタート時間術を本格導入するための移行期間において、今抱えすぎている仕事を減らしていくための救急措置」だと理解してください。
また、大きな仕事と中くらいの仕事が並行しているような時は、前半8時間:後半4時間に切り分けるのも有効です。
臨機応変にやっていきましょう。決して忘れてはいけないことは、「取り掛かりを前倒しする精神を持つこと」「やる以上はロケットスタートで一気に仕事の全体を終わらせること」です。同時に流しの期間を持つことで最大限のスラックを確保していきましょう。
こうしてあなたの仕事は終わります。
大きな仕事と小さな仕事が並行している場合
先ほど、長期的な仕事をどう進行していくかという話をしてきました。多くの方はこの方法によって、時間をうまく使うことができると思います。
ただ、その方法にあてはめられない仕事をしている方もいると思います。それは大きな仕事と小さな仕事を並行している、というケースです。
たとえば私はその部類に入ります。ソフトウェアの開発を長期的に進行するのと同時に、週に1回メールマガジンを書かなければなりません。
また、私の同僚もソフトウェアの開発をする一方で、毎日色々と新しい技術の勉強をしています。
このように大きな仕事と小さな仕事が重なっている場合、どのようなスケジュールの立て方が良いのでしょうか。
私の仕事の例を見ていきます。仮に今日が火曜日だとします。ソフトウェアの開発とメルマガの両方とも、来週火曜日が締め切りだとしましょう。
この場合私は、木曜日にメルマガの執筆をし、それ以外はソフトウェアの開発をします。
メルマガの発行は火曜日です。ラストスパート志向の人ならきっと「火曜日に書けばいいや」と思うでしょう。そして、メルマガのことは置いておいて、月曜日までソフトウェアの開発にいそしみます。
しかしラストスパートをかけても仕事は終わりませんから、火曜日にメルマガを書く時間が無くなります。そうして火曜日の深夜、満を持して「発行日延期のお詫び」と題したメールを配信する羽目になるわけです。
そうならないための、ロケットスタート志向です。メルマガの執筆を木曜日にやってしまうのはそういうことです。
スタートダッシュが大事だとはいえ、火曜から水曜の間に執筆することはしません。なぜならメルマガはネタ探しの期間が必要だからです。ネタ探しは大事な仕事ですが、とはいえ界王拳を使ってするものでもありません。
ですので、ソフトウェア開発をやりつつ、流しの時間にネタ探しをします。そうすれば木曜日はスムーズに執筆することができます。これであなたの仕事は終わります。
では、大きな仕事に加えて小さな仕事を毎日しなければならない場合、どうすればいいでしょうか。ソフトウェアの開発を行いつつ、新しい技術の勉強をするといった場合です。実際に多くの人が勉強を続けられない現実を考えると、これは結構大変なことです。
こういう場合は、基本の型の「流し」の時間に新しい技術の勉強をするだけです。あなたはすでに勉強をする時間も手に入れていたのです。
これであなたの勉強も終わります。
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