(本記事は、中島聡氏の著書『なぜ、あなたの仕事は終わらないのか』文響社の中から一部を抜粋・編集しています)
英語の勉強をせずに話せるようになる方法
アイルラインド人の女の子をデートに誘いたい場合、英会話教室に通ったりする必要はありません。デートに誘うために必要な英語を調べて、実際に誘えばいいだけです。
約束を取り付けることに成功した後も同じです。食事を楽しみたいのであれば、食事の時に必要な言葉を調べましょう。
長時間話す自信がないのなら、「この後用事があって1時間しかいられないんです」と英語でいう練習をしておきましょう。とりあえず最初のデートの時は、このくらいの準備でいいのではないでしょうか。
これを繰り返していれば、いつしか英語が話せるようになります。
ここで言っておきたいのですが、大事なのは「あなたは彼女とデートがしたくて誘った」ということです。英語の勉強をしたくてデートに誘ったわけではないですよね。
ですから完璧な英語を話すことにばかり気を取られないでください。英語なんてコミュニケーションのための一つの手段に過ぎません。必要がある時だけ調べておけばいいだけです。
洋書を読みたいという動機で英語の勉強をしている人も多いと思うのですが、だったら、辞書を右手に洋書を左手に持って読み出せばいいのです。
「ちょっとそれは……」と躊躇する人は、そもそも英語で何かを読みたいわけではないということでしょう。だとしたら時間の無駄ですから、すでに出ている翻訳書で我慢するか、その本の翻訳版が出るのを待ちましょう。
海外のニュースを読みたいというのも同様です。辞書を引きながら今日から早速読みだせばいいだけです。
ハリウッドで映画を作りたいという人でも同じです。そういった野望を持つ人は、英語を勉強する前に絵コンテを作ってハリウッドに行くべきです。あなたの目標はハリウッドで映画を作ることであり、英語を身に着けることではありません。
もしかすると絵コンテが言語の壁を越えて認められるかもしれません。絵コンテが完成した時に必要なのは自分の絵コンテを英語で説明する能力くらいです。説明のためのスクリプトを作って、それだけ暗記して制作会社に営業にいきましょう。
仮に絵コンテがまだできていないのであれば、英語の勉強どころか、あなたはまずは絵コンテを描き始めるべきです。描き方が分からない?全然問題ありません。絵コンテの描き方を調べて書き出しましょう。
ストーリーの作り方が分からない?まったく問題ありません。ストーリーの作り方を調べてすぐにストーリーの作成に入りましょう。そういう方法を解説した本なんて五万と出ています。
その時には、ぜひロケットスタート時間術を使ってみてください。まずは40%の出来栄えでもかまいません。絵コンテにしてもストーリーにしても、想定の2割の時間で一気に全体を書き上げるのです。枝葉や装飾は、その後の8割の時間をかけてゆったりと付加していけば構いません。
英語の話は決して大げさな話ではありません。私もそういうことをしてきました。マイクロソフトにおけるすべてのプレゼンの場面で、いつも私は自分の作品と少しの言葉ですべてを伝えてきました。言語の壁はそんなに高くもないし厚くもありません。ただ何かを伝えたいという情熱さえあれば、壁は乗り越えられます。
あなたのやるべきことは英語を勉強することではありません。英語を使って何かをすることです。
……と言いながら、中には学生さんや、将来やりたい仕事が資格の必要な仕事である人もいるでしょう。たとえば、専門の資格がないと開業できない建築士や公認会計士、弁護士などの職業を目指している人です。
私はそういった方や学生が大学に進学するために行う本当に必要な勉強を否定しているわけではありません。将来なんとなく役立ちそうだからという程度の思いで資格の勉強をするのは時間の無駄ですから否定しているだけです。
そういった方は、学校や塾の授業の前に、次の授業の範囲の問題を自分で解く(英語だったら次の授業に出る英文を日本語に訳しておく)形で予習をして授業に臨みましょう。これは物理や化学、資格試験の勉強に対しても有効です。
そういった教科の場合、授業の前にまず、次の授業で解説される範囲の問題を解くことを予習としてやって授業にのぞんでください。
こうすると、授業がすばらしく効率的な勉強の時間になるのです。もちろん授業は真剣に受けます。その時意識するのは、解けなかった問題や間違っていた問題がなぜ解けなかったのか、何が間違っていたのかを確認することです。わからなかったところは積極的に質問をすると効率的に理解が深まります。
私はこれを繰り返すことで、ほとんど特別な受験勉強をすることなく早稲田付属高校に受かったので、ぜひ試してみてください。
また、社会人の方がいつ勉強する時間をとればいいかは、すでにお話しています。メインの仕事と並行して毎日ブログを書く時の話と同じで、毎日ブログを書く時間(流しの時間)を予習の時間にあてればいいわけです。
その意味で、独学だと復習のための時間が奪われ、効率が悪いと言えば効率が悪いので、社会人の方は、強制的に勉強(復習)の時間を持てるように、学校に通うことを検討してもいいでしょう。それも流しの時間に組み入れてみてください。
集中しなきゃいけない仕事なんかするな
オーバーワークになる仕事を断り、一つの仕事に集中して取り組むことができるようになったとします。時間術の導入はここから始まります。
といっても、仕事の量を減らす勇気を持ったあなたは、もう本書の目標である時間術の習得を8割終わらせています。あとはペースを崩さず、本書の仕事のやり方をじょじょに身に着けていきましょう。
それで、ここまでの時間術を使っても、どうにも残ってしまうがある問題があります。
それは、どんな技を駆使しても、どうしても集中できない人です。
きっとこの本を読んでいる人、いや読んでいない人も含めてほとんどの人が困っていると思います。
でも私は、そもそも集中力のなさに悩むという行為自体が間違っていると考えています。集中力を要するような仕事をしている時点で違うのです。どういうことでしょうか。
それは、「自分が本当にやりたいことを見つけろ」という、とても単純な話です。言い方を変えて「わがままに生きろ」でも「自分に正直に生きろ」でも「本能にしたがえ」でも良いのですが、結局のところは「一度しかない人生、思いっきり楽しもうぜ」という話です。
集中力を無理に引き出さなければいけない仕事をそもそもするな、ということです。そういった仕事は、本当はあなたがやりたくない仕事であり、そもそもそういう仕事に対して本質的な集中力を発揮するのは難しいという話です。
天職という言葉があります。サッカーの本田圭佑君やアイススケートの羽生結弦君のような「その道の達人」のことを指すと勘違いしている人もいますが、それは少し違います。天職とは、「運命で定められた、天から授かった好きで好きでしょうがない職業」のことです。
子どもが大好きで子どもたちの心をつかむのが誰よりも上手な小学校の先生。30年もパンを焼き続けてきたのにいまだに「もっとおいしいパンを作りたい」と努力し続けるパン職人なんかは天職に恵まれた例だと思います。言いかえれば天職とは、「そのこと自体が傍から見ると苦しかろうが本人にとっては喜びであり、いつまでもやっていたい仕事」のことです。
そもそも本田君も羽生君もそのこと自体が好きで好きでしょうがなくて、努力を努力とも思わない圧倒的な努力を積み重ねているのです。私は、そうじゃないのに大成した人を、未だかつて一人として見たことがありません。
「自分には才能がないから天職なんか見つけられない」とネガティブに考える人もいるかもしれませんが、これも間違いです。重要なのは楽しくて楽しくてしょうがないかどうかの、ただ一点のみだからです。
人生の時間は、その大半を社会人として過ごします。学校を卒業して就職し、現役から退くまでの30年~40年の間、毎日毎日仕事をして過ごします。つまり人生の半分くらいは仕事なのです。
したがって、仕事をいかに楽しめるかが人生における重要な問題になります。天職を見つけられるかどうかは人生という時間を左右するのです。
テニスで世界のトッププレーヤーになるためには、努力だけではなくて才能も必要です。生まれ持った瞬発力や敏捷性、あるいは単純に身体の大きさがキャリアを左右することはスポーツの世界ではよくあります。テニスコーチをしている人たちも、最初はトッププレーヤーを目指していて途中で挫折したのかもしれません。
しかし、それでもテニスを離れられないからテニスに関わっているのです。小さなスポーツクラブのコーチでもいいから、1分1秒でもテニスに触れていたい。大好きなテニスを1人でも多くの人に教えて、その楽しみを共有したい。
私はそんな生き方はすばらしいと思うのです。それこそ天職と呼ぶべきものだし、人生とはそうあるべきだと思うのです。
そんな天職に就いた時、あなたはもう集中力を必要としない世界に突入していけるのです。
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