(本記事は、グレッチェン・ルービン氏の著書『人生を変える習慣のつくり方』文響社の中から一部を抜粋・編集しています)

気をそらすことは良い習慣の維持に役立つとはいえ、当然ながらデメリットもある。たとえば、わたしは仕事中に新着メールを知らせる音が鳴ると、仕事に集中できなくなる。メールが届いたとわかれば、読まずにいるのはすごくつらい。だから、数分使ってメールの着信音をどうにかして消した。また、仕事中に気がそれないようにするため、執筆は仕事部屋ではなく自宅近くの図書館で行うようにもしている。オフィス勤めではないので同僚の邪魔が入ることはないが、自宅でも邪魔が入る可能性はある。でも図書館なら、電話もドアベルも鳴らないし、メールも届かない。

自宅のワンルームマンションを仕事場にしている友人は、昼寝とつまみ食いの誘惑を避ける方法を編みだした。毎朝起きるとベッドを整え、朝食を食べ、その後は仕事に没頭する。ベッドに座ることも、昼食の時間を除いてはキッチンに入ることも自分に許さないという。作家のジーン・カーは、執筆時間の半分を自家用車のなかで過ごした。そこにいれば、4人の幼い息子に邪魔されることはないし、書く以外にすることもない。

図書館を仕事場にすることで邪魔が入る問題は解決したが、あるとき、自宅でも仕事ができるよう自分を鍛える「べき」ではないかという思いが頭をよぎった。メールやSNSの誘惑に対抗できるだけの自制心を身につけるべきではないか? 荷物を抱えて図書館に行かなくてもすむくらいに、自分で自分を管理すべきではないか?

でもすぐに、それは違うと思い至った。いまの仕事の習慣はすごく自分に合っている。自宅にいるときは、メールやSNSなど、オンラインが関係する仕事に取り組み、執筆に集中したいときは図書館へ行く(コーヒーショップのときもある)。なぜ無理に変える必要がある? わたしは図書館が大好きだ。そこで仕事をすることが楽しい。自宅のマンションから1ブロックの距離なので、移動する時間も大してかからない。新鮮な空気を吸って太陽を浴びながら歩くのもいいことだし、往復の途中でちょっとした休憩をとることだってできる。

それに、わたしは自分のことを知っている。家でネットの利用を制限しようと思ったら、かなりの自制心が必要になるだろう。でも図書館にいれば、ネットに誘惑されることは絶対にない。自制心を無駄に費やす必要がどこにある? 自分を変えるより、自分の環境を変えるほうが簡単だ。

また、短い中断時間を設けると、ほかのことに気をとられにくくなる。長時間集中したいときに短い休憩をとって別のことをすると、集中力が長続きするのだ(あくまでも短い休憩であること)。友人は、行き詰まるとジャグリングをする。「休憩に最適」だと彼女は言う。「楽しいし、身体を動かすし。かなり集中力もいるけど、頭は使わないし。それに、あまり長くはできないから、休憩も長くならない」

わたしにもこの類いの習慣がある。図書館のなかを歩きまわって、目を引くタイトルの本を探すのだ。わたしはそれをするのが大好きで、この方法でたくさんの良書を見つけてきた。これは悪い習慣だと思っていたのだが、そうではなく良い習慣なのだと認識を改めた。時間を無駄に使っているように思えていたが、実は最高の気分転換になっていたのだ。実際、わたしは3時間続けて書くことはおろか、45分も続かない。たびたび休憩をとらないと、もたないのだ。長く続けるために、ときどき休むことを自分に許す。わたしにはこのやり方が合っているようだ。

人生を変える習慣のつくり方
ルービン・グレッチェン
作家。キャリアのスタートは法律家で、アメリカ初の女性連邦最高裁判事サンドラ・デイ・オコーナーの書記官を務めていたときに、作家になりたいと気付いて転身した。作家となってからは、習慣、幸せ、人間の本質を追求し、世間に大きな影響を与えている。著作は多岐にわたり、なかでも『The Happiness Project』(『人生は「幸せ計画」でうまくいく!』)はアメリカでミリオンセラーとなり、30カ国語以上に翻訳された。習慣や幸せについて探求したことを報告するブログやポッドキャストも人気で、本だけでなくオンライン活動のファンも多い。彼女のポッドキャスト番組は、iTunesの「2015年ベスト番組」に選出された。また、彼女自身も、アメリカでもっとも尊敬を集める女性司会者として知られるオプラ・ウィンフリーにより、「2016年オプラが選ぶスーパーソウル100」に選ばれている

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