(本記事は、細木 聡子氏の著書『女性管理職のためのしなやかマネジメント入門 〈信頼〉をつなぐ、チームビルディング 』NTT出版の中から一部を抜粋・編集しています)

キャリアウーマン
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面談の基本は聞くこと

管理職の聞く技術

面談の基本は「聞くこと」。

私は、もともと1対1で話をして、その人の悩みを聞いたり、一緒に問題の解決策を考えたりすることが苦ではありませんでした。最近では、部下に限らず、どんな人と面談をしても、信頼関係を築き、その方のパフォーマンスを引き出すことができるようになってきたと感じています。

周りの部下を持つ管理職やリーダー的な立場にいる方たちから打ち明けられる悩みを聞くと、部下との面談をやっても愚痴や文句を言われるだけで、なかなか解決には至らないという声も多いようです。

聞き方にもまた、質があります。どのような姿勢で、どのように聞くかによって、引き出される話も全く変わってきます。

管理職のみなさんからの相談を受けて、私は自分がやってみてよかったと思う面談のやり方を棚卸ししてみました。すると面談の始まりから終わりにかけて、5つの段階があることがわかってきました。

[部下が生まれ変わる面談術5ステップ]
ステップ① 面談の目的とゴール確認
ステップ② 相手への「承認」
ステップ③ 課題、悩みヒアリング
ステップ④ フィードバック
ステップ⑤ 今後に向けて

部下との面談で成果が出ないと悩むみなさんに、その面談の方法を伺ってみると、この5つのステップのうち、①と③と④しか意識されていないようでした。裏返すと、残りの2ステップ、②と⑤が面談の質を決めるといえそうです。

[部下が生まれ変わる奇跡の面談術5ステップ]


ステップ1 面談の目的とゴール確認

部下との面談を行うときは、まず最初に、面談を行う目的と最終的な到達点(ゴール)を確認します。目的とゴールの確認は次の流れで行うとその後の面談がスムーズに進みます。

▼最初にお礼を言う
忙しい中で時間をとってくれた部下に、まずはお礼を言いましょう。

「忙しいなか、面談に来てくれてありがとう」

など、一言で構いません。この一言で、雰囲気がぐっと柔らかくなるはずです。ぜひ最初にお礼を言いましょう。

▼目的とゴールを確認する
次に目的とゴールを確認します。目的は、なぜ今回の面談をするのか、ゴールは面談が終わったときにはどんな状態となっていることを目指したいのかについて話をし、相手と意識合わせを行います。

▼時間の確認
最後に面談時間の確認をします。

「今日の面談は○時○分まで。○○分間行います」

などと伝えて、相手と確認をしましょう。


ステップ2 相手への「承認」

そして本題に入る前に、大事なことがあります。

それは、部下の仕事ぶりについて、よいところを伝える、ということです。普段、それこそ面と向かって伝えられない、部下のよいところを、この機会に伝えましょう。

「毎朝、元気な声で挨拶してくれて気持ちがいいです」
「子育てで時短の◯◯さんの仕事のフォロー、助かってます」

など、どんなささいなことでも構いません。ささいなことでも構わないのですが―でも、「よいところ」を伝えるためには、どんなささいなところでも、その人をよく見る時間が必要ですよね。その人について本当に考える時間を持たなければなりません。

その人がいまどんな仕事をしているのか
そこでがんばっているのはどんなことか

ほとんどの人は、必ずどこかでがんばっています。意識的にがんばっていて、上司は気づいていないだろうなと思っていることもあれば、がんばっていることに、本人が気づきもしていないこともあります。むしろ、こちらのほうが多いかもしれません。

というのも、「がんばっているところ」というのは、案外その人にとって「当たり前のこと」だったりするからです。「毎朝挨拶をする」ことを意識的に心がけていることもあれば、その人としては挨拶することがごく自然なことである場合もあるでしょう。

前者であれば、「あ、見てくれているんだな」と思ってもらえるかもしれません。

後者であれば、その人にとって当たり前なことを「人は喜んでくれるんだ」と励みに思ってもらえるかもしれません。いずれにしても、あなたが相手のことを考え、「ちゃんと見た」事実は相手にきっと届きます。

これは、まずこちらから部下のことを認めている(承認している)、信頼している、と伝えるステップです。この後、ちょっと厳しいフィードバックを返すときならなおさらです。うまくいく面談の前提は、みなさんが部下を信頼しているかどうか次第だと思います。まずは、こちらから部下へ、その信頼を伝えることです。そして、もし、

「この人は自分のことをわかってくれている」

と思ってもらえたら、その後のフィードバックが耳に痛いものだったとしても、真摯に受けとめてくれることが多いのです。

反対に、普段は見ていないのに、その時々の上司の都合で、気になったことをただ伝えてくるだけだと感じられたら、たとえ相手を思ってのフィードバックだったとしても、はね返されてしまうでしょう。

まずこちらから信頼を伝え、部下からも信頼してもらうこと。そのことでフィードバックを真摯に受けとめ成長につなげてもらう土壌を、この段階でつくります。

近代セールス
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ステップ3 課題、悩みのヒアリング

「承認」のステップを通して、相手に自分の意見を受けとめる土壌ができてきたところで、いよいよ本題に入っていきます。ここでも、自分が話をするのではなく、まずは部下からの話を聞く姿勢で臨むことがポイントです。

面談はインタビューです。

「相手8 割:自分2 割」

と私はよく言っていますが、話す配分は、部下が8割、自分が2割ぐらいの配分でちょうどよいと思います。

上司である管理職のみなさんが話をしてしまうと、部下は話しを聞くだけになってしまい、部下の本音を聞くことができなくなるばかりか、部下自身も自分のことを振り返って考えることが少なくなってしまうでしょう。

気づきや内省には、ちょっとした「間」も必要です。部下の様子をよく受け取って、話しすぎないように気をつけます。

上司であるみなさんは、部下に質問することによって、相手から課題や悩みの答えを引き出す関わり方で接することが望ましいです。

そして、ヒアリングをするときは、

現在 → 過去 → 未来

この順番で、質問してみてください。経験的には、この順番が相手が自然に考えられる流れのように思います。本音を話してもらいやすくなるはずです。


ステップ4 フィードバック

部下から、課題や悩みのヒアリングをして、本音や気づきを聞いた後は、今度はみなさんが部下に対してフィードバックをする番です。

管理職のみなさんの中には部下の課題や改善点については、できれば嫌なことは言いたくないので、いつも言わないですませている方もいるかもしれません。

私も部下に改善点を指摘するのはかなり苦手なのですが、それは自分が部下から嫌われたくないという「自分の都合」が理由の場合が多いと思うのです。しかし部下がより成長するためには、上司である自分から伝えることが一番効果的だと考えて、きちんとフィードバックするようにしています。

相手のためになる、という自信と部下への信頼があれば、揺らがずに伝えることができるでしょう。その信頼は部下にも伝わります。みなさんも、自分目線を離れて部下の成長に何が必要か、という視点からフィードバックを行うことを大切にしてください。

フィードバックの効果的な手順、伝え方については、この後に触れていきます。


ステップ5 今後に向けて

面談の最後には、面談のまとめと今後に向けた意識合わせを行って、クロージングとします。

▼面談のまとめを行う
これまでの面談の中で決定したこと、決められなかったことの意識合わせします。

最初に設定した、面談のゴールに照らし合わせて確認していきますが、1回の面談で時間内にゴールまで行かないこともあります。1回の面談で何がなんでもゴールまでたどり着くようにしてしまうと、焦りが出て、無理やり納得させようとしてしまったり、部下の言うことを十分に聞くことができなかったり、と本末転倒の状態になってしまいかねません。何回でも時間をおいて面談してもよいというつもりで臨みましょう。

そのほうが結果的にはよい形になっていきます。これも「時間を味方にする」発想のひとつかもしれません。

▼今後に向けた意識合わせ
今回の面談で決められなかったこと、ゴールまでたどり着けなかったことなどを改めて話しをするための今後のスケジュールの意識合わせします。

具体的には、次回の面談の時期や内容について擦り合わせをします。

ここで、次回の面談までに、

考えておいて欲しいこと
行動してみて欲しいこと

など、課題を出すことも非常に効果的です。こうすることで、部下の自立★的な行動を促し、自らの力で問題解決できる力がついて来ます。これも面談だからこそできることのひとつです。

▼最後の一言
そして、最後の最後で、他に言いたいことはないか、必ず確認するとよいです。

「最後に改めて言っておきたいことはある?」 
「何か言い残したことはある?」

などと、聞いてみましょう。

ここで、本音が出てくる可能性が非常に高いです。

私も部下と面談したときに、相手から出て来た最後の一言が、実は一番重要なことだった、ということが何度もあります。この一言が聞けなかったら、誤解したまま進めてしまっていたということもたくさんありました。

上司である管理職のみなさんは、部下をミスリードしてしまうことを防ぐためにもぜひこの最後の一言を部下から聞くようにしてみてください。

女性管理職のためのしなやかマネジメント入門
細木聡子
株式会社リノパートナーズ代表取締役。 中小企業診断士/しなやかリーダー塾塾長。1990年筑波大学卒業後、NTTに入社。管理職に昇格し、大規模システム構築プロジェクトのマネージャーに就任。部門間・上層役員間・社外機関の調整役として抜擢され、人と組織をつなげるパイプ役として活動の幅を広げる。10年間で述べ1,000人のマネジメントに携わり結果を残す。2018年4月より、人材育成コンサルティング会社・株式会社リノパートナーズ設立。

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