(本記事は、小林 尚氏の著書『開成流ロジカル勉強法』クロスメディア・パブリッシングの中から一部を抜粋・編集しています)

4技能を活用して効率を飛躍させる

ロジカル
(画像=PIXTA)

毎日1時間の勉強を継続するといっても、「それだけでいいのか?」と不安になってしまう方がいます。みなさんの多くはこれまで学校の定期試験や受験勉強、もしかすると資格試験にも挑戦したかもしれませんが、そういった学習にかなりの時間を投下してきました。そのような今までの経験を踏まえると、1時間という勉強時間は決して長い時間ではありませんし、「その程度しか勉強しない(できない)なら、成果が出なそうだからいっそのことやめてしまおう」と考えてしまう気持ちは理解できます。

当然、勉強時間は長い方が有利です。私もそれは否定していません。しかし、みなさんもご存じのようにただ机に座ってぼーっとしている時間やあまり思考せずただ唸っているだけの時間は、勉強時間として決して優れたものではありません。場合によっては勉強した気分になってしまうという点で、むしろデメリットの方が大きい可能性もあるでしょう。

そして日々を忙しく過ごしている人にとっては、長時間の勉強時間を毎日確保することが難しいことも事実です。朝7時や8時に家を出て、夜の19時や20時に帰る。炊事や洗濯、時には知人や同僚との付き合いなど、生活において無駄な時間ではないものの、勉強の観点から言えば、奪われてしまう時間はたくさんあります。そんな私たちにとって、勉強できる時間はかなり限られているのかもしれません。

ですから、その限られた時間を有効活用して、最大限の効率化を図ることが肝要です。「そんなことはわかっているよ!」と言われてしまいそうですが、普段から自身の学習に疑問を持たず改善をしない人こそ、効率化を図れていないということも真実であり、ぜひ耳を傾けてほしいのです。

そして勉強の効率化の根幹となるのが4技能の活用だと私は考えています。これまで効率のよい暗記の方法、スケジュールの組み立て方、参考書(学習教材)の選び方といった「ミクロ」の視点での効率化は数多く議論されてきましたし、本に限らずインターネットでもたくさん情報が取得できます。しかし、「マクロ」の視点はどうでしょうか。最近になってやっと英語学習における4技能が叫ばれ、大学受験制度の変更が進んでいるようですが、そもそも勉強において4技能をフル活用して学ぼうという姿勢が私たちに根付いていないことは明らかです。

4技能とは「読む」「聞く」「書く」「話す」によって構成されます。通常「勉強」と呼ばれるものの場合、なんとなく教材を読んだり講義を聞いたりノートをとったりしているだけで、この4つの力を活用しきれていません。もっと強烈に4技能を意識してインプット・アウトプットの効率を最大化させていく必要があるでしょう。

そしてこれらの能力は相互に関係しつつも独立している側面があります。たとえば英語の読解ができてもリスニングができないとか、作文ができてもスピーキングが苦手などといった傾向はしばしば発生します。もちろんなにかの試験に突破することだけが学習のゴールであればそれでよいのかもしれませんが、実際に使える力を育てるのであれば、4つの力を活用する必要があるし、逆に4つの力を用いて勉強するノウハウを身に付けてしまえば、それは一生使えるみなさんの懐刀になるといっても過言ではありません。

4技能×ロジカル勉強法

では実際に勉強をしていく中で4技能をどのように活用していくのでしょうか。「4技能を使う」という言葉はあくまで「読む」「聞く」「書く」「話す」を利用して勉強するということと同値であり、具体的にどのように勉強効率を飛躍させるのかを説明しきったことにはなりません。

そこで登場する要素が「ロジック」です。「ロジック」や「ロジカル」という言葉は今やほとんどの人が知っている言葉です。ビジネスシーンだけでなく学校の授業、さらには就職活動の際に学生に求められる要素とまで言われることもあります。

しかし、ロジックの本質を理解し活用できている人はほとんどいないといってよいでしょう。それゆえ、私の周囲にも「ロジカルだな」と感じる人はいらっしゃいますが、そういった方も多くの場合は無意識にロジックを使いこなしているケースが多く、「ロジカルではない人にどうやってロジックを教えるか」という場面に立たされると意外と苦労するケースがあります。

ロジックという言葉そのものを、日本語として訳せば「論理」や「道理」ということになります。これは間違ってはいませんが、説明としては不十分です。「リンゴとはなにか?」という問いに対して、「appleです」と答えているようなものです。物事の定義や説明を求められた場合、通常はその物事が有する本質的な要素、ないしはそれに類似する他の物事との差異を述べるべきであり、この場合であれば「木から収穫できる」「赤くて丸い果物」だとか「甘い」「青森県や長野県でたくさん生産されている」といったことを述べるべきです。

では、正しくロジックを説明するならばどのように表現すべきなのかというと、「ある程度多くの人が理解できるように、説明を順序立て、分解すること」と表現するのがよいでしょう。もう少し言い換えれば「順序(プロセス)」及び「分解」という方法を用いることで、「多くの人に理解してもらえる」ものとして表現が完成されている状態です。

たとえば、「雨が降りそうだから傘を持っていく」という文章は、ロジカル(論理的)だと感じられます。それは、雨が降ることと傘を持っていくことの因果関係(順序・プロセス)が多くの人にとってなじみのある考え方であり、理解するのに苦労しないからです。同様に「日差しが強いから帽子を被っていこう」とか、「長時間勉強していたら疲れてしまった」といった文章でも、これは成立します。

しかし「3時間働いたから300万円稼いだ」はどうでしょうか。これを発言した人が時給100万円の仕事をしており、それが信じられるのであれば論理的だと感じるかもしれませんが、普通であれば1時間働いて得られる金額は1000円前後からすごく高くても1万円くらいです。そう考えると300万円という数字は私たちの感覚からものすごく乖離しており、論理的であると感じるのは難しいかもしれません。もしくは論理的であると感じてもらうためには、補足の情報が必要になってきます。

話をまとめると「多くの人に理解してもらう」ためのツールであるロジックを用いることで、「自分自身にとってわかりやすい」そして「アウトプットした時に他の人にもわかりやすい」状態を維持しながら勉強を進めていくことが効率的である、ということに他なりません。授業を聞いてとったノートがぐちゃぐちゃすぎてまとめノートを作り直したり、何度か読んだ教材の情報が整理しきれなくてまた読んだり。そんな経験はみなさんにもあると思います。これらの行為が完全に無駄とは断定しませんが、なるべく手数を減らし、限られた時間の中で最大限の効率化を図るためにロジックを用いるべきなのです。

開成流ロジカル勉強法
小林 尚(こばやし しょう)
株式会社キャストダイス 代表取締役 YouTuber 1989年生まれ。埼玉県出身。高校受験で私立開成高校に入学し、弁論部キャプテンとして活動。現役で東京大学文科Ⅰ類に入学。卒業後、経営コンサルティング会社の戦略部門を経て、株式会社キャストダイスを設立。得意領域は教育×コンサルティング。大学在学中には、大手予備校に勤務し、東大・医学部合格者を多数輩出する他、各種経営指標で全国1位を度々獲得。コンサルタント時代には新規事業開発、人材・組織変革に取り組み、3回のプロジェクト表彰を受賞。近年はYouTubeチャンネル“CASTDICE TV”で受験・キャリアに関する動画を配信中。大学や教育機関での講演・セミナーも実施している。

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