(本記事は、小林 尚氏の著書『開成流ロジカル勉強法』クロスメディア・パブリッシングの中から一部を抜粋・編集しています)
予備校講師はなぜ授業が上手いのか?
みなさんがこれまで生きてきて、最も身近な「話が上手い人」は誰でしょうか。おそらく、多くの人にとっては予備校講師が共通の答えになると思います。もちろんあまねく予備校講師は話が上手いというわけではなく、実際に下手な人もいます。逆に予備校講師以外の方、たとえば学校の先生でもみなさんのご友人でも、話が上手な方はいるでしょう。声がきれいとか、トーク力があるといった側面で言えば、テレビに出ているアナウンサー・芸能人・芸人の方もプロフェッショナルであることは疑う余地がありません。
しかし「話が上手い」という定義を「論理的に話す」という領域に狭めて考えた場合、やはり予備校講師は1つのイメージになることは間違いありません。とくに有名講師と呼ばれるような方の多くの講義は、論理的に美しく構成されており、いわば作品のように思えるケースすらあります。ではなぜ、彼らの話が論理的であると感じるのでしょうか。
第一の理由として、彼ら自身が学習範囲をマスターしているという点が挙げられます。講師である以上、生徒に教えるような内容は当然理解・習得しており、その完成された知識を組み合わせて論理的にわかりやすく説明しているという背景があります。
第二の理由は彼らが繰り返し講義をしているという点です。大学受験の範囲はおおよそ決まっており、生徒のレベルも毎年ほとんど変わりませんから、多くの講師は毎年同じ話をしているといっても過言ではありません。このように述べると批判を受けてしまいそうですが、当然毎年工夫を凝らしたり、変化をつけたりしていることは理解しています。しかし学習範囲をどのように解説するかという大前提はコロコロ変わるものではないので、そこまで誤った認識ではないと言えます。
第三の理由は、彼らが時間制約の中で話しているという点です。「話す」際には時間をゆっくりかければ、ある程度順序立てて整理をして話すのはそこまで難しいことではありません。しかし講師は限られた授業時間の中で、かつなるべく多くのことを受験生に理解させなければならないという点で、通常私たちが会話しているよりもかなり厳しい時間制約の中で「話す」という行為と向き合っています。
これらからわかるのは、逆にこういった要素を理解し、実行することで論理的に話せるようになるということです。今回は予備校講師を例に挙げましたが、これらの要素を有する方であれば、論理的に、わかりやすく話しているケースはたくさん存在します。講師業全般だけでなく、営業のセールスパーソン、コンサルタント、ショップ店員など、あらゆる職業でもその可能性を秘めていると言えるでしょう。もちろん実際に「話す」際にはもっと注意すべきポイントや技術があるのでそういった部分が欠落していては一定の職業に就いていても話すのが下手な方はたくさんいらっしゃいます。まずは大前提として
- ・学習内容を理解している・繰り返す・時間制約がある
ことによって、論理的に話すステップになるということです。さらに言えば論理的に話せる状態を作り上げることが、学習内容の理解にもつながります。
※画像をクリックするとAmazonに飛びます