(本記事は、小林 尚氏の著書『開成流ロジカル勉強法』クロスメディア・パブリッシングの中から一部を抜粋・編集しています)

「読む」ことが、すべての始まり

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(画像=PIXTA)

いよいよこれから実際の勉強法の話に入っていきますが、4技能の「読む」「聞く」「書く」「話す」のうち、最初に取り組むべきことは「読む」力を高めることです。なにかを学ぶ際に、いきなりアウトプットするというのは基本的には不可能であり、ひとまずはインプットから入る必要がありますから、「読む」か「聞く」ということが勉強のスタートになるのは自明のことです。

昨今ではありとあらゆる情報が書籍やインターネット上の文章として公開されており、なにをするにせよ、「読む」という行為は学習のスタートとしてコスト的・心理的に接しやすいものとなっています。他人からなにかを教えてもらう行為、本書における「聞く」という行為は、言うまでもなく4技能のひとつであり重要なことには違いありませんが、学習を始める際のハードルは若干高くなってしまうのが事実です。

たとえばみなさんがこれから英語学習を始めてみようという時に、いきなりオンライン英会話の講座に申し込んで外国人のレッスンを受けたり、英語塾に申し込んで週に1回授業を受け始めたりするよりも、インターネットのウェブサイトでまとめられた英語の表現を眺めてみたり、本屋に売っている参考書を買って読んでみたりする方が圧倒的に取り組みやすいでしょう。

もちろんある程度学習が進んでいる場合や、身近に教えてくれる人物がいる場合などは「聞く」ことから入るケースが有効な場合もありますが、その場合でもなんらかの教材を利用したり、まとめられた情報を閲覧することは避けられないわけで、やはりすべての学習の根源に「読む」という行為が存在しているといっても過言ではありません。

では、実際に読んで勉強する際のポイントはなんでしょうか?

この質問をすると、多くの方は「正確に読む」とか「情報を漏らさず読む」などと答えるケースが大半です。当然これらの読み方が間違っているわけではなく、よい心がけであることは事実なのですが、もっと根本的に重要なことがあります。それは一言でいえば「構造的に読む」ということです。本書風に言えば「ロジカルに読む」と考えても差し支えありません。

本書で私がこのように書いている文章もそうですし、新聞、ニュースメディア、ブログなど、一定の整理のもとに書かれた文章には「構造」が存在します。その文章に存在する構造を捉えながら、すなわち情報を整理しながら理解する、というのが構造的に読むということです。

そして構造的に読んでいくことに成功した結果、「正確に」「重要な情報を漏らさずに」読めるのであり、正確に読むとか情報を漏らさないといったことは読む際のポイント(プロセス・原因)なのではなく、結果であると言えます。野球のバッターにとって「ボールを遠くに飛ばす」ことは結果であり、そこに至るためのプロセスが「こういう風にバットを振る(フォーム)」「タイミングをとる」「上手く振るために肉体を鍛える」といったことになるのと同じです。

もちろん世の中に存在するあらゆる文章が、まったく同じルール、表現の技法を用いて記述されているわけではありません。私たちが普段何気なく書いている文章の構造をいちいち細かく推敲しながら書くとは限らないように、そして人それぞれ書き方の「癖」が存在するように、表現の方法は多様です。そしてもっと言ってしまえば、構造的に欠陥のある文章も多々存在するわけです。ですから、時にはみなさん自身が構造を補いながら「読む」ことも必要になります。

安易な音読から構造的理解へ

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(画像=nito / Shutterstock.com)

巷において「読む」ことをテーマにした勉強法はいくつも紹介されていますが、その中でも近年有力なのが「音読」という手法です。私が受験業界に携わっていることもあり、英語学習における音読の重要性はだいぶ前から説かれていましたが、英語にかかわらず音読の有効性は広く知られるところとなりました。今では音読をメインテーマとした著作も多数見受けられますし、みなさんも目にしたことが少なからずあることでしょう。

私自身、大学生の頃にTOEIC の学習をしており音読の重要性は身に染みて理解しています。私はTOEIC のリスニングを苦手としていたので、公式問題集の音源を(今はほとんど見かけない)音楽プレイヤーに入れて聞きながら、毎日何十回、何百回と音読していました。

しかし音読には意外な落とし穴が存在していることをご存じでしょうか? 一般的に「読む」という行為には、文字通り読むということだけでなく「理解する」という要素も含まれます。

TOEICのリスニングのように「読めてしまえば理解は難しくないもの」や「暗記するための文章」であれば効果は大きいと言えますが、「そもそも文法的にこの文章はどのように成り立っているかといった解説」のように、ただ情報を頭に入れるだけではなく、読んだうえで理解が求められるようなものにはマッチしません。

もう少し具体的に説明すると、学習は一般的に「概論(大きな流れ)」→「ルール・法則」→「基礎知識」→「実践・活用」→「例外・応用」という流れで構成されています。ものによってはテーマが大きすぎて概論なしでルールから入る場合もありますし、基礎知識とルールを行ったり来たりする場合もあります。ですが、概ねこの流れで進んでいくわけです。その中で基礎知識の習得や実戦練習をするケースであれば、情報を頭の中に入れる手法として音読は有効ですが、そもそものルールを理解するためには音読というよりも、より「理解」に重点を置いた読み方が求められるわけです。

そして「理解」に重点を置いた読み方が、ロジカルな、構造的な読み方なのです。ロジカルな状態とは「順序(プロセス)」及び「分解」という方法を用いることで、「多くの人に理解してもらえる」状態です。すなわち、ロジカルな読み方とは、順序立てや分解という方法を用いながら読むことで、無理なく理解できる読み方であると言い換えることができます。

ですから、音読を否定するわけではありませんが「読む=音読」というあまりにも安直な思考回路はいったん捨てて、おそらくまだ多くの方が慣れ親しんでいない「ロジカルに、構造的に読む」ことに、優先的に取り組んでいただきたいです。なお、一部の方からすればロジカルな音読は存在しないのかという疑問が発生しそうですが、これは存在します。ロジカルな読み方を会得しており、スピーディーにこれをこなすことができる人であれば、声に出して読んでいようが、黙読をしてようが関係ありません。その人にとってはどちらもロジカルな読み方を実践できているわけです。この段階まで「読む力」を高めることを目標にするのも、勉強法習得の醍醐味かもしれません。

開成流ロジカル勉強法
小林 尚(こばやし しょう)
株式会社キャストダイス 代表取締役 YouTuber 1989年生まれ。埼玉県出身。高校受験で私立開成高校に入学し、弁論部キャプテンとして活動。現役で東京大学文科Ⅰ類に入学。卒業後、経営コンサルティング会社の戦略部門を経て、株式会社キャストダイスを設立。得意領域は教育×コンサルティング。大学在学中には、大手予備校に勤務し、東大・医学部合格者を多数輩出する他、各種経営指標で全国1位を度々獲得。コンサルタント時代には新規事業開発、人材・組織変革に取り組み、3回のプロジェクト表彰を受賞。近年はYouTubeチャンネル“CASTDICE TV”で受験・キャリアに関する動画を配信中。大学や教育機関での講演・セミナーも実施している。

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