(本記事は、小林 尚氏の著書『開成流ロジカル勉強法』クロスメディア・パブリッシングの中から一部を抜粋・編集しています)

文章から箇条書きへ

箇条書き
(画像=PIXTA)

それでは、箇条書きの解説に進みましょう。箇条書きとは、いくつかの項目を分けて書き並べる形式です。項目は単語ないし文章ですが、2文3文……と長くなる場合は、あまり箇条書きとしての役割を果たさないので、基本的に1文までと考えてください。同様に1文があまりにも長くなるようでは箇条書きとして機能しないですから、1文をなるべく短く表現することも大切です(目安は40~50文字以下です)。

さて、箇条書きそのものの方法についてはいまさら語る必要はないでしょう。「・」(なかぐろ、ビュレット、ブレットなどと呼びます)を用いたり、チェックマーク「✓」、数字の記号「①」などを用いたりして、細かく情報を整理します。

箇条書きを用いて表現する場合、ある特徴に気をつけなければなりません。それは「情報量が多くなると一見して構造を捉えるのが難しくなる」という点です。そもそも可視化された構造(ストーリーロジックやストラクチャーロジック)と比較した場合、箇条書きは図形を描かないぶん、素早く書くことが可能です。しかし、一方でどのような論理構造なのかわかりづらいとも言えます。少し例を見てみましょう。

開成流ロジカル勉強法
(画像=開成流ロジカル勉強法)

図(上)の例は「1日のスケジュール」ということで、時系列のストーリーロジックになっています。これを箇条書きにした場合、要素が5つ並ぶことになりますが、とくに違和感はないでしょう。図(下)はストラクチャーロジックとしてカレーの材料を分解したものですが、これも箇条書きにして違和感はないと思います。しかし、箇条書きの方だけ見た場合、どうでしょうか? 一見して瞬時に、この箇条書きの並びはなんの軸で整理されているのか、わからない可能性があります。

今回のように、「1日のスケジュール」や「カレーの材料」といった要素として単語が並ぶだけであれば理解に時間は要しませんが、これが多少文字数のある文章だとかなり迷う可能性もありますし、内容的に難しい文となれば瞬時に判断するのはほぼ不可能だと言えます。結局、中身をしっかり読まなければ構造がわからないという、通常の文章と変わらなくなってしまいます。そしてさらに問題となるのは、次のような事例です。

開成流ロジカル勉強法
(画像=開成流ロジカル勉強法)

図ではストーリーロジックの中に分岐があります。図示されていれば一瞬でこれを理解することができますが、箇条書きではどう表現すべきでしょうか。多少工夫の余地はあるかもしれませんが、わかりづらいことに変わりはありません。上の図の例ではどうでしょうか。ピラミッド構造がより詳細に、もしくは部分的に細かくなる場合、箇条書きではインデント(字下げ)を用いて情報の粒度(レベル感)の違いを表現することができます。それ自体は便利なのですが、結局情報が細かくなってきたり入り組んだりするとどの部分を読んでいるかわからなくなるので、やはり図示されている方がわかりやすいということになります。

このように説明していると箇条書きのデメリットばかりに触れているので、なんだか使えないもののように感じてしまう方もいるかもしれませんが、そのようなことはありません。箇条書きの強みは前述の通り「速く記述できる」ことであり、図示を始めてしまうと箇条書きのスピードには勝つことはできません。その意味では複雑なものを理解するために書くよりも、忘れないための備忘録としての用途には非常に適していると言えるでしょう。

最強の箇条書きを身に付ける

箇条書きのデメリット、弱い部分を知っていただいたうえで、箇条書きをより便利するための技術を解説していきます。本来であればいきなりこの解説をしてもよいのですが、「なぜそんなことをするのか」を知っていただくために前のパートで事例を紹介しました。そして今回は3つの手法を紹介していきます。

まず、「ストーリーロジックとストラクチャーロジックの入れ込み」です。前述の通り箇条書きをしただけでは、これらがどのようにまとめられているのかわからなくなる可能性があります。そこで一工夫行い、下の図のような記号を書くことで、どのようにまとめられているかを瞬時にわかるように準備しておくのです。

開成流ロジカル勉強法
(画像=開成流ロジカル勉強法)

これらの記号を書くこと自体には1秒ほどしかかからないですが、これを付記しておくだけで情報同士の結びつきが明確になります。たったこれだけの工夫ですが、後から見直した時に何度もこれらの情報の結びつきを考察する必要がなくなるという意味では、意味ある時間短縮だと言えるでしょう。また、ストーリーロジックやストラクチャーロジックで情報を並べるため、各要素のレベル感(粒度)は統一しておくとよいでしょう。

次の手法が「因数分解法」です。因数分解といえば数学の式変形の方法であり、みなさんも触れたことがあるでしょう。X²+2xy+y²=(x+y)² は有名な公式ですが、ここまで難しいことはやりませんのでご安心ください。

必要なのは ax+ay=a(x+y) という考え方だけです。要は「同じ要素を見つけて括りだす」ことだけです。例を見ていきましょう。

例①
・昨日は学校へ行った。
・昨日は塾へ行った。
・昨日は友達の家に行った。

これらには「昨日」と「行った」という要素が共通しているので、これらを括りだしてしまいましょう。すると次のようになります。

例②
「昨日行った場所」
・学校
・塾
・友達の家

これだけでも情報がすっきりして、格段にわかりやすくなりますし、そもそも書く分量が減っているので勉強時間の短縮にもなります。もう少し例を見てみましょう。

例③
・数学のテストは80点だった。
・英語のテストは90点だった。
・国語のテストは70点だった。
例④
「テストの点数」
・数学:80
・英語:90
・国語:70

繰り返しになりますが「同じ要素を見つけて括りだす」ことだけで大丈夫です。これをするだけで情報がすっきりし、後から読む時間も削減できます。これを行う理由は箇条書きの要素が長くなると、結局なにを整理しているのかわからなくなるからです。それぞれの情報はなるべく端的に表現されるべきであり、そのためには共通の要素を括りだしたり、不要な情報は排除したりすることが必要です。不要な情報は心がけていればそこまで大量に入り込んでしまうことはないため、共通の要素の括りだしが勉強における重要ポイントとなります。

そして最後のポイントが「具体化」です。「言葉の選び方」とも言えますが、情報を記載する際になるべく具体的な表現を使うということです。早速ですが、先ほどの例をもう一度見てみましょう。

例②
「昨日行った場所」
・学校
・塾
・友達の家

おそらく通っている学校は1つですから、学校はこのままでも構わないかもしれませんが、塾にはいくつか通っているかもしれませんし、友達も何人かいるかもしれません。重要なのはその情報が示すものが「一意」に決まるかということです。「一意」とは言葉の意味や値が1つに決まることです。ユニークであるとか、固有であると考えても問題ありません。せっかくわざわざ「書く」ことをしているのに、1つに決まらない情報を記載するということは、読み直した時にもう一度それがなんだったかを検討することになります。それでは時間がもったいないですし、あらかじめ1つの意味に絞れるように記載しておくべきです。

箇条書きの技術を3つお伝えしましたが、どれも難しいことではありません。しっかりと意識して活用いただければ今すぐにでもできることです。「書く」という時間がかかる行為であるからこそ、少しだけ加えるスパイスのような感覚で、しかし忘れずにトッピングしてあげればしっかりとした「味」の箇条書きを作成することができるのです。

開成流ロジカル勉強法
小林 尚(こばやし しょう)
株式会社キャストダイス 代表取締役 YouTuber 1989年生まれ。埼玉県出身。高校受験で私立開成高校に入学し、弁論部キャプテンとして活動。現役で東京大学文科Ⅰ類に入学。卒業後、経営コンサルティング会社の戦略部門を経て、株式会社キャストダイスを設立。得意領域は教育×コンサルティング。大学在学中には、大手予備校に勤務し、東大・医学部合格者を多数輩出する他、各種経営指標で全国1位を度々獲得。コンサルタント時代には新規事業開発、人材・組織変革に取り組み、3回のプロジェクト表彰を受賞。近年はYouTubeチャンネル“CASTDICE TV”で受験・キャリアに関する動画を配信中。大学や教育機関での講演・セミナーも実施している。

※画像をクリックするとAmazonに飛びます