ボーイングといえば最新鋭旅客機「737MAX」の墜落事故を覚えている人も多いことだろう。最初の事故は昨年10月、インドネシアのライオン航空の旅客機が首都ジャカルタを離陸して間もなく墜落し、乗員乗客189人が犠牲となった。続く今年3月にはエチオピアの首都アディスアベバを離陸したエチオピア航空の旅客機が離陸直後に墜落、乗員乗客157人が犠牲となっている。

わずか5ヵ月の間に相次いだ2つの航空事故。その影響でボーイングの業績は苦戦を強いられているが、最近の株価は意外と底堅く推移しているようにも見える。ウォール街の市場関係者からは「737MAXの運航が再開すれば株価もV字回復するとの思惑もあるようだ」(トレーダー)との声も聞かれる。とはいえ、FAA(米連邦航空局規制当局)や各国の規制当局は慎重な姿勢を崩しておらず、予断を許さない情勢だ。

今回はボーイングの最新動向についてリポートしたい。

2019年の旅客機納入数は半減する見通し

ボーイング,株価
(画像=SteveMann / shutterstock, ZUU online)

ボーイングの2019年7~9月期決算は、売上高が21%減の200億ドルとなった。同期の民間機の納入が前年同期の190機から62機へ減少したことが響いた。今年1~9月の納入機数は302機で前年同期の568機から47%減少している。一方、純利益は11億7000万ドルで前年同期(26億3000万ドル)比で50%超減少した。3年ぶりの赤字を記録した4~6期からは回復したものの依然として苦戦を強いられている。

ボーイングは墜落事故を起こした「737MAX」について、年内に運航再開の許可が得られるとの見通しを示している。見立て通りに年内再開が実現すると最悪期を脱する可能性もないとはいえないが、ウォール街のアナリストからは「不確定要因が多く予断を許さない」と慎重な声も聞かれる。ちなみに、ボーイングは運航停止に伴う航空会社等への補償費用として今年4~6月期に49億ドルを計上しているが、再開が来年以降にずれ込んだ場合は追加費用が発生する可能性が濃厚となる。

また、来年は大型旅客機「787ドリームライナー」の減産を明らかにしたこともマイナス要因である。787ドリームライナーの生産ペースは、今年に入り月間12機から14機に引き上げていたが、来年以降は2年間にわたりペースを20%落とすという。ボーイングによると、2019年の旅客機納入数は400機程度と前年から半減する見通しであるが、737MAXの運航再開時期の不透明や787ドリームライナーの減産を加味すると「業績がさらに悪化するリスクも否定できない」(前出アナリスト)情勢のようだ。

V字回復か? それとも底割れか?