夢の新素材「セルロースナノファイバー(CNF)」が現実買いの局面を迎えつつある。自動車では阿波製紙(3896)のCNF製品を使った部材がコンセプトカーに採用されたことで株価が急騰し、3日もストップ高まで買われた。住宅や家電向けにも需要のすそ野が広がり、関連企業の商機につながりそうだ。

CNF
(画像=PIXTA) ※画像はイメージです

CNFは植物繊維をナノレベル(ナノは十億分の一)まで細分化して抽出した新素材。鉄と比べ、重量は五分の一と軽い一方、5倍の強度を持つ。自動車などの素材に使えば軽量化によるエネルギー効率の向上が見込まれるほか、植物由来のため環境性にも優れる。

CNFは食品や化粧品といった分野に先行して採用され、三菱鉛筆(7976)がボールペンのインクに混ぜて用いたほか、日本製紙(3863)は紙おむつの材料にしている。自動車にも本格的に使われるようになれば、市場規模は飛躍的に拡大する見通しだ。

京都大学やトヨタ自動車(7203)、デンソー(6902)、ダイキョーニシカワ(=DNC、4246)などの産学連合が、2016年度から自動車向けCNFの研究を続けている。直近開催された東京モーターショーでは、初のコンセプトカーが出展された。エンジンフードやフロアにおいて、阿波製紙が開発したCNF混抄紙による成形品が使われている。

自動車への採用はコストや安全性の厳格な評価に時間を要していたが、実車に近い形が示されたことで一般的な注目度が増した。また、高いハードルを乗り越えたことで、今後は家電や建材、産業用資材などにも一気に広がる公算が大きい。精密機器メーカーのモリマシナリー(岡山県赤磐市)は、CNFだけを材料とする高強度の歯車を開発。再生医療に役立てる研究も進められている。

中越パルプ工業(3877)は21年4月にも高機能CNFのパイロット工場が稼働する。13年からサンプル品の出荷を続け、量産の準備を進めてきた。同社はセルロース素材の表面に金属膜を成型させる特許技術を持ち、CNFを使った導電性材料の研究も行っている。CNFを使った電子ペーパーなどの商品化が想定される。

プラスチック製品のタカギセイコー(4242・JQ)もCNF複合の車両部品の開発に取り組む。1月の大型展示会にも出展し、研究成果をアピールした。パソコンやスマートフォンなどIT製品への展開も期待される。小型で手掛けやすい銘柄特性が魅力だ。

このほか、星光PMC(4963)や第一工業製薬(4461)、大手製紙メーカーの王子ホールディングス(3861)や大王製紙(3880)、独自技術でCNFを開発する大阪ガス(9532)などをマークしたい。製造装置では、CNFと樹脂を組み合わせて製品化する日本製鋼所(5631)も浮上する。(12月4日株式新聞掲載記事)

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