(本記事は、渡部 卓の著書『40代から伸びる人 40代で止まる人』きずな出版の中から一部を抜粋・編集しています)

疲れをとる食事はビタミンB、鉄分、チロシン

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(画像=BravissimoS/Shutterstock.com)

食事では栄養バランスが重要ですが、とくに30代から注意したいのは塩分、糖質、脂質のとりすぎです。最近は糖質制限など、炭水化物を意図的に減らす食事術もありますが、極端に減らすことを私はお勧めしません。バランスと腹八分目。

これを守れば、体に悪い、ということはないでしょう。さらには飲酒習慣のバランスコントロールです。

ただ、疲労回復という意味においては、ビタミンB1は積極的にとりたい栄養素です。これは糖質を代謝させるときに必要とされ、豚肉や胚芽米、そば、納豆、豆腐などに多く含まれています。

鉄分も現代人は不足しがちな栄養素なので、意識的に摂取したほうがいいでしょう。鉄分は血液中で酸素を運ぶ役割を果たすヘモグロビンの構成要素なので、鉄分が不足すると、血液を通じて全体に酸素が行き渡らなくなるのです。そうすると、動悸や息切れ、全身のだるさが現れ、集中力の低下などを招くようです。

なお、鉄分は「ヘム鉄」と「非ヘム鉄」に分類されます。鉄分は食べ物に含まれていても体内に吸収されにくい栄養素ですが、ヘム鉄のほうが吸収も良いとされています。

ヘム鉄を多く含むのは、レバーや赤身の肉、赤身の魚、貝類などです(非ヘム鉄を多く含むのはほうれん草や小松菜などの緑黄色野菜、ひじきなどの海藻類、大豆、卵黄などです)。

また、チロシンというアミノ酸は、精神的な疲労に効果を発揮します

チロシンは神経細胞の興奮や抑制を伝達するアドレナリンやノルアドレナリン、ドーパミンなどの神経伝達物質の原料となり、神経や脳の働きをサポートするのです。

アドレナリンやドーパミンは脳を興奮状態にしてやる気を起こさせます。そのため、うつ病の改善、認知症の予防に効果的だとされています。

チロシンが多く含まれるのは乳製品や大豆、魚卵、バナナなどです。また、チロシンは空腹時に糖質と一緒に摂取すると吸収がいいとされていますから、バナナが適しているでしょう。

私はビタミンB6とB12、そして葉酸、鉄分、グリシン補給のサプリを少し服用していますが、一定の効果はあるように思います。これらは100円ショップなどでも気軽に入手が可能です。

また、喜怒哀楽などメンタルコントロールに大きく関係するのが自律神経なのですが、こちらも食事が影響します。私は中国の武漢市によく調査研究で出張するのですが、そこに暮らす人々は精力的で元気です。彼らは香辛料をたっぷり使った料理をよく食べるのですが、実際、中国の香辛料は自律神経を整える漢方薬として長い歴史を持っています。

日本の食事なら、カレーの香辛料でも同様の効果が期待できます。カレーでよく使われる胡椒、シナモン、ジンジャー、ガーリックなどは体温調整、食欲不振、睡眠障害を改善するとされています。

首が「真っ直ぐ」になってはいないか?

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(画像=Ralph Lear/Shutterstock)

現代人の体でもっとも疲れやすいのは「目」でしょう。デスクワークで基本的にパソコンの画面を見続けている人も多いと思います。あるいは、最近は移動中もスマホの画面を見続けている人が多いでしょう。

そもそも人間の目は、日中は交感神経を活性化させて遠くに焦点を合わせ、夜間などには副交感神経を高めて近くに焦点を合わせるようにできています。

そのため、交感神経が活性化しているときに近くのものを見るのは不自然な状態で、自律神経の疲弊と眼精疲労を引き起こす原因になるのです。

また、最近はスマホの使いすぎによる「ブルーライト」「ストレートネック」なども健康リスクとして問題になっています。

ブルーライトはパソコンのモニターやスマホの画面に使われるLEDが多く発する光で、眼精疲労を誘発するとされます。

ストレートネックは言葉の通り、首の骨が真っ直ぐになる症状です。人間の首の骨は本来、ゆるいカーブを描いて頭蓋骨を支えています。しかし、スマホの画面を見るときのようにうつむいた状態が続くと、無理な姿勢が常態化して、首の骨が真っ直ぐになってしまうのです。この状態になると、頭の重さがダイレクトに首や肩に来ます。

人間の頭はボウリングの球くらいの重さがあるのですが、湾曲した首の骨は、うまくそれを分散させます。ストレートネックになるとそれができなくなるため、血液の流れや神経網などを圧迫し、こちらも眼精疲労のほか、頭痛、肩こりなどの症状を引き起こすのです。

こうした症状を軽くするには、スマホをいつも固定した持ち方をしないようにします。左手、右手に適度に持ち替えたり、重さをささえる指を工夫して移動させたりします。基本は適度に休憩を挟むことが効果的です。

もちろん、働き方改革のなかで集中が重視されていますので、完全にパソコンの前から離れるのは難しいかもしれませんが、数分間だけでも目をつむり、休ませてあげるだけでもまったく違います。またそのようなことを上司が率先して行うことにより、部下たちも実行しやすくなるのです。

パソコンの場合、連続で使用するのは長くても1時間程度が限界でしょう。

1時間くらい作業をしたら、目を閉じたり、背筋を伸ばしたり、胸を反らせて目・首・肩の緊張を取るような工夫をしてみてください。

パソコンでも注意喚起をしてくれる無料アプリも一般化していますし、スマホではそのような時間での集中力を管理し、習慣化するのを助ける「ポモドーロ」というアプリもあり、私も活用しています。ただ最初は簡単にスマホのタイマーをセットするだけでもいいと思います。

40代から伸びる人 40代で止まる人
渡部 卓(わたなべ・たかし)
1979年大学卒業後、モービル石油(株)に入社。その後、米コーネル大学で人事組織論を学び、米ノースウェスタン大学ケロッグ経営大学院で MBAを取得 (1986~88年)。1990年日本ペプシコ社入社後にアメリカ本社勤務を経て、AOL、シスコシステムズ、ネットエイジでの幹部を経験し、2003年(株)ライフバランスマネジメント代表取締役社長に就任。2014年4月帝京平成大学現代ライフ学部教授(常勤)就任。 職場のメンタルヘルス・ハラスメント対策、人生 100年時代のワーク・ライフコーチングの第一人者として、講演、企業研 修、新聞・雑誌連載、TV出演等マスコミでの実績は海外も含めて多数に上る。

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