(本記事は、渡部 卓の著書『40代から伸びる人 40代で止まる人』きずな出版の中から一部を抜粋・編集しています)

凡人でも習慣化できるすごい方法

習慣
(画像=marekuliasz/Shutterstock.com)

本書ではさまざまなアドバイスをお伝えしてきましたが、いずれの内容も頭では納得し参考になったと思っても、それが「習慣化」でき良い結果を生み出さなければまったく意味がありません

やってはみたけれど、続かなくて、結局三日坊主で終わってしまったということでは、意味がないばかりか自分の不甲斐なさ、自己嫌悪からさらに落ち込んでしまいます。

これには、いま続けてしまっている悪い習慣をやめる、ということも含まれます。たとえば、いまはスマホやSNS依存の方が増えています。電車内でも、あるいは職場でも、少し時間ができるとフェイスブックやライン、インスタグラム、ツイッターをチェックする人ばかりです。

もちろん、SNSは必ずしも無駄ではありません。使いようによっては自分を成長させることもできるでしょう。ユーチューブなどには優れた教育コンテンツが無料で公開されていることもあります。

しかし、あまり見すぎては時間の無駄遣いです。そうわかっていても、ついつい見てしまう方が多いのではないでしょうか。学生のなかには授業中にもSNSを手放せない依存状態になっているケースもあります。中国の名門大学でもゲーム依存で授業や宿題を無視し、退学していく学生が増加して大きな問題になっています。日本でもスマホ依存の予防キャンペーンが必要だと思います。

このようにSNSを見すぎることは、明らかに悪い習慣とも言えそうです。しかし、いきなりゼロにすることは簡単ではありません。たとえばSNSに費やす時間を1日1時間から30分まで減らせれば、有効活用できる時間が30分増えます。

1ヶ月や1年単位で考えればこの積み重ねはすごいインパクトにつながります。

そうしたら、その時間を自分の成長のための時間に使うのです。たとえば、本を読むとか資格取得のための勉強、あるいはスポーツ、趣味の時間にしてもいいでしょう。そうすれば、必ずなんらかの成長はできるでしょう。

とはいえ、人間の意思はとても弱いものです。とくに自分1人でなにか目標を掲げ、そのための努力をコツコツ続けるのは、至難の業と言えるでしょう。

そのためにもっとも効果的な方法が「コーチング」なのです。

日本でコーチングというと、少年野球やサッカーのコーチのように、熟達者が一方的にものごとを教えることをイメージされることが多いのですが、それはコーチングの本質ではありません。私がお伝えするのは、習慣と行動を変えるお手伝いを人に頼むということです

たとえば最近では、ダイエットの分野でコーチングを活用して成功している企業にライザップがあります。私の知人でも減量に成功した人は複数います。

これまでダイエットを売りにしてきた会社は、食べ物やサプリメント、運動器具、DVDなどを販売するだけで、実行は本人に任せるものがほとんどでした。

そういったダイエット商品はきちんと続ければ効果があるのかもしれませんが、本人が続けられなければ意味がありません。

ライザップはその点、客とトレーナーがマンツーマンになり、ちゃんと食事を制限しているか、ちゃんと運動しているか、習慣に落とし込んでいるかをチェックしているようです。よい習慣を身につけるためのフォローをしていく、これこそがまさに、コーチングの本質なのです。

自分1人でがんばっているつもりでも、現実にはいくらでもサボることができます。しかし、定期的に連絡をとって途中経過や成果を報告する相手がいると、それだけで抜群に続けやすくなるのです。

エグゼクティブほどコーチングの力を知っている

エグゼクティブ,テーラースーツ
(画像= LuckyImages / shutterstock.com)

アメリカにはスポーツだけではなく、ビジネスの分野におけるコーチングのプロがたくさんいます。生活習慣を変えたり、考え方を変えたりすることをサポートする専門家たちです。心理学やビジネスの博士号をもつビジネスコーチは珍しくありません。

私も、いわゆる企業のエグゼクティブ層の人たちに対して、こうしたコーチングを行っています。エグゼクティブの人たちは、習慣の力がいかに偉大であるか、そして、悪い習慣やハラスメントになりかねない言動を変えることがどれだけ大変で、難しいことであるかを理解しているのです。

以前、私のところにある一部上場企業の社長が相談に来たことがありました。健康のためにお酒を減らしたいが、仕事上のパーティも多く、どうすればいいだろうか、という相談です。付き合いでの飲み会だけでなく、ストレスが多くどうしても酒量が増えてしまうということでした。

すでに説明したように、健康管理は「ワーク」「ライフ」「ソーシャル」のすべてのフィールドの土台になるものですから、非常に重要です。

さて、私は彼に、週数回ある飲み会のうち、3回に1回、または週に2回はノンアルコールで通すように進めました。近年のノンアルコールビールの味は進化していますし、ウーロン茶だけで料理を楽しんでもいいはずです。

私は彼と定期的に面談し、「今週はどのくらい飲み会に参加したのか」「そのうち、アルコールを摂取しなかった飲み会はどれくらいあったか」を確認しました。

当初、「飲み会でアルコールを飲まないなんて我慢できない!」と思っていた彼でしたが、実際にやってみると、お酒を飲まなくても食事と会話だけで十分楽しいし、明らかに翌日の体調もいいということに気づいたのです。

もし、彼が1人で「飲み会でお酒を飲むのをやめよう」と決断し、飲み会の回数を減らしたり、アルコールを完全に遮断したりしたら、続かなかったでしょう。

しかし、私と相談しつつ、その成果を報告し、さらに実際に行動してみたときの自分の心境を説明し、フィードバックをもらうことで、驚くほど早く、簡単に習慣を変えることができたのです。

コーチの存在は抑止力にもなります。彼は私と「最低週に2回はノンアルコールにする」という約束を交わしたわけですから、飲み会の席でも私の顔が浮かんだと言うのです。彼もこんなコーチングがあるとは驚いたし、中堅の部下たちにも広めたいと評価しています。

こういう適度な緊張感を30代からスタートするなら、人間の薄弱な意思を手遅れにせずに矯正するのに役立つわけです。

40代から伸びる人 40代で止まる人
渡部 卓(わたなべ・たかし)
1979年大学卒業後、モービル石油(株)に入社。その後、米コーネル大学で人事組織論を学び、米ノースウェスタン大学ケロッグ経営大学院で MBAを取得 (1986~88年)。1990年日本ペプシコ社入社後にアメリカ本社勤務を経て、AOL、シスコシステムズ、ネットエイジでの幹部を経験し、2003年(株)ライフバランスマネジメント代表取締役社長に就任。2014年4月帝京平成大学現代ライフ学部教授(常勤)就任。 職場のメンタルヘルス・ハラスメント対策、人生 100年時代のワーク・ライフコーチングの第一人者として、講演、企業研 修、新聞・雑誌連載、TV出演等マスコミでの実績は海外も含めて多数に上る。

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