「永遠に若いまま、生き続けたい」という人類の見果てぬ夢が、イモータル・テクノロジー(Immortal Technology)により、現実に一歩一歩近づいている。

2025年までに6100億ドル(約66兆7137億円)に成長すると予想されているイモータル・テクノロジー市場は、専門家の期待通り、「今後10年間で最大の投資のチャンス」となるのだろうか。

「不死」より「不老」重視、現代のイモータリティ

Hyejin Kang/shutterstock.com, ZUU online
(画像=Hyejin Kang/shutterstock.com, ZUU online)

近年、多数の企業や研究機関、投資家が、人類の歴史を変える可能性を秘めたイモータリティ(不死)の研究に取り組んでいる。ただし、小説や映画といった架空の世界のイモータリティに対し、現実の世界のイモータリティの特徴としては、単に生命を永遠に維持するよりも、心身ともに充実した生活を送る上で必要な、「若さ」の維持を重視している点にある。

医学やテクノロジーの進化、健康意識や生活環境の向上などにより、多くの国で人間の平均寿命が上昇傾向にある。つまり、ある程度のライフ・エクステンション(延命)は、既に実現しているということだ。

抗老化医学を追究する非営利団体Coalition for Radical Life Extension のディレクター、ジェームズ・ストロール氏いわく、「完璧な健康管理を一貫して行った場合、人間は約125年生きられる」段階に到達しているという。

問題は、多くの人の体は、125年もの間、正常に機能し続けられない点にある。たとえ125歳まで生きたとしても、最後の数十年間を寝たきりの状態や苦痛に悩まされながら過ごすのであれば、それは本当の意味での長寿といえるのだろうか。

人間が健康かつ幸せに長生きするためには、平均寿命とともに「寿命の質」を向上させる必要がある。

Alphabetやジェフ・ベゾス氏も投資する「イモータル・テクノロジー」

イモータル・テクノロジーは、こうした着眼点に基づき、アンチエイジング、ライフ・エクステンションなどにより、「若さと健康を維持しながら、寿命を延ばす」ための技術である。

大手からスタートアップまで、様々な企業が巨額の資金と人材、労力を投じ、細胞老化を抑制・回復する方法の模索から、嚢胞性線維症やパーキンソン病、アルツハイマー病などの難病の治療法の開発まで、広範囲なイモータリティの研究に、イモータル・テクノロジーを活用している。

2013年に設立されたAlphabetの傘下バイオテック企業Calico は、大手IT企業によるイモータル・テクノロジー事業の代表例だ。「人々がより長く、健康的な生活を送るための方法を発見する」 ことをミッションに掲げ、マサチューセッツ工科大学(MIT)とハーバードが共同で運営するブロード研究所(Broad Institute of MIT and Harvard)との提携のもと、加齢や加齢に伴う疾患に関する研究を進めている。

また、Amazonの創設者であるジェフ・ベゾス氏とPayPalの創設者であるピーター・ティール氏は、アンチエイジング・バイオテクノロジー・スタートアップ、Unity Biotechnologyに出資している。

ゲノミクスからAIヘルスまで

市場における需要の高まりに伴い、イモータル・テクノロジー市場は、2019年の時点で既に1100億ドル(約12兆302億円)規模に達している。バンク・オブ・アメリカ の予想によると、CAGR(年平均成長率)28%のペースで成長を続け、2025年までに少なくとも6100億ドル 規模 に成長す る。同社は、イモータル・テクノロジーが、「今後10年間で最大の投資のチャンスになる」と見込んでいる。

しかし、次世代リジュベネーション(若返り)や加齢修復治療とひとことにいっても、各企業が研究・開発を行っている領域は広範囲に及ぶ。一般的な具体例をいくつか挙げてみよう。