2019年も早いもので8月に入り、学生や子どもたちは夏休みのまっただなかですね。この時期、休み中の課題だった「アサガオの観察」を思い出す人もいるかもしれません。
実は、このアサガオ、江戸時代には投資商品だったことをご存じでしょうか。江戸時代には、「植物に投資する」という一大ブームがあったのです。 そこで、今回は「江戸庶民が当時どのようにしてアサガオで投資を行っていたのか」について解説します。

「花癖将軍」と園芸ブーム

じぶん銀行
(画像=PIXTA)

花癖(かへき)あり……江戸幕府の第2代将軍である徳川秀忠についての記録の中に、こうした記述が残っています。秀忠だけではなく、初代将軍の家康、第3代将軍の家光も大の花好きで、この3人はそろって「花癖将軍」などと呼ばれることがあります。太平の世が訪れた江戸時代に入り、園芸は国民的ブームを巻き起こしました。

その火付け役となったのが、この3人の将軍の花癖だったともいわれ、一般庶民や武士から各藩の大名たちにまで広くその文化が広がっていったのです。当時は、品評会なども盛んに行われたほか、この時期に刊行された植物辞典や園芸書も多数あることが知られています。園芸とともに盆栽ブームも巻き起こり、それまでは上流階級の人たちの趣味だった盆栽も、庶民に広まっていきました。

参勤交代、「より喜ばれる花を」

江戸時代の園芸ブームは、「趣味的に楽しむもの」として広まった側面もありますが、実は別の一面性も持っています。それは、「投資」としての園芸です。
江戸時代、各藩の大名が交代で江戸に暮らす「参勤交代」という制度が始まりました。各藩の大名たちは、参勤交代のたびに将軍に喜ばれる花を献上しようと、珍しい変種の花や美しい花を探すことに力を注いだのです。

こうした背景もあり、「美しい花を栽培すること」がより多くのお金に変わるようになってきます。人々は品種改良などによってより色鮮やかな草花を誕生させたり、育種技術の向上に取り組んだりしながら、投資として園芸に取り組むようになりました。商人だけではなく、武士も投資としての園芸に取り組むようになります。

江戸時代の後半は、武士の生活も決して豊かではなく副業的に取り組む武士も少なくなかったようです。給料がなかなか上がらない会社員が副業で稼ごうとしている現代と、何となく似ていますね。
跡を継いだり、跡を継げなかったりする武家の次男坊や三男坊が一攫千金をねらって園芸に熱中することもあったという話です。

江戸時代の投資ライフの特徴

こうした江戸時代の人たちにおける投資ライフの特徴とはどういった点でしょうか。

  • 好きなことや身近なことが投資対象となったこと
  • 育成に中長期的な努力をしたこと
  • 評価がつくことを楽しんだことなど

「好きこそ物の上手なれ」ということわざがあります。実は、日本人の植物好きは江戸時代のはるか前から始まっていたのです。そのようすは、歌集や詩集、浮世絵などにも草木に関する作品が多数収められています。こうした日本人に親しまれやすかった園芸が投資対象となったことで、より文化の発展が加速したといえるでしょう。

中長期的な努力を惜しまなかった結果、さまざまな品種改良などにもつながり、より園芸マーケットが広がっていったことも着目すべき点です。アサガオの品種改良のほか、桜や菊などでもさまざまな品種が生み出されました。日本の桜としては誰でも知っている「ソメイヨシノ」もこの時期に誕生したといわれています。

いまやガーデニングの定番である「斑入り(ふいり)植物」を育てる技術も、当時の人たちの投資熱が手間を惜しまなかったため、江戸時代に発展したとされているのです。
「アサガオや斑入り植物の原種からまれに現れる突然変異体を選びぬき、それを保存して品種を成立させる」という日本独特のバイオテクノロジーの発展にも寄与していきました。園芸文化をより豊かにしたともいえるでしょう。

江戸庶民から私たちが学ぶべき点は?

令和時代に入った私たちが江戸時代の人たちの投資ライフから学べる点はあるのでしょうか。現代との共通の部分を模索してみると下記の2つのポイントがクローズアップできます。

  • 自分の関心がある分野に中長期的に投資を続ける
  • その分野についての知識をつけ、投資戦略についても工夫を凝らしていく

こういった地道な努力を行い続けることで、より大きな成果を上げることにつながります。また、日本独特のバイオテクノロジーの発展を江戸時代の人たちの投資熱が下支えしたように、現代においても投資によって間接的に企業の技術開発に貢献できることも着目すべきポイントです。投資とは、より大きなリターンを求めるためのものですが、技術の発展にも貢献することが期待できます。

夏休みシーズン、小さいころに育てたアサガオに思いを馳せ、改めて自分にとっての投資とは何かを考えてみてはいかがでしょうか。(提供=auじぶん銀行)

執筆者:株式会社ZUU

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