国内企業物価は原油相場を反映し上昇

企業物価指数
(画像=PIXTA)

1月16日に日本銀行から発表された企業物価指数によると、2019年12月の国内企業物価指数は前年比0.9%(11月:同0.1%)と、2ヵ月連続の前年比でプラスとなった。事前の市場予想(QUICK集計:前年比0.9%、当社予想は同1.0%)を小幅に上回る結果となった。一方、消費税率引き上げ分を除いた12月の国内企業物価は、前年比▲0.7%(11月:同▲1.5%)となり、前月から下落幅が縮小したものの、前年比マイナスでの推移が継続している。12月の企業物価指数は、消費増税によって前月同様1.6%pt押し上げられた。

足元の原油相場を反映し、石油・石炭製品(消費税を含むベース)が前年比0.9%と11月(同▲8.3%)の大幅なマイナスから上昇に転じ、前年比寄与度で前月より0.64%pt(11月:▲0.58%pt→12月:0.06%pt)押し上げ幅が拡大したことが企業物価指数の上昇に寄与した。

国内企業物価指数は前月比では0.1%の上昇となった。前月比で内訳をみると、石油・石炭製品が前月比2.0%(11月:同1.8%)と3ヵ月連増の上昇となった。ガソリン(11月:前月比1.2%→12月:同:2.1%)、灯油(11月:同3.0%→12月:同:3.1%)、軽油(11月:同2.9%→12月:同:3.0%)などの石油製品が上昇幅を拡大させたほか、輸入先である米国での需要増加により液化石油ガスが前月比3.1%(11月:同13.1%)と上昇が続いていることなどが石油・石炭製品を押し上げた。その他、下落が続いていた銅価格の上昇を受けて、非鉄金属が前月比1.4%(11月:同0.4%)、台風の影響で高騰が続く鶏卵などの農林水産物が前月比0.8%(11月:同0.2%)と前月よりも上昇幅が拡大したことも押し上げ要因となった。

企業物価指数
(画像=ニッセイ基礎研究所)

輸入物価は4ヵ月ぶりに上昇

12月の輸入物価指数(1)は、契約通貨ベースでは前月比0.6%(11月:同▲0.4%)と4ヵ月ぶりにプラスに転じた。12月のドル円相場は前月比0.3%の円安水準となったことから、円ベースでは前月比0.9%(11月:同0.1%)と3ヵ月連続の上昇となった。

企業物価指数
(画像=ニッセイ基礎研究所)

契約通貨ベースで輸入物価指数の内訳をみると、金属・同製品が前月比▲0.1%(11月:同2.6%)とマイナスに転じたほか、電子部品・デバイスや情報通信機器の下落により、電気・電子機器が前月比▲0.1%(11月:▲1.7%)と4ヵ月連続で下落が続いているが、原油価格の上昇により、石油・石炭・天然ガスが前月比2.3%(11月;:同▲1.1%)と大きくプラスに転じたことが輸入物価の上昇要因となった。

為替レートは一進一退の動きが続いているが、原油価格(ドバイ)は1月初旬に中東情勢の緊迫化で急伸した後、足元では地政学リスクの緩和により上昇基調は一服している。1月の輸入物価指数は原油高の影響で上昇した後、先行きは地政学リスクを反映した原油相場の変動に左右される展開が続くだろう。

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(1)輸入物価指数は、消費税を除くベースで作成されている

素原材料に下げ止まりの兆し

12月の需要段階別指数(国内品+輸入品)(2)をみると、素原材料が前年比▲6.6%(11月:同▲14.5%)、中間財が前年比▲2.0%(11月:同▲3.0%)、最終財が前年比▲1.1%(11月:同▲2.1%)となり、すべての需要段階でマイナスとなったものの、マイナス幅は前月より縮小した。素原材料は前月より下落幅を大きく縮小させ、中間財、最終財への下押し圧力は和らぎつつある。素原材料が上昇に転ずれば、中間財、最終財の価格にも後ズレして波及すると考えられる。

また、消費者物価(生鮮食品を除く総合)と関連性の高い消費財は前年比▲1.2%(11月:同▲2.5%)と8ヵ月連続でマイナスとなった。

消費増税後の国内需要の弱さを反映し、国内企業物価は今後も弱い動きが続く公算が大きい。国内企業物価は消費税を除くベースではゼロ%近傍での推移が続くと予想する。

企業物価指数
(画像=ニッセイ基礎研究所)

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(2)需要段階別指数は、消費税を除くベースで作成されている

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藤原光汰(ふじわら こうた)
ニッセイ基礎研究所 経済研究部 研究員

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