(本記事は、菅原洋平氏の著書『超すぐやる! 「仕事の処理速度」を上げる“科学的な”方法』文響社の中から一部を抜粋・編集しています)

なぜいつも、「やるべきこと」が山積みなのか

マルチタスク
(画像=Artie Medvedev/Shutterstock.com)

「やることが山のようにある」
「いつも忙しいばかりで、休むヒマもない」

もしあなたがこのように感じているならば、それは、あなたの脳が勝手に、「やるべきこと」を増やしてしまっている可能性があります。脳が勝手に、やらなくてもいいことに首を突っ込んで、あなたを苦しめているのです。

脳が勝手に「やるべきこと」を増やしてしまう引き金は、「マルチタスク」です。マルチタスクとは、複数の作業を同時、あるいは短期間に並行して切り替えながら実行することで、作業効率を上げる方法として知られています。

あるいは、忙しくなるとどうしても、いくつもの案件を同時に走らせることになり、必然的にマルチタスク状態になってしまうものでしょう。

しかし皮肉なことにこのマルチタスクによって、脳は自ら次の新しいタスクを生み出すようにできているのです。

これには、脳の次のような構造が関係しています。

マルチタスクで作業効率が格段に下がる理由

脳は、情報(電気信号)に対して神経細胞を発火させ、神経線維を使って次の神経細胞に情報を伝達しています。

この情報伝達で消費されるエネルギーは、全身の中でもとくに大きいため、自動的にエネルギーを節約するしくみが備わっています。得た情報が、以前と同じだったり似ていたら、神経細胞の発火を抑えるのです。このような、脳の情報に対する慣れを、「順化」といいます。

順化は、効果的に脳のエネルギーを節約できる反面、別の課題を引き起こします。順化して発火しない状態を続けていると、今度は「発火→情報伝達」というエネルギーの流れそのものが消えてしまうのです。

そこで脳は、エネルギーの流れを保つために新しい刺激を求めます。そして新たな刺激を得ると、再び発火します(脱順化)。脳は、

情報に対して、脳がエネルギーを大量消費する

情報にかけるエネルギー量を削減する(順化)

新たな情報を得て神経細胞を発火させる(脱順化)

新たな情報に対してエネルギー量を削減する(順化)

……

と、順化と脱順化をくり返すことで、エネルギーを節約しつつ、その流れそのものを維持しているのです。

さて、このようなしくみの脳に、マルチタスクを当てはめてみましょう。

マルチタスクになると脳は、いつもより大量のエネルギーが必要になります。それでいつもより強力に順化が起こるようになりますが、そのまま放置するとエネルギーが使われず、その流れも消えてしまいます。するとやる気がなくなってしまうので、脳は順化から脱するために、無理にでも新たな情報・刺激を求め、より強力な脱順化をはかることになります。

忙しいときほどちょっとした隙ができるとそわそわと落ち着かなくなりスマホを見たり、テレビをつけていてもチャンネルを変え続けたり、周囲の人たちの会話が気になってしまった経験はありませんか?

これが、脳が何にでも勝手に首を突っ込んで、タスクを増やしている状態です。

超すぐやる! 「仕事の処理速度」を上げる“科学的な”方法
菅原洋平(すがわら・ようへい)
作業療法士。ユークロニア株式会社代表。1978年、青森県生まれ。国際医療福祉大学卒業後、作業療法士免許取得。民間病院精神科勤務後、国立病院機構にて脳のリハビリテーションに従事。その後、脳の機能を活かした人材開発を行なうビジネスプランをもとに、ユークロニア株式会社を設立。現在、ベスリクリニック(東京都千代田区)で外来を担当する傍ら、企業研修を全国で展開し、その活動はテレビや雑誌などでも注目を集める。著書には、本シリーズの第1巻で10万部を突破した『すぐやる! 「行動力」を高める"科学的な"方法』の他、『あなたの人生を変える睡眠の法則』(自由国民社、13万部突破)など、多数がある。

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