(本記事は、菅原洋平氏の著書『超すぐやる! 「仕事の処理速度」を上げる“科学的な”方法』文響社の中から一部を抜粋・編集しています)

予定を忘れない人の脳はどうなっているのか

忘れない
(画像=Lleistock/Shutterstock.com)

さて、遠い未来に対して、もっと近い未来、つまり数日後の予定を忘れないためには、どのようにすればよいでしょうか。

うっかり予定を忘れてしまう人がいる一方で、そんなミスがまったく見られない人もいます。予定を忘れずに把握して実行できる人の頭の中では、どんなことが起こっているのでしょうか。

予定日時に電話をかける課題が与えられて、無関係なことをして過ごしながら指定された日時になったら行動できるかどうかを調べた実験があります。

この実験では、時間通りに電話をかけられた人と、電話をかけるのを忘れてしまったり時間がずれてしまった人に分かれました。しかも、時間通りに電話をかけられた人とそうでない人には、予定の思い出し方に違いがあることがわかりました。

時間通り電話をかけられた人たちは、電話をかける時間がずれた人たちよりも高い頻度で、意図せずに、課題について思い出していました。とくに、課題を実行する日の思い出す頻度の差は顕著でした。

意図せずに予定について思い出す、ということは、誰しも経験があると思います。

「あっ、あのメールの返信をしなきゃいけないんだった」などという思考は、前後の考えとは何の脈絡もなく突然頭をよぎります。

この“意図しない思い出し”が、結果的に、予定を忘れずに実行することに役立っているのです。

“意図しない思い出し”を活用するには、2つの方法が考えられます。

まず1つは、「課題が与えられてすぐに予定の詳細を詰めておくこと」です。「明日までにあのメールの返信をするんだった」と浮かんだときは、その予定だけが浮かぶわけではありません。

「イベントの決定日時が書いてあったっけ?」
「メールの後半に要望が書いてあったかも」

という感じで、脳は正確に予定を実行できるように情報を肉付けします。これを、予定が決まったらすぐに行なうのです。

情報が増えて詳細が詰まってくることで、予定のイメージが具体的になり、その重要性も高まります。重要度が高まったイベントは、そのイベントに臨むことだけではなく、全体の行動を効率よくするためのパーツとして組み込まれていきます。こうなれば、前後の他の予定も忘れにくくなります。

予定が決まったらそれをメモして終わりにせず、そのタイミングで遂行するのに足りない情報に考えを巡らせるようにしましょう。

“意図しない思い出し”を活用するもう1つの方法は、「何度も思い出すこと」です。あべこべのように見えるかもしれませんが、意図して思い出すようにすると、意図しない思い出しが増えていきます。

思い出すたびに、記憶を担う神経活動は再活性化します。実行日が近づくにつれ思い出す頻度が高まると、記憶が活性化される確率が高まっていくのです。

どうしても忘れてはいけない事柄は、「『明日はこれをする』と1日に3回思い出す」というように高頻度で能動的に情報にアクセスしておきましょう。すると、意図しない思い出しも増えて精度も上がります。

覚えているうちになるべく詳細まで詰めておくこと。意図的に何度か思い出すこと。この2つによって、あなたの脳も、忘れず行動できるようになります。

超すぐやる! 「仕事の処理速度」を上げる“科学的な”方法
菅原洋平(すがわら・ようへい)
作業療法士。ユークロニア株式会社代表。1978年、青森県生まれ。国際医療福祉大学卒業後、作業療法士免許取得。民間病院精神科勤務後、国立病院機構にて脳のリハビリテーションに従事。その後、脳の機能を活かした人材開発を行なうビジネスプランをもとに、ユークロニア株式会社を設立。現在、ベスリクリニック(東京都千代田区)で外来を担当する傍ら、企業研修を全国で展開し、その活動はテレビや雑誌などでも注目を集める。著書には、本シリーズの第1巻で10万部を突破した『すぐやる! 「行動力」を高める"科学的な"方法』の他、『あなたの人生を変える睡眠の法則』(自由国民社、13万部突破)など、多数がある。

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