(本記事は、加賀田裕之氏の著書『営業は台本が9割』きずな出版の中から一部を抜粋・編集しています)
人間関係構築とは何か
すべての営業は「人間関係構築」から始まります。
ただ、人間関係構築とひと口に言っても、どのようにすればいいのでしょうか?
人間関係構築というと、「笑顔で話す」「共感する」などを考えがちですが、それはあくまで人間関係を構築するための「方法」でしかありません。
重要なことは、
(1)どのような関係性を構築するか?
(2)どこまでの関係性のレベルを目指すのか?
(3)人間関係を構築するための効果的な方法は?
(4)人間関係構築のゴールはどこか?
です。
想像してください。
「人間関係構築」ができると、そのドアの鍵がカチャッと開いて、次の「ニーズの深掘りとウォンツアップ」のステップに行くようなイメージです。
初めて会って数十分にもかかわらず、数十年来の親友のような関係が築けたらどうでしょう。
強固な人間関係が構築されています。
その秘訣を、これから一緒に探りに行きましょう。
医者と患者のような関係性を目指そう
一般的に営業マンのイメージは強引に物を売りつけたり、逆にペコペコして、なんとか物を買ってもらおうとしたり、そういった嫌なものかもしれません。
売れる営業マンは強引に売りつけたり、必要以上にペコペコしたりはしていません。
トップセールスと見込み客との理想の関係性は、わかりやすくたとえて言うと、「医者と患者の関係性」に似ています。
たとえば、あなたが「熱が出たなぁ」と病院に行った際に、お医者さんがまったく診断しないで、傲慢な態度で「風邪ですよ!」と薬を出したら、どう思いますか? そのお医者さんを信頼できないですよね。「もっと親切に診断してもらいたい!」と思いますよね。
逆に、お医者さんにやたらへりくだって「ほんと~に申し訳ないんだけど、このお薬、ちょっとでいいので飲んでいただけると、うれしいんだけどぉ~」とペコペコされても、「この薬、大丈夫なのかな?」と不安になりますよね。もっと自信のあるお医者さんのところに行きたいと思うはずです。
もし患者さんが薬を飲む必要があるのであれば、「この薬を飲んでください!」「飲まないと、ダメですよ!」と、専門家として断言するべきです。
つまり私たちがお医者さん(プロ・専門家)に求めるのは、「専門性」と「親切・熱意」です。顧客が営業マン(プロ・専門家)に求めているものも、まったく同じなのです。
お客様の「本当に私にその商品・サービスが必要か?」という疑問を親切に診断・ヒアリングし、必要であれば、専門家として自信を持って提案します。
「医者と患者の関係性」とは、熱心で親切なプロ(専門家)と素人の関係性なのです。
そして、プロ(専門家)は自信に満ち溢れています。
お客様の立場で考えれば一目瞭然ですが、自信がない人からは誰も買いたくありません。
売れない営業マンは自信がないから売れない。売れないから自信がない。
まさに負のループです。
多くの営業マネジャーは、こうアドバイスをします。
「自信を持って話せばいい」
そうすると、素直な人はこう思います。
「結果が出ていないのに、自信があるフリはできないよ」
では、どうすればいいか? 簡単です。
自信がある「演技」をすればいいのです。
名俳優がトップセールスの演技をしているように演じてください。
演技なので「ウソをついている」わけではありません。あなたの良心も痛みません。
お客様はあなたの「自信」と「覚悟」を見ているのです。
セールスマンには、4つの自信が必要です。
(1)自分の会社に対する自信
(2)商品・サービスに対する自信
(3)職業(販売行為)に対する自信
(4)自分に対する自信
あなたは、心の底から「好きだ!」と思う商品をお客様にすすめていますか? 生活のために好きでもない商品を会社の指示で売っていませんか? まず、自問自答してみてください。
そのうえで、この4つの自信を確認して、自信を持って言い切りましょう。
「この商品・サービスが、あなたにとって最適だと思いますので、ぜひやりましょう!」と、言い切るのです。
「売ろう」「買ってもらおう」と思うと、うしろめたくて自信が持てないなら、
「お選びいただくのはお客様のご自由ですが、専門家(プロ)として、情報提供させていただいております」
と、専門家(プロ)の視点で良い商品を熱心に伝えましょう。
「医者と患者の関係性」をクロージング前につくらないと、「売り込まれた!」と思った瞬間にお客様の心のシャッターが降ります。結果、失注してしまうのです。
あなたを一瞬で専門家として認知させる質問
専門家と素人の関係性をつくるためには、「自分の強みを一瞬で伝える質問」が効果的です。
あなた
「○○さん、芸能人の△△さん(若い女性に人気の女優)をご存じですか?」
お客様
「え? 知ってますけど」
あなた
「△△さん、うちのお客様ですよ」
お客様
「えー、すごいですね!」
これは実際に約100万円のマウスピース矯正で成約率98%をほこる歯科医院のトークです。ほかにも、たとえばリフォーム業であれば、「近所の○○医院さん、ご存知ですか?」のように応用できます。ここのポイントは、「いやらしくなく」自分の強みを伝えることです。逆に、直接的にぐいぐいアピールされたらどのような感じでしょう。
あなた
「うちの顧客には芸能人の△△さんがいるんですよ。すごいでしょう!」
お客様
「……はい」
嫌ですよね。ですから質問を使うことで、いやらしくなく自分の強みを伝えるのです。