(本記事は、加賀田裕之氏の著書『営業は台本が9割』きずな出版の中から一部を抜粋・編集しています)
ウォンツアップはこうしなさい
ニーズの深掘りが済んだら、次はウォンツアップに行きたいと思います。ウォンツアップは「スイートドリームトーク」と呼んだりします。購入後の甘い夢を見せる部分です。
ウォンツアップのポイントは3つあります。
ポイント1「うまくいった姿をイメージしてもらう」
お客様に、ありありと想像してもらうことが重要です。
うまくいった場合を「イメージ」してもらうことで、購買意欲をわかせます。
人材教育の営業マンの例で見てみましょう。
営業
「もし研修制度を導入して、優秀な人材の定着率が上がって、生産性も向上したらどうですか?」
お客様
「それは素晴らしいですね」
営業
「そういえば、ほかのお客様は、担当者として評価が上がってボーナスが1・5倍になったそうです!『かみさんがすごい喜んでさ』と喜びのご報告をいただきましたよ!」
ポイント2「トークの順番を守る」
トークの順番は、「ニーズの深掘り(地獄)→ウォンツアップ(天国)」が鉄則です。
逆に、「ウォンツアップ(天国)→ニーズの深掘り(地獄)」にすると盛り下がります。
ポイント3「WHYに焦点を当てる」
会話には「レイヤー(階層)」があります。
・WHY:なぜ?
・HOW:どうやって?
・WHAT:何を?
です。
売れない営業マンは商品説明に焦点が当たっています。
つまり、HOW(どのように)とか、WHAT(何を)ばかり説明するのです。
トップセールスはWHY、つまり「なぜ、それをお客様がする(買う)必要があるのか?」に焦点を当てています。
「なぜ、あなたはその商品・サービスを買う価値があるのか?」
↓
「あなた(お客様)にはその商品・サービスを使って豊かになる価値があるからだ」
ということに焦点が当たっています。
ちなみに「ウォンツアップをどこまですればいいのですか?」もよくいただく質問です。
「ウォンツアップ」の基準は簡単です。
恋愛を思い出してください。大好きなあの人のことを考えると夜も眠れなくなる。そのような恋愛ってありましたよね。
お客様は、血迷わないと契約しません。
「あなたのこと(あなたの商品・サービス)を考えると、夜も眠れない」
「いてもたってもいられない」
そのような状態に持っていくのが「ウォンツアップ」の基準です。
押さえておきたい「テストクロージング」
ここまで台本営業ステップ2の「ニーズの深掘りとウォンツアップ」についてご紹介してきましたが、ステップ3の「商品説明」に入る前に絶対に必要なことがあります。
それは、「テストクロージング」です。
テストクロージングをしてから「商品説明」に入るのが、正しい順序です。
日本人の多くは「クロージングをして嫌われたくない」と思っています。
嫌われないクロージングのキモが「テストクロージング」なのです。
逆に、テストクロージングがないクロージングはただの「押し売り」になってしまいます。
一般的なテストクロージングの定義は、「お客様のニーズ(悩み)、ウォンツ(希望)が自社の商品・〇〇で満たされたら購入したいか?」の言質をとることです。私のテストクロージングの定義は、「商談の各段階で、トークを先に進めていいかどうかの確認をする行為」です。
たとえば「商品説明」の前のテストクロージングでは、このような感じです。
営業
「いま〇〇さんのお話を伺いまして、□□という心配事(問題)を解消して、△△という結果をご希望されているということでしたが、これからご紹介する商品が〇〇さんにとって、本当に必要なければ無理におすすめしません。断っていただいて結構です。お話、お聞きになりたいですか?」
ポイントは、このように相手が「YES」という状態になってから、次に進めるということですが、もっとテストクロージングの文言を短くすると、
「もし必要なければ断っていただいて結構です。お話、お聞きになりたいですか?」
でもOKです。
テストクロージングがないクロージングと、テストクロージングがあるクロージングの違いを考えてみましょう。
テストクロージングがないクロージングは、お客様はどう思うでしょうか?
「説明を聞いたら、無理やり買わされる」「押しつけがましい」
このように思われるかもしれません。「押しつけがましい」「押し売りされる」と思うと、次はどんなふうにお客様は感じると思います?
「断る理由を考える」
そう、お客様は商品説明を聞いているときに、「必要かどうか」ではなく「どうやったら断れるか?」と考えるのです。
たとえば「この会社うさんくさいな」「この営業マン押しつけがましいな」とか、「まだ必要ないんじゃないか」と、断りの理由を考えるのです。
テストクロージングで「無理におすすめしません、断っていただいて結構ですよ」と言われたら、お客様はいつでも断れる訳ですから、その商品サービスが「本当に自分にとって必要かどうか」を考えてくれることになります。
なので、テストクロージングがないクロージングとテストクロージングがあるクロージングでは、お客様の気持ちはまったく違います。テストクロージングは必須なのです。
さらに、テストクロージングには「裏の意味」があります。
営業
「もし必要なければ断っていただいて結構です。話をお聞きになりたいですか?」
お客様
「はい」
ということは、
営業
「必要ならばクロージングしていいですか?」
お客様
「はい」
と、裏で無意識的に言っているのと同じことなのです。