人間のファイナンシャル・アドバイザー(FA)に相談しなくても、お金の管理や運用がアプリで気軽にできる時代になった。最近はAI(人工知能)を搭載し、より高度で自動化されたパーソナル(個人向け)FAアプリが続々と登場している。
今回は、欧米で注目されているAI型パーソナルFAアプリを6 つ、ご紹介しよう。
AI型パーソナルFAアプリの特徴
パーソナルFAの役割は、顧客の家族構成や収入、生活スタイル、夢などから、長期的な将来設計を作成し、お金の管理から資産運用まで、実践的な金融アドバイスを行うというものだ。
現時点で開発されているアプリは、人間のFAほど細かなアドバイスはできないものの、「無料あるいは低額で、簡単なアドバイスを受けながらお金を管理・増やしたい」というユーザーの間で人気がある。アプリとリンクさせた銀行口座やクレジットカードなどのデータに基づき、適切なアドバイスをする。
その中でも、AIなどのテクノロジーを搭載したFAアプリは、個人のお金の動きを学習し、よりパーソナルなアドバイスを提供できることから注目を集めている。
1.Olivia.ai AIチャットボットが節約アドバイス
シリコンバレーの起業家と元モトクロス選手という、意外なコンビがカリフォルニアで立ち上げたOlivia.ai。AIチャットボット「Olivia」がユーザーの支出パターンを学習し、将来の購入パターンを予測してくれる。
分析結果に基づき、「Uberに毎週平均30ドル使っているようですが、もっと節約する手段があります」というように、適切な節約・貯蓄法を提案してくれるのだ。
また、ユーザーの趣向や需要に合わせ、提携企業の割引クーポンなどの情報も提供。例えば、過去の外食頻度や外食先から次の行動を予測し、「今週末に利用できるイタリアン・レストランの割引クーポン」を探してくれる。
2020年2月現在は、米国とブラジルのみでサービスを提供しているが、既にユーザー数は50万人を超えている。
2.Wizely ネオバンク×機械学習技術のコラボレーション
「インドのシリコンバレー」の異名をとる、バンガロール発のネオバンクWizely。ネオバンクとは、店舗を持たず、オンラインのみで取引を行う次世代銀行を指す。
機械学習技術をベースに開発された同社のアプリは、AIが毎日の支出からパターンを学習し、「このままのペースで支出が続くと、月末には残高が先月末より1000ドル少なくなります」など予想して、必要に応じて注意を促してくれる。
また、貯蓄の目標金額やルールを設定すると、達成に向け自動的に貯蓄できる機能がついている。
Wizelyはアプリだけではなく、同国の大手ICICバンクと提携し、オンラインで簡単に開設できる貯蓄口座やデビットカードを提供している。既存のICIC貯蓄口座とアプリを、リンクさせて利用することも可能だ。
3.Digit AI型FAアプリのパイオニア
2014年にカリフォルニアで設立された、AI型FAアプリ市場のリーダー的存在。US NewsやBusiness Insider、Elleといったメディアに取り上げられるなど、注目度が高い。
AIが収入・支出パターンを分析し、貯蓄目標の達成をサポートする点は他のAIアプリと同じだが、毎日、自動的に貯蓄可能な金額を算出し、貯蓄口座に移動させる機能がユニークだ。
また、貯蓄口座の利率は1%と、従来の銀行よりはるかに高い。預金は、最高25万ドルまで連邦預金保険公社(FDIC/被保険銀行における預金を保護する目的で、預金保険業務を行う米政府の独立機関)に保護されているため、安心して利用できる点も人気の秘密だろう。
2020年2月の時点で、サービスを通しユーザーが節約した額は、合計25億ドルを上回っている。月額5ドルと有料だが、30日間の無料トライアル期間がある。