2月に入ってからも、国内外で新型肺炎の流行が拡大しているが、ドル円においてはリスクオフ(回避)の円高が表面化していない。新型肺炎の早期終息や中国の経済対策への期待から、リスクオフの動きが限定的に留まっているうえ、一時的にリスクオフに振れる場面においても、流動性が高く景気も堅調な米国のドルが円と同時に買われているためだ。結果、ドル円は足元でも109円台後半と堅調に推移している。
しかしながら、今後はやや円高に振れる可能性が高い。3月以降には新型肺炎流行後の内外経済指標が公表されることになるが、中国を中心にかなりの悪化が想定されるうえ、企業業績への悪影響も次第に明らかになってくるため、市場がリスクオフに傾きやすくなる。さらに米国経済も無傷では済まないとみられるためドル買いが鈍り、ドル円でもやや円高が進みやすくなるだろう。3ヵ月後の水準は108円前後と予想している。
ユーロ円は、今月に入ってドイツの経済指標悪化や政局不安を受けたユーロ売りと対ユーロでのリスクオフの円買いによって下落し、足元は118円台後半で推移している。既に投機筋のユーロ売りポジションが溜まっていることはユーロの下支えとなるが、一方で新型肺炎の流行拡大は欧州経済にとっても重荷になる。また、今後もリスクオフの円高圧力が見込まれることから、3ヵ月後の水準は現状比でやや円高ユーロ安の118円前後とみている。
長期金利は今月に入って▲0.0%台前半から半ばと小幅なマイナス圏で推移しており、足元も▲0.05%にある。今後もリスクオフに伴う安全資産の国債需要が金利低下に働くが、昨年、日銀が幾度も追加緩和を匂わせながら回避したことが示すように、追加緩和のハードルは高いことから、追加緩和観測は高まりにくいだろう。また、日銀が超長期金利の低迷を是正しようとしていることも長期金利の低下を抑制する。従って、3カ月後の水準は現状比で若干の低下に留まると見ている。
(執筆時点:2020/2/18)
上野剛志(うえのつよし)
ニッセイ基礎研究所 経済研究部 シニアエコノミスト
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