(本記事は、曽我 ゆみこ氏の著書『経営者のための初めての不動産投資戦略』プレジデント社の中から一部を抜粋・編集しています)

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多くの優良物件は「人」を介して見つかる

ここからは、具体的な優良物件の探し方のコツを見ていきます。優良物件は、不動産販売会社の店頭に並ぶマイソクやインターネットに公開されている情報から見つけることもできますが、そうした誰もが手に入れることができる情報源から探し出すのは、容易なことではありません。

ですから、いかに情報を早く手にするかが大事になってくるのです。そこでポイントになるのが「人」です。公にはされていない物件情報や、「◯◯さんがアパートを売りたがっている」という話を、人的ネットワークを駆使して仕入れていくのです。

その「人」とは、当然ながら第一候補になるのは不動産販売会社です。といっても、不動産販売会社ではなく、不動産販売会社に勤める「人」とつながるということです。

ここで、多くの人が勘違いしているポイントがあります。それは、「お客さまは神様」というフレーズです。つまり、不動産販売会社に対して、「こっちはお金を出す神様だぞ」という態度を取ってしまう人が多いのですが、これはご法度です。

不動産販売会社は多くの顧客を抱えています。そのなかであなたは特別な顧客になる必要があります。もちろん相当な大金持ちの人であれば、どのような態度を取ってもいいでしょう。しかし、「絶対に間違った買い物はできない」と考える、本書の読者である皆さんは、誠実な対応を取っておいたほうがいいでしょう。

それは、ペコペコと頭を下げるという意味ではありません。

自分がどういう条件の物件なら買いたいと考えているのかを明確にして伝えること。もらった連絡には、「イエス」であるにしろ「ノー」であるにしろ、迅速にレスポンスを送ること。メールや電話だけで済まさず、月に1度は直接コミュニケーションを取ること。その際には、ちょっとしたお土産を忘れないことなどが必要です。

そのようにして関係性をつくり、その人にとって特別なお客さまになることができたら、ポータルサイトや別の顧客に紹介する前に、あなたのところに物件情報を持ってきてくれるようになります。そのような環境を構築するのが理想です。あとは、より詳しい理想の物件像を伝えることで、それに合った物件を探してきてもらえるようにします。

ただ、10人も20人も、そのような人間関係をつくっていたら、体がいくつあっても足りません。担当者レベルで2〜3人ほど太いつながりがつくれれば十分です。

では、その2〜3人はどう選べばいいのか。実は、不動産販売会社によって、あるいはそこで働く人によって、数多くある物件の中でどれを紹介するのかというのは、案外バラバラで特徴があります。手当たり次第に送ってくるところもあれば、利回りのよいものばかりを送ってくるところ、わけあり物件が多いところもあります。

ですから、最初は少し多めに不動産販売業者の担当者と会ってみましょう。その後に、自分の感覚や好みに合っていると感じる相手に絞っていけばいいのです。

ただし、販売会社の担当者と知り合うために各社のウェブサイトから会員登録をする場合は、個人情報が伝わるので、営業の電話が頻繁にかかってきたり、メールが湯水のように送られてきます。もし、営業色が強い会社だった場合は断わるなどしていきましょう。また、個人情報の漏洩も問題になっています。信用できる会社に限り、個人情報を開示しましょう。

優良物件を紹介してくれる「味方」はどこにいる?

そうした皆さんの味方となってくれる人は、不動産販売会社だけに限りません。ほかにも銀行、工務店、リフォーム・リノベーション会社なども物件情報を持ってきてくれる可能性があります。

ただ、やはり第一選択は不動産販売会社です。特に一棟目を購入する前だと、不動産販売会社一択になります。工務店などは、実際にマンションを持つようになってからつながりが生まれ、仕事をお願いすることによって、強固な関係がつくれるようになります。彼らも事業者です。したがって、「この人に物件を紹介したら、うちに仕事をくれる」という期待値を込みで紹介するケースが多いからです。

ここで、私なりの不動産販売会社を選ぶコツをお伝えします。

自分が住んでいるエリアにある不動産販売会社がよいということはなく、むしろより大事な視点は、レスポンスのスピード感です。反応は、早ければ早いほどいいでしょう。それは、その人が誠実であるかどうかのものさしになるばかりでなく、あなたがどれだけ重要な顧客と認識されているかもわかるからです。加えて、実際に購入する段階に入ったらスピード勝負になるので、単純に仕事が早くないと、買い逃してしまう可能性が高まります。その意味でも、レスポンスは早いほうがいいのです。

また、不動産販売会社は「大手のほうが安心だ」と考える人もいるかもしれませんが、そのようなことはありません。むしろ大きなところほど、担当者の裁量が小さいことに加え、お金持ちの顧客をたくさん抱えていることも少なくないのです。頭にあるのは、税金対策になるようなキャッシュフロ―があまり出ない物件であることが多いのが実情です。

ですから、投資用不動産ばかりを扱っていて、そこまで規模が大きくないところがお勧めです。具体的には4〜5人で会社を回していて、濃い人間関係のなかで勝負しているところです。私が懇意にしている不動産販売会社で「全社を挙げて、物件購入のお手伝いをさせていただきます」といわれ、その対応に喜んでいたら、社員が2名の会社だったということもありました。ただ、そういった会社は、誠心誠意、対応してくれるように私は感じています。

私の経験上、不動産販売会社同士は連絡を密にしている、という印象があります。特に地域に根ざしたようなあまり大きくないところは、その傾向が強いと思います。そういった不動産販売会社は、「◯◯さんの紹介」というだけで、一気に距離を縮めることができます。皆さんはすでに会社の経営者ですから、いろいろなお付き合いをお持ちでしょう。たとえば社員用の賃貸物件を扱ってくれている不動産販売会社があったら、そこから口をきいてもらうといいのではないでしょうか。

「味方」ができたら積極性と少しの厚かましさで一棟目を手に入れる

中小企業取引
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投資用物件を扱う不動産販売会社と関係性がつくれたら、「自分はこういう物件がほしいと思っている」ということを積極的に情報発信します。

場合によっては、将来の投資家像を語るのもいいでしょう。たとえば「10年後には5棟のマンションを保有したいと思っている」といった設計図を伝えるのです。すると、相手は「今回のお付き合いだけでなく、今後もこの人は物件を購入してくれそうだ」と思うわけです。すると、たとえ過去に不動産投資の実績がないあなたにも、一棟目としてよい物件を持ってきてくれる可能性が高まります。

また、雑談のなかで自分の本業について触れてもいいでしょう。すると、相手はこう思います。本業でお金を借りている経験があるなら、融資を受けるということに慣れているし、抵抗はないだろう、と。

というのも、会社員で投資家を目指している人などは、どうしても不動産の融資金額にびっくりして、土壇場で腰が引けてしまうことが多々あります。「本当に1億円も投資していいのだろうか」と。本人だけでなく、家族から「待った」がかかることもあります。

一方、自分で会社を経営しているような人は、数千万〜1億円くらいの融資はさして珍しいことでもありません。ですから、安心して物件を紹介できるというわけです。

さらに、経営者は事業計画書を考えたり、作成したりすることにも長けています。ですから、不動産投資における展望も、スラスラと伝えられるでしょう。

先に、不動産販売会社にとって顧客はあなただけではない、ということをお伝えしました。だからといって、必要以上に自分を小さく見せる必要はありません。

むしろ、少し厚かましいくらいの態度で、自分がいかに優良な顧客なのかを伝えることは、その後の不動産販売会社とのお付き合いにも好影響を与える可能性が高いといえます。

実はインターネットでも優良物件は見つかる

インターネットでも優良物件は見つかります。不動産物件ポータルサイトでも、Wゲインシートの数字で、基準に近いような物件はときどき出てきます。

そうしたときに、大事なことはふたつ。まずスピード。何度もお伝えしているように、いい物件はライバルがたくさんいますから、いかに早く買いますと手を挙げるか。そして、融資の話を通すかがポイントになります。

少し前までは「買います」と申し込みを行った順番が重視されていましたが、私の感覚では数年前から融資が通った順番を優先するようになりました。不動産投資家の数が増えていることや、いろいろなレベルの不動産投資家が出てきたことによって変わった、というのが私の見解ですが、とにもかくにもお金の都合がついた人の優先順位が上ということになってきました。その意味では、もちろん現金(キャッシュ)がいちばん強いわけですが、次に資金調達に見通しがついた人が強いのです。

とはいえ、売り手や不動産販売会社も人間関係、業者間関係のなかで生きているので、やはり知り合いに売りたいという側面もあります。ですからスピード=人間関係という部分もありますので、インターネットでいい物件が見つかる可能性があるといっても、不動産販売会社との関係性を軽視していいわけではありません。

もうひとつ大事なことは、不完全な物件にこそ、優良物件が眠っている可能性があるという視点です。

たとえばポータルサイトに掲載されている物件で、売れ残っているものがあったとします。そうした物件のなかには、「ここの数字さえ変われば、買いなのに」というものがあります。極端な例でいえば、「物件価格が1億5000万円から1億3500万円になれば買うのに」といった具合です。そのようなケースで、うまく交渉できるのが経営者です。

日頃、本業で培ってきた交渉力で値引きに成功すれば、晴れて優良物件が手に入るというわけです。

売れ残っているのには、理由があります。その理由を知恵と工夫で解決できれば、まったく問題ないわけです。交渉の仕方は、売れ残っている原因を指摘していく、というようなやり方ではありません。

「自分はこういうスタンスで不動産投資をしている。この物件は、立地も築年数も理想に近いのですが、物件価格が想定よりも300万円高いのです。ですから、あと300万円安くなれば買います」と直接、伝えるだけでいいのです。

このときに、「安くなったら検討するんですが」というような中途半端なことではなく、きっぱりと「◯◯円安くなれば買う」と断言することです。

もちろん売れ残っている原因が心配だという人もいるでしょう。たとえば、踏切が近くにあって、音と照明が気になるという物件だったとします。

それならば、遮光カーテンを設備として入れ、防音設備を入れればいいわけです。その2つに300万円がかかるならば、300万円が値引きできればいいですよね。

ただし、気をつけないといけないのは、「買います」と断言しておきながら、値引き交渉後に「買わない」と態度を翻した場合、間に入ってくれた不動産販売会社との関係性にヒビが入ります。特に私がお勧めしたようなあまり大きくない規模でやっている不動産販売会社は、人間関係のなかでうまく商売をしているところばかりです。そういう相手の顔をつぶしてしまえば、その後の関係はなくなってしまいます。

経営者のための初めての不動産投資戦略
曽我 ゆみこ(そが ゆみこ)
化粧品会社経営。投資家。不動産投資にて、インカムゲインとともにキャピタルゲインもプラスにすることを目指した「Wゲインスクール(WゲインCLUB)「金持ち大家さんファミリー」を主宰。また、「クオンタムリーヴの会」では、不動産投資家を目指す経営者が、本業でさらに活躍をするために、不動産投資家を目指す経営者のサポートをしている。2010年、がんにかかり、抗がん剤治療を開始。働かなくても経営が成り立つようにと不動産投資を思い立つ。その後、頭金1000万円で都内近郊の駅近物件を選び不動産投資を始め、資産6億円、返済比率40.11%以下にて運用。40代以上の女性の自立支援塾「乙女塾40」塾長を務める。著書に『毎月100万円! 確実に増える不動産投資』(辰巳出版)がある。

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