(本記事は、曽我 ゆみこ氏の著書『経営者のための初めての不動産投資戦略』プレジデント社の中から一部を抜粋・編集しています)

リスク
(画像=PIXTA)

不動産投資のリスクとは

あらゆる投資にリスクが伴うのと同じように、不動産投資にも当然リスクは伴います。

極論をいえば、資産を現金で持っているだけでもリスクはあります。日本経済が大きくインフレに進めば、現金の価値は持っているだけで目減りします。深刻な財政危機に陥れば、ギリシャで実際にあったように預金封鎖が起きたり、インドで実際にあったように、非合法な経済活動をあぶり出すための高額紙幣の廃止を断行したりといったこともあります。

とにもかくにも、どのような投資にもリスクはあるということ。ですから、大事なのはその対策を講じることだと思います。

では、不動産投資におけるリスクとは何でしょうか。大きく分ければ、マクロとミクロという2つのリスクがあります。

マクロのリスクとは、簡単にいえば個人の力ではどうにもできないものです。先ほどもお伝えした経済的な変化はそのひとつです。たとえば家賃の相場が大きく下がったら、自分のところだけ家賃を据え置くことは難しいでしょう。

経済の浮き沈みで変化する金利も、個人の力では変えられません。現在の日本は超低金利社会で、不動産投資のための融資も低く抑えることができています。1%台〜3%台程度が一般的ですが、これがいきなり金利上昇となり8%以上となったら、変動金利で融資を受けている多くの不動産投資家が厳しい立場に追い込まれます(もちろん金利だけで不動産投資の成否がすべて測れるわけではありませんので、極端に言えばということです)。

そのほか、公示地価(国土交通省による土地の公示価格)の変動、天変地異、法規制の変化などもあります。

こうしたことは、インカムゲイン(月々の家賃収入)だけではなく、キャピタルゲイン(売却益)にも関わってきますが、いずれも個人の力で変化を止めることはできません。

ですから、新聞や雑誌などで社会の動向をきちんとチェックし続けたり、保険でカバーしたりといったことで対処するほかないといえます。

ただ、マクロな話は気にしすぎると何もできなくなります。まったく無視することは避けるべきですが、毎日気にするほどのことではありません。特に私が推奨しているWゲインシートを用いた投資法は、物件を手にしたそのときから、キャッシュフローが残るものです。その手残りがあるだけでも、リスクヘッジになると私は考えています。

もうひとつは、ミクロなリスクです。つまり、皆さんが購入する物件が持つ特有のリスクともいえます。マクロなリスクに比べ、こちらは多くの対処法がありますが、ここではどのようなリスクがあるのかをまずは紹介していきます。

「空室リスク」……不動産投資における最大のリスクともいってもいいのが、この空室リスクです。その名前のとおり、購入した物件の部屋に借り手がつかず、空室のまま家賃収入が入ってこないことを指します。空室となる原因はたくさんありますが、そのエリアにそもそも需要がない、家賃が相場よりも高い、入居希望者に物件情報が届いていない、管理が悪いためネット上に悪評が書かれている、などがあります。

「修繕リスク」……修繕リスクは、言い換えれば老朽化リスクです。どのような建物にも寿命があり、少しずつ劣化していきます。思いのほかその劣化スピードが激しく、想定外の高額な修繕費用がかかると、赤字になってしまうケースもあります。特に中古物件を購入した場合、過去のオーナーがどのような修繕を行ってきたのかにも気を配る必要があるでしょう。

「家賃滞納リスク」……入居者が家賃を滞納するというリスクもあります。借り手が家賃を滞納する理由はさまざまで、解雇されてしまった、病気になってしまった、ルームシェアの相手が出ていってしまった、建物管理への不満などがあります。

「環境リスク」……物件の周囲の環境に変化が生じて、それによって住環境が悪化してしまうことがあります。それが環境リスクです。自分では何ともならない、ややマクロなリスクに近いかもしれません。環境の変化の要因としては、保育園・託児所、学校、病院、消防署、工場、高速道路、葬儀社、食肉加工工場、原子力施設、風俗店、パチンコ店、ゲームセンター、宗教施設、暴力団事務所、ホテル、ラーメン店や焼き鳥店、焼肉店といった匂いの強い飲食店などがあります。

「家賃下降リスク」……老朽化や市場の変化にともなって、家賃は減っていきます。基本的に地方になると、家賃下落率は大きくなります。

では、次項から具体的な解決法などを見ていくことにしましょう。

空室を埋めるためのコツ

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(画像=(写真=Peshkova/Shutterstock.com))

空室リスクを最小に抑えるには、需要を意識します。痒(かゆ)い所に手が届くような工夫をしても、そもそも賃貸需要がなければ、空室リスクは小さくなりません。

すでに物件探しのところでもお伝えしましたが、1都3県(埼玉、千葉、神奈川)の駅から徒歩圏内(理想は10分以内、ファミリー物件なら15分以内)を目安とします。

とはいえ、物件の特性によって賃貸需要は上下します。大学や専門学校が複数あるような学生街なら、ワンルームマンションの物件がよいかもしれません。同じ大学でも、学費が高かったり、お嬢様学校と呼ばれたりするような大学ならば、ワンルームアパートよりも、1Kや1DKの少しグレードの高いRCマンションのほうが需要は多いといえます。

もちろんファミリー層が多い地域ならば、2LDK以上のファミリータイプの物件に需要が多いでしょう。ファミリー層の需要が多いかどうかは、保育園や幼稚園の充実具合や小・中学校の評判なども気にするといいかもしれません。

たとえば東京都内には公立の小学校でも、名門と呼ばれる学校があります。こうした公立の学校は、通りが一本違うだけで校区が異なります。

また、空室を効率よく埋めるためには、管理会社や仲介業者、またその両方を兼ねた賃貸管理会社との付き合い方や選び方にもコツがあります。

ただ、皆さんに知ってもらいたいのは、いずれにしても空室は不動産経営について回るものということ。ですから、あらかじめ一定の確率で空室になることを見込んだ計画にする必要があるのです。その点、本書で紹介しているWゲインシートは、その空室見込みを織り込んでいるので難しいことはありません。

ちなみに空室リスクとしてときどき名前のあがるサブリース方式は、私はお勧めしていません。サブリース方式とは、サブリースを行う不動産管理会社が物件を一括して借り上げて、入居者と直接に賃貸契約を結び、その不動産管理会社はさまざまな手数料を引いた金額を賃料として物件のオーナーに渡すというスキームです。サブリースを行う企業が必ず儲かるようになっているので、その利益の上乗せ分が不動産投資家にとっては重荷になると私は考えています。

気をつけないといけないのは、見かけの数字上はすごく理想的に見えるようにしているケースがあることです。その裏側には、「退去が出たときの原状回復をその会社でやること」という条件があったり、2年ごとの契約更新で家賃を相場以上に下げてくること、それならば契約破棄という選択を取ろうとすると、違約金が発生することなどがあります。サブリースを考える場合には、このあたりにもよく注意してください。

工務店や管理会社との上手な付き合い方

修繕費というコストもリスクになります。物件の老朽化などに伴い、修繕が必要となる箇所は、複数あります。

建物としては、外壁塗装、屋上防水加工、屋根の修繕、鉄部のメンテナンス、給排水管(水道設備)など、室内(各部屋)としては、エアコン、ガス給湯器、水回り設備、畳や壁紙の張り替えなどがあります。

こうした修繕は、問題が発生してから直す場合と、予防として対策を講じる場合とがあります。基本的な考え方としては、建物の価値に重大な損害をもたらすものについては、予防策を講じておき、そうでないものについては、空室リスクや家賃下落リスクに直結しない範囲のもの(私はほとんどが当てはまると思います)は対症療法、つまり問題が起きてから直したり、更新したりすればいいでしょう。

こうした修繕において大事なことは、どのような業者と、どのような付き合い方をしておけばいいかです。工務店やリフォーム会社に依頼することになるのですが、その際に適正な価格で行ってもらえるか、割高な請求書が届くのかは、業者やその業者との付き合い方次第だからです。

まず普段からすぐに連絡の取れる工務店は、2〜3社は持っておいたほうがいいでしょう。そのうえで、相見積もりを取ります。普段から付き合いのある業者と、新たな別の業者の2〜3社に相見積もりを取ることで、割高な見積書を見抜く目を持つのです。

先ほどの空室リスクの項目でも触れた管理会社や賃貸管理会社が修繕のノウハウを持っていますので、彼らの知見を活用するのも手です。彼らは工務店との付き合いも豊富ですので、紹介してもらう、アドバイスをもらうといったこともできます。委託してしまえば楽ではありますが、まったく彼らの言うままでもよくありません。業者と癒着している可能性も否定できないからです。管理会社を利用する場合にも、きちんと相見積もりを取って、予防策を張るべきでしょう。

そして、信頼できる業者ができたら、電話一本ですぐ済むような人間関係を築いておくことも大切です。

インスペクションはすべきか

新築の場合は別ですが、中古物件を検討する場合、修繕リスクを下げるためには、購入前にその物件が手のかかる建物なのかどうかを見極めることも大切です。

よくいわれるのが、耐震基準の法律が変わった1981年以前の建物は避けるべきだということ。確かにひとつの目安にはなりますが、杓子定規に1981年以前の建築物はダメで、1981年以降の建築物はOKだと考えてはいけません。建物は一軒として同じものはないので、それぞれにチェックしなければわからないというふうに考えてください。

といっても、建物の状態について、我々素人にはなかなか判断はつかないものです。建物の状態のチェック箇所としては、基礎、外壁、屋根・屋上、ベランダ、天井・柱、床、内壁、配管、換気ダクト、外構など広範囲に及びます。本業のある皆さんが、これらを事細かく見ていくのは、少し的が外れているように感じます。

前にもお伝えしましたが、ひとつには修繕履歴をチェックすることで、多少はどのような状態なのかが全体としてイメージできます。

そのうえで、ホームインスペクター(住宅診断士)という第三者に、建物の状態を見てもらうのはどうでしょうか。無料の診断もあるようですが、ホームインスペクターは国家資格ではありませんので、その能力は玉石混交です。心配なようでしたら、きちんとお金を払って質の高い診断を受けたほうがいいでしょう。目安は10万円程度のようです。

経営者のための初めての不動産投資戦略
曽我 ゆみこ(そが ゆみこ)
化粧品会社経営。投資家。不動産投資にて、インカムゲインとともにキャピタルゲインもプラスにすることを目指した「Wゲインスクール(WゲインCLUB)「金持ち大家さんファミリー」を主宰。また、「クオンタムリーヴの会」では、不動産投資家を目指す経営者が、本業でさらに活躍をするために、不動産投資家を目指す経営者のサポートをしている。2010年、がんにかかり、抗がん剤治療を開始。働かなくても経営が成り立つようにと不動産投資を思い立つ。その後、頭金1000万円で都内近郊の駅近物件を選び不動産投資を始め、資産6億円、返済比率40.11%以下にて運用。40代以上の女性の自立支援塾「乙女塾40」塾長を務める。著書に『毎月100万円! 確実に増える不動産投資』(辰巳出版)がある。

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