(本記事は、曽我 ゆみこ氏の著書『経営者のための初めての不動産投資戦略』プレジデント社の中から一部を抜粋・編集しています)

査定
(画像=PIXTA)

普段から定期的に査定をしよう

Wゲインのひとつであるキャピタルゲインは、言い換えれば出口(イグジット)戦略です。不動産投資を始める前から、もしくは始めたばかりなのに、出口のことも考える必要があるのかという声もあるでしょう。おっしゃるとおりです。あまり考えなくてもいいと思います。ただ、多少は頭に入れて、いつでも引き出せる状態にしておかなければいけないことでもあります。

ただし、ここでいう出口戦略とは、不動産投資をやめるという出口ではなく、物件ごとに売るかどうかの選択ということです。

実際にやるべきことは、そう多くありません。まずは、定期的に査定を行うことです。言い換えれば、今売ったならば、いくらなのかを知っておこうという意味です。

この査定は、年に1回程度行うのがベストだと思います。それ以上だとほかのやるべきことや本業に支障が出てしまうでしょうし、それ以下だと市場の変化のスピードに追いつかず、売るべきタイミングを逃す可能性が出てきます。

そして、1年に一度、物件の査定を行うメリットは、現在の売却価格を知ることだけではありません。第三者(物件を売ることを専門とする不動産販売会社)に物件を見てもらうことで、建物の問題点を見つけたり、賃貸運営の方向性を考え直すよいきっかけになったりします。

査定するときのコツ

査定するときに気をつけるべきことは何でしょうか。

まず、複数の物件を持っているときには、同時に行うことです。これは手間を省くという意味で必要だと思います。

査定で最も煩雑に感じるのは、不動産販売会社とのやりとりです。

ですから、できれば同じ担当者に同じタイミングで、すべての物件を同時に査定してしまうと、かなりの手間が省けます。

だからといって、1社だけの査定だと本当の市場価格は見えづらいものですので、2〜3社にお願いします。

査定時期については、特にこの時期がいいというものはありません。強いて言うならば、多くの会社が決算をむかえる1〜2カ月前だといいかもしれません。儲けが出すぎた会社による、数字合わせのための購入が見込めるからです。

実際に営業の担当者と会ったら、次の3つを聞きます。


「すぐに売りたい場合の価格」
「3カ月以内で売れると予想される価格」
「半年くらいかかってもいいから売りたい場合の価格」

そのうち、3カ月以内で売れると予想される価格が、今の正味の不動産価格に近いといっていいでしょう。

売るべきタイミングはいつか? スタンスを決めておく

では、「3カ月以内で売れると予想される金額」がいくらだったら売るべきなのでしょうか。こればかりは、個別の事情によってまったく異なるので、十把一絡げにいうことはできません。

いくつか目安となるものはあります。ひとつは、国土交通省が発表している不動産価格指数です。この数字を見ると、不動産市場に大局がわかりますので、いつが売り時なのかの目安となります。

借入残高も目安のひとつです。借入残高に比べて売却価格がマイナスであれば、当然ながら売り時とは言い難いです。当然ながら、物件の売買には仲介手数料や不動産取得税、登録免許税など、さまざまな諸経費がかかりますので、それらも加味して、損得を考えないといけません。

また、法人でない場合、所有期間5年以内に売却する場合には、譲渡税が上がることがあります。ですから所有期間にも気を配る必要があります。

ただし、譲渡税は売買によって利益が出たときのみにかかってくるものなので、インカムゲインや諸経費を加味した総合的な損得で見なければ正しい判断はできません。

また、利益は手元に残った利益だけではなく、税法上の利益なので、専門家に相談するのがよいでしょう。

いずれにしても、どういう数字になったら物件を売るのかということを、あらかじめ方針を固めておくといいでしょう。行き当たりばったりではなく、この物件でこれくらいの利益が得られたら十分だというスタンスを決めておくことで、「売るべきか待つべきか」で常に頭を悩ませている、ということがないようにしたいものです。皆さんは経営者であり、本業があります。常に売買を念頭に置いておくのではなく、基本的には所有し続けられる物件を選ぶのがよいのではないでしょうか。

売却時期の見極め方

価格だけではなく、どのような状態ならば有利に売ることができるのか、ということも考える人もいます。

たとえば物件が所在するエリアで、市場に出回っている物件数が多い時期に売りに出すか、少ない時期に売りに出すかといったことです。

こうした市況で判断するのは、基本的には区分マンションの売買のときだと私は考えています。区分マンションの場合、似たような物件が多数出回るときがあり、普段なら無用な価格競争に巻き込まれることもあるからです。

また、区分マンションでは、投資家への販売ではなく、実需用に販売するケースも少なくありません。実需用に販売したほうが、高値で売れる傾向があるからです。ですから、実需が増える時期、具体的には異動や年度替わりのタイミングを見計うことも重要だといえるのですが、これも一棟ものの場合にはあてはまりません。

なぜ区分マンションと一棟ものでこうした違いがあるのかといえば、一棟ものは個性があるからです。同じエリアで似たようなものが出回るケースは、極めて稀なのです。

先ほどもお伝えしましたが、一棟ものの場合、あまり売る時期というのはこだわる必要はありません。もし厳密にいうのならば、買いたい人の立場になったときに、少しでも買いたいと思うような時期、つまり「決算に間に合うように買えるかどうか」というようなことを少し考慮したらいいのではないでしょうか。

どのような不動産販売会社と付き合うべきか

実際に、どのような不動産販売会社に査定を出したらいいのでしょうか。また、実際に売りに出したいときを逆算したら、どのような不動産販売会社と付き合っておくべきなのでしょうか。

何はなくとも、高く売ってくれる不動産販売会社がいいでしょう。それでは、高く売ってくれる不動産販売会社とはどういうところか。それは、高く買ってくれる優良な顧客(会員)をたくさん持っているところだといえます。

つまり、不動産販売会社は物件が出てから買い手をゼロから見つけるというケースもありますが、あらかじめ「こういう物件がほしい」という要望を聞いた顧客のなかから買い手を見つけるパターンも少なくないのです。

優秀な営業マンほど、すぐに物件と買い手をマッチングできるような状態に頭の中でなっているということです。

さて、ここで考えたいのは、顧客をたくさん抱えている不動産販売会社とはどういうところかということです。ひと言でいえば、大手の不動産販売会社がいいでしょう。大手には大手なりの安心感があり、資産が豊富な顧客ほど「やはり大手なら安心」と考える傾向があります。

ですから購入するときは、街の不動産販売会社など、濃い人間関係があるところから購入し、売るときには大手の不動産販売会社がいいということです。

そして、少しでも高く売るためには、そうした営業担当に「どうしたらもっと高く売れますか?」と直接的に聞いてしまっていいと思います。というのも、潜在的な買い手の要望について、最も把握しているのが彼らだからです。

修繕したほうが高く売れるというのならば、修繕を検討していく。満室にしてからのほうがいいというのであれば、あらゆる手段を駆使して満室にする。買い手から「ぜひ、ほしい!」と言われる条件に近づけることが大切です。

不動産販売会社に伝えるべきこと

そのほか、不動産販売会社にアピールできるものもあります。伝えるといいのは、直近の修繕履歴です。せっかくお金をかけて修繕したものですから、何月何日に◯◯をしている、ということは明確に伝えるべきです。

それから、いつでも不動産販売会社に渡せるよう、写真も撮っておくといいでしょう。たとえば満室経営だった場合、居住者がいるため内覧にはひと手間かかります。ですから、部屋の写真などはあらかじめ撮っておき、ストックしておくといいと思います。

また、ダメ元で仲介手数料を値切るのもありです。実際、私は3%の仲介手数料を2%に値切ったこともあります。ただ不動産販売会社は敵にまわしてもいいことはありませんので、相手を見て判断してください。たとえば、懇意にしている不動産販売会社で、いろいろな融通を利かせてくれているのだったら、なるべく仲介手数料は最大に払うほうがいいでしょう。その後の付き合いに支障が出ないようにするためにです。

逆に大手の不動産販売会社で、そこまで人間関係が深くない場合には、短期的な利益を優先して、値切るという選択肢も出てきます。

経営者のための初めての不動産投資戦略
曽我 ゆみこ(そが ゆみこ)
化粧品会社経営。投資家。不動産投資にて、インカムゲインとともにキャピタルゲインもプラスにすることを目指した「Wゲインスクール(WゲインCLUB)「金持ち大家さんファミリー」を主宰。また、「クオンタムリーヴの会」では、不動産投資家を目指す経営者が、本業でさらに活躍をするために、不動産投資家を目指す経営者のサポートをしている。2010年、がんにかかり、抗がん剤治療を開始。働かなくても経営が成り立つようにと不動産投資を思い立つ。その後、頭金1000万円で都内近郊の駅近物件を選び不動産投資を始め、資産6億円、返済比率40.11%以下にて運用。40代以上の女性の自立支援塾「乙女塾40」塾長を務める。著書に『毎月100万円! 確実に増える不動産投資』(辰巳出版)がある。

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