コアCPI上昇率は前月から0.1ポイント拡大

消費者物価
(画像=PIXTA)

総務省が2月21日に公表した消費者物価指数によると、20年1月の消費者物価(全国、生鮮食品を除く総合、以下コアCPI)は前年比0.8%(12月:同0.7%)となり、上昇率は前月から0.1ポイント拡大した。事前の市場予想(QUICK集計:0.8%、当社予想も0.8%)通りの結果であった。生鮮食品及びエネルギーを除く総合(コアコアCPI)は前年比0.8%(12月:同0.9%)、総合は前年比0.7%(12月:同0.8%)であった。

参考値として公表されている消費税調整済(幼児教育無償化の影響も調整)のコアCPIは前年比0.4%(12月:同0.4%)となった。制度要因(消費税率引き上げ+幼児教育無償化)による押し上げ幅は12月の0.3%から0.4%へと高まった。内訳は消費税率引き上げの影響が+1.0%、幼児教育無償化が▲0.6%である。

消費者物価
(画像=ニッセイ基礎研究所)

コアCPIの内訳をみると、電気代(12月:前年比▲1.1%→1月:同▲2.1%)、ガス代(12月:前年比0.2%→1月:同▲0.7%)は伸びが低下したが、既往の原油高の影響で、ガソリン(12月:前年比▲0.1%→1月:同6.3%)、灯油(12月:前年比▲1.4%→1月:同5.0%)が上昇に転じたため、エネルギー価格は前年比0.8%(12月:同▲0.6%)と6ヵ月ぶりの上昇となった(ただし、消費税率引き上げの影響を除くと引き続きマイナス)。

また、食料(生鮮食品を除く)は前年比1.9%(12月:同1.8%)となり、引き続きコアCPI全体を明確に上回る伸びとなっている。ほとんどの品目で軽減税率が適用されない一般外食は9月の前年比1.0%から10月に同3.2%と消費税率引き上げ分を若干上回る値上げがあった後、11月から20年1月まで同3.3%と高い伸びが続いている。

消費者物価
(画像=ニッセイ基礎研究所)

一方、消費増税後の消費の落ち込みを受けて、電気冷蔵庫、電気洗濯機などの家庭用耐久財は10月の前年比6.4%をピークに20年1月には同2.8%に、宿泊料が12月の前年比3.8%から同▲2.0%とマイナスに転じたことなどから、教養娯楽サービスが12月の前年比2.3%から同1.4%へと伸びが鈍化した。

コアCPI上昇率を寄与度分解すると、エネルギーが▲0.08%(12月:▲0.20%)、食料(生鮮食品を除く)が0.32%(12月:0.32%)、その他が0.17%(12月:0.25%)であった(当研究所試算による消費税、幼児教育無償化の影響を除くベース)。

上昇品目数の割合は消費増税前に比べて低下

消費者物価指数の調査対象523品目(生鮮食品を除く)を、前年に比べて上昇している品目と下落している品目に分けてみると(消費税率引き上げの影響を除いている)、1月の上昇品目数は282品目(12月は274品目)、下落品目数は181品目(12月は190品目)となり、上昇品目数が前月から増加した。上昇品目数の割合は53.9%(12月は52.4%)、下落品目数の割合は34.6%(12月は36.3%)、「上昇品目割合」-「下落品目割合」は19.3%(12月は16.1%)であった。

消費者物価
(画像=ニッセイ基礎研究所)

上昇品目の割合は前月から上昇したが、消費税率引き上げ前と比べると水準が低下している。前回の消費増税時と比べて税率引き上げ分を価格転嫁できなかった品目が多かったこと、消費増税後の需要の落ち込みが影響していると考えられる。

先行きは新型肺炎の感染拡大による消費低迷が物価の下押し圧力に

20年1月のコアCPIは上昇率が前月から0.1ポイント拡大したが、その主因は下落が続いていたエネルギー価格が上昇に転じたことで、制度要因(消費税率引き上げ+幼児教育無償化)を除いた上昇率は引き続きゼロ%台前半である。基調的な物価上昇率は高まっていないが、その一方で消費税率引き上げ後に消費が大きく落ち込む中でも安定的に推移しているとの見方もできる。

ただし、先行きについては消費税率引き上げの影響が残る中で、新型肺炎の感染拡大に伴う各種イベント、会合の中止、外出の手控えなどから消費の低迷が長期化し、物価の下押し圧力が強まる可能性が高い。また、年初に一時大幅に上昇した原油価格は、世界経済の減速や新型肺炎による中国の需要減退観測などから再び下落しており、エネルギー価格の上昇率は2月以降、再びマイナスに転じることが見込まれる。消費税率引き上げと幼児教育無償化の影響を含めたコアCPI上昇率は当面ゼロ%台で推移することが予想される。

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斎藤太郎(さいとう たろう)
ニッセイ基礎研究所 経済研究部 経済調査室長・総合政策研究部兼任

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