⑤ UBS

今から10年以上前にUBS は独自に「クライアント・アドバイザリー・プロセス(顧客提案プロセス)」というものを開発しました。それを活用して、クライアントのカテゴリー化などを実施してきました。これがキッカケとなり、他社も追随したと言われています。
国内の金融機関が営業社員の成果把握のために活用しているようなシステム(セールスの成績が一覧になる)をスイスでも使っており、セールスの育成にKPIを設定しています。KPI の中には顧客接触頻度なども全て盛り込むなど、収益だけではない総合的な評価を実施している様子が伺えます。

UBSの顧客提案プロセスは、

  1. 顧客のニーズと投資目的をよく聞き、理解する
  2. 1のニーズを解決するようにデザインされた提案を行う
  3. 顧客に選択肢を与え、判断を助け、同意を得た後に実行する
  4. そして、継続的にレビューを行い、リバランスなどの提案を行う

となっており、非常に基本に忠実という印象です。

⑥ Vontobel

Vontobelはチューリッヒに本拠を置く、1936年設立のスイス系プライベートバンクです。個人および機関投資家に対してサービスを提供しており、特に投資銀行部隊とチームを組んでのウェルスマネジメントを得意としています。

顧客提案プロセスは、

  1. 顧客ニーズの明確化
  2. データの収集
  3. 顧客分析準備
  4. 明確な戦略の定義
  5. 戦略の実行
  6. 定期的な戦略のレビュー

となっております。「2.データの収集」という部分が特徴的です。

Source:Vontobel Marketing brochure

以上6社について見てきましたが、スイスの各金融機関の共通点として、「Listen!! 聴く力=共感力」を大変重視していることが伺われます(下図)。

多くの大手銀行のキャッチコピーが「Listen」となっているように、結論としては、まず顧客の声に耳を傾け、そして潜在的なニーズを十二分に把握し提案することが一番大切だという考え方になります。全世界の金融機関で言われることだとは思いますが、その中でもスイスの各社は飛びぬけて重要視している印象です。

ただ、そのプライベートバンクの聖地スイスでも、新しいバンカー達は、この最低限のことですらできていないのが現状であるとの話もしばしば耳にします。

Source:Marketing brochure from each PBs

◉どこの銀行が高いマージンを稼いでいるか?

この資料はとても興味深いものでした。
少し古いデータですが、現状でも各社の特性は大きくは違っていないようです。

Source: CCP Project team, UBS Warburg; Die Bank 4/2002, p. 263

縦軸が預り資産、横軸がコスト/収入比率ですので、上記のグラフは左に行けば行くほどコストパフォーマンスが高い会社となります。
そして上に行けば行くほど預り資産が大きくなります。

リヒテンシュタイン銀行で有名な、LGTは預かり資産は相対的に大きくはないですが、コストパフォーマンスが一番であることが分かります。また右側のRBC(ロイヤル・バンク・オブ・カナダ)やシュローダーなど規模は大きいですが、コストパフォーマンスが低いことが分かります。

以上、以前にスイスを訪れた際のまとめなどをお届けさせてい頂きました。
スイスのような金融先進国だからこそ、「顧客に耳を傾ける」「顧客と投資戦略を練る」ことなどを大変重視しており、余計に基本に忠実であることは我々に大切なことを教えてくれている気がします。「自分を担当してくれるセールスやプランナーは本当に自分の話を聞いているのか?」は良い金融アドバイザーと付き合う上で重要なチェックポイントということですね。

BY Z

photo credit: Lawrence OP via photopin cc