コアCPI上昇率は前月から0.2ポイント縮小
総務省が3月19日に公表した消費者物価指数によると、20年2月の消費者物価(全国、生鮮食品を除く総合、以下コアCPI)は前年比0.6%(1月:同0.8%)となり、上昇率は前月から0.2ポイント縮小した。事前の市場予想(QUICK集計:0.6%、当社予想は0.7%)通りの結果であった。生鮮食品及びエネルギーを除く総合(コアコアCPI)は前年比0.6%(1月:同0.8%)、総合は前年比0.4%(1月:同0.7%)であった。
参考値として公表されている消費税調整済(幼児教育無償化の影響も調整)のコアCPIは前年比0.2%(1月:同0.4%)となった。制度要因(消費税率引き上げ+幼児教育無償化)による押し上げ幅は0.4%(内訳は消費税率引き上げの影響が+1.0%、幼児教育無償化が▲0.6%)である。 コアCPIの内訳をみると、灯油(1月:前年比5.0%→2月:同5.9%)の上昇幅は拡大したが、ガソリン(1月:前年比6.3%→2月:同4.8%)の上昇幅が縮小し、電気代(1月:前年比▲2.1%→2月:同▲3.2%)、ガス代(1月:前年比▲0.7%→2月:同▲1.6%)の下落幅が拡大したため、1月に前年比0.8%と6ヵ月ぶりに上昇したエネルギー価格は前年比▲0.2%と再び下落に転じた。
また、消費増税後の消費の落ち込みを受けて、電気冷蔵庫、電気洗濯機などの家庭用耐久財は19年10月の前年比6.4%をピークに20年2月には同0.3%まで伸びが低下、新型コロナウィルス感染拡大の影響で、宿泊料が前年比▲3.1%(1月:同▲2.0%)、外国パック旅行が前年比▲9.6%(1月:同0.3%)と下落したことなどから、教養娯楽が1月の前年比2.1%から同1.1%へと伸びが鈍化した。
一方、食料(生鮮食品を除く)は前年比1.8%(1月:同1.9%)となり、引き続きコアCPI全体を明確に上回る伸びとなっている。ほとんどの品目で軽減税率が適用されない一般外食は19年9月の前年比1.0%から10月に同3.2%と消費税率引き上げ分を若干上回る値上げがあった後、11月から20年2月まで同3.3%と高い伸びが続いている。
コアCPI上昇率を寄与度分解すると、エネルギーが▲0.17%(1月:▲0.08%)、食料(生鮮食品を除く)が0.32%(1月:0.32%)、その他が0.06%(1月:0.17%)であった(当研究所試算による消費税、幼児教育無償化の影響を除くベース)。
上昇品目数が減少
消費者物価指数の調査対象523品目(生鮮食品を除く)を、前年に比べて上昇している品目と下落している品目に分けてみると(消費税率引き上げの影響を除いている)、2月の上昇品目数は274品目(1月は282品目)、下落品目数は191品目(1月は181品目)となり、上昇品目数が前月から減少した。上昇品目数の割合は52.4%(1月は53.9%)、下落品目数の割合は36.5%(1月は34.6%)、「上昇品目割合」-「下落品目割合」は15.9%(1月は19.3%)であった。
上昇品目の割合は引き続き50%を上回っているが、消費税率引き上げ前と比べると水準が低下している。前回の消費増税時と比べて税率引き上げ分を価格転嫁できなかった品目が多かったこと、消費増税後の需要の落ち込みが影響していると考えられる。
エネルギー価格の急落、新型コロナによる消費低迷が物価の下押し圧力に
20年2月のコアCPIは5ヵ月ぶりに上昇率が縮小した。先行きについては、消費税率引き上げの影響が残る中で、新型コロナウィルスの感染拡大に伴う各種イベント、会合の中止、外出の手控えなどから消費が大きく落ち込み、物価の下押し圧力がさらに強まる可能性が高い。また、足もとの原油価格急落を受けてエネルギー価格の下落幅は拡大することが見込まれる。消費税率引き上げと幼児教育無償化の影響を除いたコアCPI上昇率(20年2月は前年比0.2%)は20年度入り後にマイナスに転じる可能性もあるだろう。
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斎藤太郎(さいとう たろう)
ニッセイ基礎研究所 経済研究部 経済調査室長・総合政策研究部兼任
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