(本記事は、柴田励司氏の著書『上司の「当たり前」をやめなさい』クロスメディア・パブリッシングの中から一部を抜粋・編集しています)

忙しい
(画像=PIXTA)

忙しい方が評価されると思っている

「忙しい、忙しい」と言っている人は、自分を進歩させていない─。

以前、ある企業のトップから伺いました。その通りだと思います。

仕事の「処理能力」が上がらないから、いつまでも忙しいわけです。

反対に、処理能力を高めるための努力と工夫を続けていると、仕事のスピードが上がり、時間に余裕が生まれます。

具体的には、「アウトプット」のスピードを上げると効果的です。「資料の作成」「仕事の段取りの設計」「メールの処理」の3つのアウトプットが速くなると、処理能力は格段に高まると実感しています。

ではどうやってそれらのスピードを上げるか?

まずは、当たり前ですが、基本的なスキルを上げる必要があります。

第一に、パソコンの入力のスピードを上げましょう。思考と同じスピードで入力できるのが望ましいです。

かつての同僚が『仕事が速い人ほどマウスを使わない! 超速パソコン仕事術』(かんき出版)という本を出していますが、たしかにマウス慣れしていると移動中にパソコン作業ができないので、その通りだと思います。

次に、パワーポイントやエクセルといったツールの操作─とくにパワーポイントでプレゼン資料を作るコツを習得しましょう。

必要もない資料を、時間をかけて作る人が多いため、パワポを禁止する会社もあるようですが、それは使い方が悪いだけの話。

伝えたいことを鮮明かつわかりやすく伝える上で、パワポは必須です。すらすら使えるようになっておくことは処理能力を上げる上で欠かせません。

ほかにもいろいろとありますが、もっとも大事なことは、「時間は貴重である」という感覚を持つことではないでしょうか。

私がよく言うのは、「あと5分しかない」ではなく、「まだ5分もある!」という感覚を持つことが大切です。

5分あれば、メールを数本処理できます。その気持ちがないと、5分なんて何もしないであっという間に過ぎていきます。

5分後までに何々を仕上げる、20分後までにこれを終わらせる、と持ち時間を意識して仕事をしていくと、次第に身体がそのスピード感を覚えるようになります。

上司の仕事が速くなると、部下も助かるでしょう。

上司から一向にメールが返ってこないから次の行動に移れないとか、資料づくりが苦手な上司の手伝いをさせられて自分の仕事が滞る、など部下の仕事が遅くなる“外部要因”が減るわけですから。

もちろん上司自身も処理能力が上がれば、気持ちに余裕ができるし、もっとラクもできるはずです。部下のためにも自分のためにも、処理能力を上げる努力を続けてほしいものです。

〈働き方のあり方を変える!〉
⇒部下のためにも仕事の処理能力を上げるべし

部下にやってもらえばいいと思っている

「静かに賢く老いるということは、満ちてくつろいだ願わしい境地だ(尾崎喜八『春愁』)。

この歳になって、この言葉の意味がよくわかるようになってきました。

昔は、若い起業家と会うと、彼らに嫉妬して、競り合うような発言をしていました。

しかし今は若者の役に立つアドバイスをしたい、この若者のために自分は何ができるかと考えられるようになりました。

こう書くとなんだか枯れているようですが、そんなことはありません。自分史上、最高の熱量を感じながら毎日過ごしています。

しかし、自分と誰かを比較して熱くなる、優越感を感じるということがなくなりました。

「とても熱いが、静か」という心境です。

一方で、私と同世代かそれより上の世代でよくない老い方をしている人が結構いると感じます。とくに誰もが知っているような大企業でよく見かけます。

  • 自分の存在を強くアピールするけど、実務はできない
  • 実務ができないから若い人間や業者の時間を使う

これは老害です。この中でとくに「実務ができない」は深刻です。

自分で文章を書き、資料をまとめることができないという意味です。

こうなってしまうと使い道がありません。人事もその処遇に困りますが、本人も本当は辛いはずです。

しかし彼らも自分のプライドを守りたいので、口は挟みます。真剣に考えていることをアピールするために、会議の場で流れに反する発言をします。

ポジションが上になればなるほど、質的に高い仕事をするから、報酬が高い。

これがグローバルスタンダードです。

一方で、昔の日本企業には、立場が上になればなるほど自分は仕事をせず、部下が決済を求めてきたらやってあげよう、というお代官みたいな管理職が散見されます。

今後、ビジネスの現場では大きな変化が間違いなく起きます。AIの発達は従来の仕事のあり方を変えるでしょう。しかも10年以内にそうなると思います。

とくにアラフィフ以上の管理職で、以下の「ポータブルスキル」(どの会社であっても、どの仕事であっても有用なスキル)が心もとない人はこの機会に習得することをおすすめします。

  • 議論をまとめ、納得させるファシリテーションスキル
  • 情報を整理し構造化するスキル
  • 聞き手を惹き込むプレゼンテーション
  • わかりやすい文章・資料をつくるスキル

この中で「わかりやすい文章・資料をつくる」は基本中の基本です。

万が一、PCスキルがお粗末で資料をつくれないというレベルでしたら、大至急手を打った方がよいでしょう。

〈働き方のあり方を変える!〉
⇒できないことは若い人にやってもらう、はもう通用しない
上司の「当たり前」をやめなさい
柴田励司
1962年東京都生まれ。上智大学文学部英文学科卒業後、京王プラザホテル入社。同社在籍中に、在オランダ大使館出向。その後京王プラザホテルに戻り、同社の人事改革に取り組む。1995年、組織・人材コンサルティングを専門とするマーサー・ヒューマン・リソース・コンサルティング(現マーサージャパン)に入社。2000年、38歳で日本法人代表取締役社長に就任。2007年、社長職を辞任し、キャドセンター代表取締役社長、デジタルスケープ(現イマジカデジタルスケープ)取締役会長、デジタルハリウッド代表取締役社長、カルチュア・コンビニエンス・クラブ代表取締役COOなどを歴任。2010年7月より「働く時間」「学ぶ時間」をかけがえのないものにしたいという思いのもと、経営コンサルティング事業と人材育成事業を柱とする株式会社Indigo Blueを本格稼働。2015年11月より代表取締役会長に就任。著書に『優秀なプレーヤーは、なぜ優秀なマネージャーなれないのか?』『組織を伸ばす人、潰す人』など多数。

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