(本記事は、柴田励司氏の著書『上司の「当たり前」をやめなさい』クロスメディア・パブリッシングの中から一部を抜粋・編集しています)
空気が悪いのを放っておく
会議中の“空気”でその会社の成長性がわかります。
当然ながら、会議の空気がどよんと沈んでいる会社は、この先期待できません。
- 発言者に対して攻撃的なコメントをする
- 結論をあえてはっきりさせないで終える
- 意見があるのに押し黙っている(のがわかる)
- 業績悪化や失敗に対して犯人探しをする
- 特定の人が延々と話し、誰も口をはさまない
こうした会議には悪い空気が流れています。
出席者のベクトルは成功や成長、協力といった前向きな方向に向かわず、犯人探しや責任逃れ、他人の揚げ足取りに終始します。そしてこれが常態化すると、会社は助け合いのないバラバラな集団となります。
問題は、この空気感がわからない人がいることです。
つまり、自分の行動が会議の空気を悪くしていることに気づかない“鈍感”な人の存在です。
この場合、リーダーがとるべき行動は1つです。
鈍感な人に対して、「あなたが空気を悪くしている」ということを伝えるのです。
しかし、伝え方には注意する必要があります。
その場の空気を感じ取れない人に、「なんで感じないんだよ!」と言っても伝わりませんから。
「あの場面で、あなたがこういう発言をしたので、こんな気持ちになった人たちがいる。だけど、あなたは彼らをそういう気持ちにさせたかったわけじゃないでしょ?」
と聞いてみるのです。
この問いかけに対してハッとして、なぜ自分がその発言をしたのかの説明を始める人が多いです。
これは「悪いことをした」という意識による言い訳です。
そういう人は、また気づかぬうちに空気を悪くしていることを言っていないか、周りにフィードバックを求めるようになります。
この場合は、少し時間がかかると思いますが、是正されることが多いので、ぜひやってみてください。
そうなると、きっと会議は前向きなものになるでしょう。
- 〈会議のあり方を変える〉
- ⇒後ろ向きな発言が多い人にははっきり注意する
資料が多いのをよしとする
どんな会議をしているかでその組織の実力がわかります。ベンチャー企業でありがちなのが、社長がずっと話をしている会議ですが、典型的なダメ事例です。
ベンチャー企業では社長訓示は存在しますが、会議が存在しないことが多々あります。それが当たり前になると、個々の社員は自分で考えて動くことを忘れてしまいます。
いかに社長個人に実力があったとしても、組織としては極めて脆弱になります。そこに成長の限界が生まれるのです。
数年前にインドのニューデリーを訪問した際に参加した、アウトソーシング請負ベンチャーであるI社の会議は衝撃的でした。
アジェンダ(議題)が事前に共有されているとはいえ、主担当が誰かわからないくらい参加者が活発に発言し、議論が展開されていました。
それをファシリテイター(進行役)が整理し、参加者全員で共有することをくり返す。正味1時間の会議でしたが、実に濃密で、いい解決策が生まれていました。
会議を効果的に行うために留意すべき事はシンプルです。
全員が課題を理解し、議論できる土壌をつくること。議論の内容を可視化し、全員で確認すること。この2点に留意すればよいでしょう。
課題を理解してもらうために、膨大な資料を事前に送りつけたり、説明したりするのは最悪です。情報過多は、かえって理解の邪魔になります。
説明は、次の流れで行えばよいでしょう。
- ① そもそも何が問題か ② 何を決めてほしいか ③ 意思決定にあたっての論点は何か ④ 選択肢はどういうものがあるか ⑤ 提案者としてはどうしたいか
これを「意思決定に必要な5つの流れ」と称します。議論の際には、原則すべてこの流れで説明し、議論します。膨大な資料の説明は不要です。
様々な意見が出たら、白板やパソコン上で可視化して、全員で確認。このプロセスを何度もくり返します。これをラップアップといいます。
このラップアップを行うファシリテイターは全員が発言できるよう促し、特定の人の意見が多い場合には、その人の発言を抑える役目も果たすのです。
ファシリテイターは社長以外の人間が行うのが望ましいです。社長も一参加者として議論に加わるか、あるいは議論を見守ります。ファシリテイターは社長の声に皆が引きずられないように注意します。その後、議論の内容を踏まえて最終的には社長が決めます。
議論を終えたら、当日中に議事録を作成して、関係者に配布。その際、欠席者へのフォローも忘れてはいけません。これらを意識して会議を運営することで組織力が強化されていくことは言うまでもないのです。
- 〈会議のあり方を変える〉
- ⇒いい会議は全員が考えながら参加している