◉UBSの特性④基本に忠実に聴く力と顧客関係を重視

このUBSの本店訪問時には、多くのプロフェッショナル達からインタビューを行うことができました。特に印象深かったのは、顧客担当者1人1人から顧客との関係強化と(前編でもお伝えした)聴く力を重視する姿勢が感じられたことです。

例えば、UBSスイス本社にて財団やファミリーオフィス担当チームのヘッドをされている女性の話ですが、彼女も「Listening=聴く力」が最も重要と繰り返していました。その結果として顧客満足度の向上に繋がるし、チャンスがやってくると考えているそうです。

ちなみに彼女が担当すような財団やファミリーオフィスとなるとその資産も大規模で、一番大きなクライアントは運用資産額が1000億円を超えるそうです。また、平均でも顧客辺り200億〜300億円の運用資産額があるとのことです。
話を聞いていると、顧客の規模的にも、機関投資家向けのアプローチ方法に似ているような印象です。顧客のコンタクトを増やし、毎回指名をもらえるように関係強化には相当力を入れているとのことでした。

また、UBSだけでなくクレディスイスから参加していた同社幹部とプライベートバンカーにも話を伺えたのですが、2人ともタックスや承継といったキーワードを連発していました。ジュリアスベア(大手プライベートバンク)も同じだったのですが、スイス系のプライベートバンクは顧客との長期の関係性に重点を置いているため、タックスや承継に力を入れていると考えられます。

余談ですが、UBSは米国内でのビジネスにおいては、ブローカレッジ(金融商品の売買)中心のモデル、スイスではプライベートバンク(富裕層向けのコンサルティングによるフィーモデル)中心と、各々モデルが異なる体制を取っています。
そして両者のデータを見比べると面白い傾向があります。結果的に、プライベートバンクモデルの方が収益性高く、預かり資産に対するチャージできている平均手数料は、ブローカレッジの手数料が0.81%、プライベートバンクの手数料が1.03%となっているとのです。
このような事実も、UBSが顧客との関係強化や顧客アプローチ内でのリスニングに力を入れている理由にあるのかもしれません。

◉UBSの日本市場への取組み方

最後に訪問時に伺ったUBSの日本市場への取組みについてお伝えします。

プライベートバンク業界で30年の経験を持つUBSのウェルスマネジメント(富裕層向け資産管理)部門副会長、Alain Robert氏へ伺った話なのですが、日本には東京・大阪・名古屋にプライベートバンクの拠点を持っており、ここ数年で急成長することが出来たとのことです。
そして日本での更なるビジネス拡大を検討中とのことでした。

その中で、「多くの外資系金融機関が撤退した日本市場で、UBSが他社と異なり業績を伸ばせた理由は何だと思うか?」ということに関する考えをお聞きしました。同氏の答えは「過去3回日本市場にトライしては失敗し、その中で蓄積したノウハウと経験が大きい」という内容でした。
またUBSはアジア全体も含めると投資銀行チームも強いので、その人脈やビジネスチャンスをプライベートバンクにも生かすことができているとのことです。

またUBSはアジアに関しては、北京でもウェルマネジメントのライセンス持ってビジネスをしており、中国市場も含めた開拓の意欲を伺わせます。

以上、UBSのスイス本社にて見聞きすることが出来たUBSの顧客アプローチなどについてなどをお伝えしました。
今回取り上げた一つ一つの項目はどれも「当たり前」「基本」に属すことかも知れません。しかしその基本を国内金融機関に比較して遥かに高いレベルで実践しているという印象です。

今後の金融機関や担当者の選択に役立てて頂ければ幸いです。

BY Z

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