(本記事は、スティーブ・シムズ氏の著書『なぜ私は「不可能な依頼」をパーフェクトに実現できるのか?』大和書房の中から一部を抜粋・編集しています)

失敗は新しい発見だ

なぜ私は「不可能な依頼」をパーフェクトに実現できるのか?
(画像=Webサイトより※クリックするとAmazonに飛びます)

私は挑戦することの価値を心から信じている。

挑戦することに尻込みする人はたくさんいる。たいていの人が、何かを「やりすぎる」よりも、「考えすぎる」ほうを選んでいる。何かに挑戦するなら、まず戦略を分析し、コストを計算し、計画を立てる。

そうやってあらゆるシナリオを想定し、結局はこの挑戦が失敗に終わるもっともらしい理由を2万個もリストにするだけだ。挑戦がうまくいく可能性が1つあったとしても、その存在は無視される。

あなたは週の初めの月曜日に、その1週間の計画をすべて立てるタイプだろうか?1日ごと、1時間ごとの予定を決め、To Doリストを作る。そして計画のできばえに心から満足し、足取りも軽くランチに出かける。ついでに友達に電話して、ちょっとおしゃべりもするかもしれない。

そして職場に戻り、リストを見て、その日の作業を始める。しかしそのとき、ふと壁の時計を見てびっくりする。もう子供を迎えに行く時間や、ミーティングの時間になっているではないか。リストにのっていることはまだ何もやっていない。あなたの1日はどこへ行ってしまったのだろう?

あれこれ考えて分析している間に、貴重な1日が消えてしまったのだ。

または、資金集めに奔走する起業家の例で考えてみよう。彼は自分の事業に興味を持ってくれそうな地元の投資家を探し、100人をリストにした。次に、その100人が投資している他の企業を調べ、それらの企業の設立者をリストにすると、彼らのリンクトインのプロフィールをすべて熟読した。

そこまですると、今度は設立者たちにアプローチするシナリオを作り、彼らの多くを実際にランチに誘う。彼らとつながりができれば、投資家に好意的に紹介してもらえるかもしれないと期待しているからだ。その間に、それぞれの投資家について、質問しそうなこと、反対しそうなことを想定し、事前に答えを用意しておく。

ここまでの準備をして、はたして結果はどうなったのか?

投資家に接触する準備が完璧に整うころには、もう会社の資金は底をつき、ライバル企業に先を越されている。そして従業員がパニックを起こし、次から次へと会社を去っていく。まだ1人の投資家にも会っていないのに、会社は立ちゆかなくなってしまった。投資家に拒絶されるのを恐れるあまり、分析と準備に時間をかけすぎたのだ。

何も行動しない人は、何も手に入れることができない。

アイデアを世間に発表して反応を見る

私のやり方は違う。私はまず行動する。

目標を決めたら、そのうちの一部を実際に試し、うまくいくかどうか確認する。もしうまくいかなかったら、「うまくいかない方法が1つ見つかった」と考える。そして今度は、違う方法で試してみる。それもまた失敗したとしても、問題はない。うまくいかない方法が2つ見つかっただけだ。これが私流のやり方だ。

クライアントのために大がかりなイベントを実行するときも、イベントのすべてのプロセスを事前に把握しておこうとは思わない。大切なポイントはそこではないからだ。

私がまず確認するのは、「自分にできないことは何か」ということ。それがわかったら、私にできないことをできる人を見つけるのが次のステップだ。私にできないことを、満足できるレベルでできる人が見つかれば、自分をとてつもなく優秀な人間に見せることができる。「キックスターター」や「インディーゴーゴー」といったクラウドファンディングのサイトを利用すれば、自分のアイデアがマーケットに受け入れられるか試すことができる。まずは世間に発表して、反応を見てみよう。そうすれば本当に需要があるかどうかがわかり、しかもお金はほとんどかからない。

インターネットを活用すると、自分のアイデアにどれぐらいの可能性があるか簡単に知ることができる。アイデアをどこかに投稿すれば、「それはいいね!」や「最低だ」といったコメントがすぐに返ってくる。これこそまさに正直な反応だ。インターネットがあれば、多大な時間とお金を費やす前に、人々の正直な反応を知ることができる。

最初のクラウドファンディングが大失敗に終わっても、それはそれでかまわない。その失敗から学び、修正するべき点を見つけることができる。そして改善されたアイデアをひっさげて再びクラウドファンディングに挑戦し、2ヵ月ほど待つ。それでもダメならまた挑戦する。

もしかしたら、文字のフォントがいけないのかもしれない。色やレイアウトの問題かもしれない。商品説明の文章がよくないのかもしれない。商品そのものはまったく同じでも、アイデアの提示のしかたで結果が変わることもある。

アイデアを世間に発表して反応を見るのはとても大切なことだ。ここでの問題は、あなた自身の考えではなく、世間の人がどう見るかということ。製品自体はすばらしいが、もしかしたら売り込む相手を間違えているのかもしれない。または、売り込む相手は正しくても、製品に改良を加える必要があるのかもしれない。またはもしかしたら、売り込みの「口調」が間違っているのかもしれない。

料理ができないレストラン経営者は成功できるか?

ある知り合いの男性は、レストランを開きたいと考えていた。ただのふわふわした夢ではなく、全身全霊で取り組む覚悟だった。本気でやるのは、間違いなく勝利の方程式だ。

しかし問題は、彼にはお金がまったくなく、学校を出たばかりで、しかもあろうことか、料理ができなかったことだ。

そこで私は、なぜよりによってレストランなのかと彼に尋ねた。べつに嫌味を言いたかったわけではない。純粋に理由が知りたかっただけだ。料理のできない人が、なぜレストランを持つことにそこまでの情熱を感じているのか?

つっこんだ質問は、自分自身をふり返るきっかけになる。私があえて厳しい質問をするのは、相手の本気度を知るためだ。そこで答えられない人は、挑戦しても失敗に終わるだろう。シリコンバレーやハリウッドの投資家も、よくこの方法を活用している。少なくとも優秀な投資家はそうだ。

私はこの男性に、10人の客を招待して料理をふるまってみるといいと言った。そうすれば、自分にその仕事をこなす能力があるかどうかがわかる。そして食事が終わったら、お客にアンケートに答えてもらう。何を言われても、素直に聞かなければならない。

招待された友人たちは、まずくて食べられたものじゃないと言うかもしれない。しかしだからといって、彼が夢をあきらめなければいけないというわけではない。ただ「自分にできないこと」を発見すればいいだけだ。

レストランオーナーでも料理のできない人はいる。料理はできなくても、レストランを持ちたいと思うこともあるだろう。もしかしたらその人は、チームを指揮するのが得意なのかもしれない。その場合は、優秀なシェフを見つけて料理を任せ、優秀なデザイナーを見つけて店の内装や外装を任せる。さらに、お客を喜ばせるのが得意な接客スタッフを揃えれば完璧だ。

オーナーが自分でジャガイモを刻む必要はない。テーブルセッティングをする必要もない。それぞれの仕事ができる人を集め、働きやすい環境を整えればいいだけだ。

私はなにも、あのレストランを開きたい若者は失敗すると言っているのではない。

ここで、「失敗」という言葉について考えてみよう。私が思うに、「失敗」は「成功しない」という意味ではない。

タイ語には、英語の「no」にあたる言葉が存在しない。「yes」や「try」にあたる言葉はあるが、「no」はない。そこで私たち英語を話す人間も、「失敗(fail)」に替わる言葉を見つけるべきではないだろうか。挑戦(try)して失敗(fail)したのなら、その状態を表す言葉は「発見(discover)」であるべきだ。

料理作りに挑戦し、結果としてまずい料理ができてしまったのなら、それは失敗ではなく発見だ。もしかしたら、もう少し塩を足せばよかったのかもしれない。

テーブルセッティングに苦情が出て、「隣とくっつきすぎていて肘がぶつかる」と言われたのなら、正しいテーブルセッティングの方法を発見できたと考えればいい。

あの若者のように、お金もなく、料理もできず、それでもレストランを開きたいという夢があるなら、周囲に自分を信じさせなければならない。なぜ人々は、あなたを支援しなければならないのか?何を根拠にあなたの成功を信じるのか?

何かに挑戦するなら、その問いにきちんと答えられなければならない。答えられれば、残りの過程はずっと簡単になるだろう。

そこで、まずは自分のやりたいことについて調べてみよう。足に砂をつけたいなら、ビーチを歩けばいい。それと同じように、レストランを開きたいなら、まずレストラン業界を知らなければならない。

評判のレストランへ行って食事をし、それぞれの長所を分析する。そこで働く人たちに話を聞く。自分もレストランで働き、業界の仕組みや、いい店の条件を肌で感じる。自分がまだ知らなかったことを発見し、それについて学ぶ。その過程に、「失敗」は1つも存在しない。

失敗とは勉強のために払う学費だ

あなたが生まれて初めてビジネスを起ちあげるとしよう。製品自体はたしかにすばらしいのだが、まったく売れず、資金が底をついてしまった。

この状況は失敗ではない。ただ会計とマーケティングの大切さを発見しただけだ。この発見に基づいて、次の動きを決めればいい。それに加えて、自分では気づいていないかもしれないが、あなたは費用を払って勉強したことにもなる。

大学に通うには学費が必要だ。何かを学ぶには、それ相応のお金を払わなければならない。ビジネスもそれと同じだ。ビジネスでの失敗は、もっといいやり方を学ぶための学費だと考える。もっといいデザイン、マーケティング、技術、プロジェクト、マネジメント、人材が必要だということを、失敗から学ぶのだ。人は失敗することで、つねに学び、成長していける。

障害は存在しない

起業を目指すのなら、拒絶や見下しに耐性をつけなければならない。自分に向かって投げられるすべての「ノー」に負けない気持ちが必要だ。誰にどんな現実を突きつけられても、そこであきらめてはいけない。いちばん大切なのは情熱だということを思い出そう。たいていのものはレンタルやアウトソーシングでまかなうことができるが、情熱だけは自分の中に持っていなければならない。

人生はうまくいかないときもある。やる気が出ないとき、気が乗らないときもある。そこで、「そんなこともあるさ!」と自分をごまかすのは、いちばんやってはいけないことだ。

気持ちが停滞したら、あきらめてそこにとどまってはいけない。自分の情熱を見つけ、停滞の沼から飛び出さなければならない。たった20分でもかまわない。停滞とは正反対のことをしよう。純粋に楽しいことだ。そうやって気持ちを高め、また目の前の仕事に戻ってくる。

すると、1時間前はまるでギロチンのように見えた障害が、もうまったく気にならなくなっている。ギロチンどころか、ハードルでさえない。スピードバンプにもならない。情熱をチャージしたあなたは、ターボエンジン全開ですべてをなぎ倒して進んでいく。ゾーンに入った状態だ。人はゾーンに入ると、障害がまったく気にならなくなる。

プロジェクトの成否を分けるカギは、あなた自身がどれだけそのプロジェクトを信じているかということだ。情熱と本気度は比例する。本気であるほど、情熱も大きい。どちらか一方だけを持つことはできない。それは絶対に不可能だ。しかし、本気と情熱の両方があれば、もう怖いものは何もない。

本気と情熱に、「失敗」を「発見」と考える態度を組み合わせる。あなたはもう、失敗を恐れていない。なぜなら、失敗というものは存在しないからだ。失敗と呼ばれているものは、実は新しいやり方を発見しただけだ。情熱、本気、発見。この組み合わせがあれば、どんな戦いにも勝つことができる。

この態度を身につければ、もう障害などというものは存在しない。そもそも障害は、すべて想像の産物だ。

私はいたって真面目に話している。これは口先だけのきれいごとではない。ブルーフィッシュの神髄だ。

障害は自分の頭の中にしか存在しない。失敗したときに落ち込まないように、あらかじめ言い訳を決めているだけだ。ここで「失敗」という言葉を使ったのには意味がある。障害があると思い込んでいる人は、挑戦を終わりにする方法を探しているからだ。そのとき、人は失敗を経験することになる。

たとえノックダウンを食らっても、敗者ではない。人は誰でもノックダウンを食らう。昔から言われているように、倒れたときが戦いの終わりではない。立ち上がるのをあきらめたときが、戦いの終わりだ。

なぜ私は「不可能な依頼」をパーフェクトに実現できるのか?
スティーブ・シムズ(Steve Sims)
ロンドンのレンガ職人の家に生まれ、レンガを積み続ける10代を過ごす。19歳の時に仕事を辞め、朝はケーキ配達、午後は保険の営業、夜はクラブのドアマンと3つの仕事を掛け持ちする生活に。数年後、香港で銀行の仕事を得るが2日で解雇され、やむを得ずドアマンの仕事をしたところ頭角を現し、富裕層からパーティの企画を依頼されるようになる。その後、顧客の生涯の夢を叶える高級コンシェルジュ・サービス「ブルーフィッシュ」を創設し、20年にわたって経営している。顧客のリストには世界の名だたるセレブが名を連ねる。ブルーフィッシュは世界各地にオフィスを構え、「フォーブス」誌、「ニューヨーク・タイムズ」紙、「アントレプレナー」誌など数多くのメディアに取り上げられてきた。また、ハーバード大学や国防総省などで基調講演を行った経験を持つ。

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