(本記事は、スティーブ・シムズ氏の著書『なぜ私は「不可能な依頼」をパーフェクトに実現できるのか?』大和書房の中から一部を抜粋・編集しています)

クライアントもスタッフも同じ基準で選ぶ

聞く
(画像=VGstockstudio/Shutterstock.com)

現在の私の仕事は、人間関係の維持管理だけだ。取引先との関係、弁護士との関係、エージェントとの関係、マネジメント会社との関係、セレブリティとの関係、クライアントとの関係、そしてホテルとの関係。さまざまな人と、さまざまな関係がある。後はただ、正しい場所で、正しいときに会話をすればいいだけだ。人間関係さえ大切にしていれば、物事は自然にうまく運ぶようになっている。

私が求めているのは、自分と同じように考える人間だ。同じような価値観、倫理観を持つ人間だ。そこで再び、この大問題にぶつかることになる。「この人は、本当に私が求めている人だろうか?」

こういう仕事をしていると、傲慢な人間、勘違いしている人間にもたくさん出会う。「このパーティに行きたいんだ。ジョージ・ルーカスが来るからね。デミ・ムーアにも会って、ぜひ自分の脚本を見せたい。なんとか都合をつけてくれないか?」

都合をつけるぐらい何でもないが、それでも答えは「ノー」だ。私のクライアントには、私が好きになれる人しかいない。その基準だけは譲れない。私が相手にするのは本物だけだ。

スタッフを選ぶときも、基準はクライアントを選ぶときとまったく同じだ。私は名刺を持たない。スタッフの半数も名刺を持っていない。うちの会社には肩書きさえない。社長も、会長もいない。なぜなら、私たちはみな人間関係でつながっているからだ。そしてそんな私たちの仕事は、他の人が人間関係を結ぶのを助けることだ。

仕事に新しさはまったくない。それでも独自の特徴をあげるとするなら、「愚かさ」と「不格好さ」ということになるのだろう。しかしこれとて、今までにない斬新な発想というわけではない。6歳の子供が本能的に一緒に遊ぶ相手を決めるのと同じことだ。

気の合う仲間が集まって、いい仕事をする。これぞまさに夢の仕事だろう。

クライアントの好みを徹底的に調べ、喜ばせる

相手が得意先でも、クライアントでも、同僚でも、自分を偽らないのはとても大切なことだ。本当の自分を出し、相手への思いやりと尊重を忘れなければ、真の人間関係を築くことができる。

私がクライアントについて、いつも入念に下調べするのもそのためだ。その人の好きなものを知っていれば、本当に相手を喜ばせるプランを考えることができる。宇宙に行きたい人、海の底まで潜りたい人、ベントレーが好きな人、マルーン5が好きな人──好きなものは人それぞれだ。

チョコレートを喜ぶ人もいれば、サイン入りのギター、野球のチケット、レーシングコースでのジャガーの試乗を喜ぶ人もいる。自閉症のためのNPOに寄付したい人もいる。またはバンコクにある小さな店で絶品のタイカレーが食べたい人もいる。

彼らの好みをさぐり、あなたにしかできない方法でそれをプレゼントする。そして相手の目を見て、「これは、他の誰でもない、あなただけのためにやった」と心から伝える。

人を喜ばせるには「聞く」「行動する」ことだ

ここでのコツは、創造性を発揮することと、使えるものは何でも使うことだ

何か特別なことをしてあげたいと思う人の顔を思い浮かべてみよう。その人は子供がいるだろうか?もし知らないなら、尋ねてみよう。ペットは飼っているだろうか?私はシーズーを飼っているので、お互いにペットを飼っていたらきっと話がはずむだろう。その人は音楽が好きだろうか?もし好きなら、アンドレア・ボチェッリと会えるかもしれないし、ZZトップと一緒にセッションできるかもしれない。

ここで大切なのは、相手の話を聞くことだ。表情や口調に気を配り、相手が本当に好きなことを探り出す。それがわかれば、相手を喜ばせる独創的な贈り物を考えることができるだろう。

もちろんあなたは、うわべだけの気持ちで相手を喜ばせようとしているのではない。本当にその人のことが好きだから、話を真剣に聞き、喜んでもらえることを見つけようとする。あなたはその人のためにわざわざ時間を割いて話を聞き、そして行動する。

聞くことと行動は最強の組み合わせだ。「いつかあの人を喜ばせることができたらいいなぁ……」という気持ちだけでは、何の結果も生み出すことはできない。

目の前の瞬間に集中する

「いつか」という言葉には何の意味もない。大切なのは「今日」だ。「今日」という言葉に意味を持たせなければならない。

私は、人として好きだと思える人しかクライアントにしない。彼らの夢を叶えるときに、こちらも本気になるためだ。逆に言えば、好きになれない人に対しては本気になれない。きっとビジネスとしては失格なのだろう。

クライアントとの関係は、すべて「聞く」ことで決まる(ちなみにこの法則は、クライアントとの関係だけでなく、すべての関係にあてはまる)。しかし、多くの人はこれがわかっていない。自分が話すことで、会話を支配しようとする。

私はよく、「流れに任せろ」とアドバイスする。会話は予想もしていなかった方向に流れていくかもしれない。だから、オープンであることがカギになる。そしてオープンになるには、目の前の瞬間に完全に集中していなければならない。

会話の相手がスマホをいじりだしたら、どんな気分になるだろう?または電話の向こうから、パソコンのキーボードを打つ音が聞こえてきたら?私の場合、そうなったらもう会話終了だ。相手は私との関係をそこまで大事だとは思っていない。それなら、私も自分の時間を使う必要はないと判断する。

ここで気をつけなければならないのは、表向きは「完璧」を装う人たちだ。完璧を装う人たちは、相手にも同じような空虚な完璧を期待する。彼らは存在しない何かを追い求めている。そういう人たちとつきあうのは時間のムダだ。

なぜ私は「不可能な依頼」をパーフェクトに実現できるのか?
スティーブ・シムズ(Steve Sims)
ロンドンのレンガ職人の家に生まれ、レンガを積み続ける10代を過ごす。19歳の時に仕事を辞め、朝はケーキ配達、午後は保険の営業、夜はクラブのドアマンと3つの仕事を掛け持ちする生活に。数年後、香港で銀行の仕事を得るが2日で解雇され、やむを得ずドアマンの仕事をしたところ頭角を現し、富裕層からパーティの企画を依頼されるようになる。その後、顧客の生涯の夢を叶える高級コンシェルジュ・サービス「ブルーフィッシュ」を創設し、20年にわたって経営している。顧客のリストには世界の名だたるセレブが名を連ねる。ブルーフィッシュは世界各地にオフィスを構え、「フォーブス」誌、「ニューヨーク・タイムズ」紙、「アントレプレナー」誌など数多くのメディアに取り上げられてきた。また、ハーバード大学や国防総省などで基調講演を行った経験を持つ。

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