原油先物価格が史上初のマイナス圏に入り、世界景気の悪化懸念が一段と強まった。一方、原油安は一部の企業の事業環境の好転にもつながる。この日はタンカー運賃の上昇期待から共栄タンカー(9130)が一時ストップ高したほか、佐川急便のSGホールディングス(9143)など陸運の一角も燃料コストの抑制期待を背景に買われた。有力銘柄はまだほかにも眠っていそうだ。

原油先物価格,メリット株
(画像=PIXTA)

原油価格の指標のWTI(ウエスト・テキサス・インターミディエート)先物は、期近の5月物が20日に1バレル=マイナス37.6ドル(前日比55.9ドル安)に値下がりした。新型コロナウイルスの世界的流行により落ち込むエネルギー需要。買い手が商品に加えて現金を受け取れる状況だ。

WTIの現物の受け渡し地のオクラホマ州クッシング地区では原油在庫が積み上がり、貯蔵の限界が近い。現物を引き取らずに済むように、期近物の投げ売りが加速した。期先の6月物は同日時点で1バレル=21ドル台とプラス圏を維持していたものの、期近同様に下落圧力が掛かっている。

直近ではサウジアラビアなどのOPEC(石油輸出国機構)や、非加盟の産油国のロシアなどが協調減産で合意した。しかし、減産幅は日量約1000万バレルと、1日当たり2000万~3000万バレルとされる需要減をはるかに下回る。トランプ米大統領は政府の原油戦略備蓄を最大7500万バレル積み増すことを検討していると明らかにしたが、需給改善の期待は高まらない。

一方、石油の貯蔵には大型タンカーも使用されるため、稼働船の減少に伴う運賃上昇が生じ始めている。タンカーの運賃指標(ワールドスケール=WS)は17日時点で、中東発東アジア向けが前週末比19.2%高の155ポイントに上昇した。共栄タンカは21日、値幅制限いっぱいの1046円(前日比150円高)まで急騰し、明治海運(9115)もストップ高となった。

今後は貯蔵施設の関連銘柄にも思惑が向かう可能性がある。石油タンクで石井鉄工所(6362)やトーヨーカネツ(6369)が浮上するほか、防食塗装では大日本塗料(4611)が北海道・苫小牧の国家備蓄基地向けで実績を持つ。

トラック運送は、外出自粛に伴うEC(=Eコマース、電子商取引)市場の拡大に、燃料安という追い風が加わる。有力銘柄としてはアマゾンの配達を受託する丸和運輸機関(9090)のほか、トナミホールディングス(9070)、出版物や医薬品が主荷のカンダホールディングス(9059・(2))などをマークしたい。

穴株は原油安メリットの大きい紙・パルプ周辺で、不織布を手掛けるハビックス(3895・JQ)に注目したい。同社は燃料価格の下落を背景に、前2020年3月期の営業利益予想を引き上げている。今期もその恩恵が期待できそうだ。3月の安値595円からの戻り幅はまだ限定的(21日終値は727円)で、本格反騰はこれからだ。(4月22日株式新聞掲載記事)

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