要旨

中国経済の現状
(画像=PIXTA)
  1. 新型コロナが中国経済に与えた打撃の凄まじさが明らかになってきた。中国国家統計局が4月17日に公表した20年1-3月期の国内総生産(GDP)は前年比6.8%減だった。リーマンショック後にも急激な経済減速に見舞われたが、それを遥かに超える大打撃となった(下左図)。なお、1-3月期の中でも1-2月期と3月とでは状況が異なっており、実質GDP成長率に連動する「景気インデックス」は1-2月期の前年比7.7%減から3月には同5.0%減まで回復した。
  2. 需要項目別に見ると、個人消費の代表指標である小売売上高は前年比19.0%減と19年通期の同8.0%増からマイナスに転じた。飲食や自動車などほとんど全てのモノが大幅なマイナスに落ち込んだが、生活必需品の多い日用品やネット販売は比較的堅調だった。投資の代表指標である固定資産投資も前年比16.1%減と19年通期の同5.4%増からマイナスに転じた。製造業が同25.2%減、不動産開発投資が同7.7%減、インフラ投資が同19.7%減だった。輸出も前年比13.4%減と19年通期の同0.5%増から大きく落ち込んだ。
  3. 中国における新型コロナの確認症例は82,830名、死亡者は4,633名と甚大な被害を被ったが、現存感染者数は2月17日をピークに減少し始め723名になった。但し、欧米諸国や新興国では新型コロナの爆発的感染が同時多発しており、海外から“逆流”する恐れが排除しきれない状況にある。そして、習近平国家主席は4月8日、「生産・生活秩序の全面回復を加速」する指示を出したものの、「防疫対策を常態化する中で」という“条件付”となった。
  4. 2020年の実質成長率は前年比2.4%増と予想している。1-3月期は前年比6.8%減と大幅なマイナスに落ち込み、4-6月期も防疫措置を維持し“非接触型”の出口戦略を採用しているため、実質成長率は前年比ゼロ近辺に留まると見ている。但し、5月下旬にも全人代が開催される見込みで、“アフター社会変容”の経済発展を支える“新型インフラ”を打ち出すと見られるため、20年下半期にはV字回復するだろう(下右図)。但し、新型コロナは予断を許さない状況にあるだけに、“第2波”が襲来して経済活動が停止しマイナス成長に陥る可能性も残る。
中国経済の現状
(画像=ニッセイ基礎研究所)