企業が業績不振に陥った時に、経営者はさまざま努力をして経営再建を目指すが、最終的な手法として行われるのが、従業員を解雇する整理解雇である。整理解雇の場合、従業員側には非がなく、企業の一方的な都合で行われることから、実施するには要件があり満たさない場合には解雇が無効と判断されることがある。

そもそも整理解雇とは?リストラとの違い

従業員
(画像=4 PM production/Shutterstock.com)

解雇とは、従業員との合意がなく企業側から一方的に労働契約を解除することである。解雇は、その原因によって「普通解雇」「懲戒解雇」「整理解雇」に分けられる。では、整理解雇とはどのようなものであろうか。また、リストラとの違いについて解説しよう。

整理解雇とは?

会社が業績不振になり、経営再建策として人員整理をしなければならない場合に行う従業員の解雇を「整理解雇」と言う。

他の解雇との違い

懲戒解雇とは、就業規則等に反した従業員に対して懲戒として行なわれる解雇だ。事由としては、長期の無断欠勤や会社の金品の横領、罪を犯したことによる逮捕や起訴などがある。

普通解雇とは、懲戒解雇や整理解雇と区分するために使われる言葉で、勤務成績が著しく悪い、採用時に重要な経歴を詐称していた、病気やケガによって働くことができなくなったことを理由とする解雇のことである。普通解雇と懲戒解雇は、従業員との間にある個別の問題を理由としているが、整理解雇には従業員側には落ち度がないため、使用者が解雇するには合理的な理由が必要とされる。

リストラとの違い

本来リストラとは、リストラクチャリングの略であり、企業が経営環境の変化に対応して事業を再構築することだ。その手法には、不採算部門の縮小や撤退、事業所の統廃合などの事業構造の再構築や無駄な経費を削減して効率的な財務内容を目指す財務構造の再構築、そしてワークシェアリングやアウトソーシング、労働時間の制限など人事構造の再構築がある。

日本でリストラというと解雇のイメージが強いが、賃金カットや減給、降格、転籍、転属なども人事構造におけるリストラに含まれる。

整理解雇が適法となる4つの要件

経営再建のために企業が従業員を解雇するには、合理的な理由が必要だ。過去の判例から次の4つの要件が満たされていない場合には、解雇が無効と判断されることがある。したがって、整理解雇を行うには、事前にこの4つの要件に沿うことが重要である。

1.人員削減の必要性(経営上の必要性)

整理解雇で人員削減を行うことには経営上相当の理由が必要となる。そして企業は、必要性について経営指標や客観的な資料に基づき、どの程度の人員削減が必要かを説明しなければならない。

企業には、従業員の雇用を守る義務と責任がある。かつて終身雇用制度が一般的であった日本では、現在も従業員は企業が自分たちの雇用を定年まで守ってくれると期待している。したがって、経営が苦しくなったからといって安易に整理解雇を行うことは許されないのである。

企業には採用権と合わせて解雇権も認められているが、人員整理を行わなければ企業の存続が難しい状況であるというように、経営上相当の理由がない場合には、解雇権を濫用したと解雇者からも世間からも批判されることとなる。

2.経費削減など解雇以外の回避措置を講じていること(解雇回避努力)

整理解雇を行う前に、企業は役員報酬のカットや希望退職者の募集、配置転換や出向など従業員にとってリスクが少ない手段を全て講じなければならない。収入を失うこととなる解雇は従業員にとって最も負担が大きい。そのため、企業はさまざま方策を尽くして解雇を回避するための努力をする義務がある。それでも経営が好転せず、過剰雇用が解消されない場合に、整理解雇が認められるのである。

解雇の回避策としては、次のようなものが考えられる。
・経費の削減
・新規採用の抑制、パートやアルバイト社員の削減や解雇、配置転換、希望退職者の募集など人員面の対策
・昇級やベースアップの停止、諸手当の減額や不支給、基本給のカット、賞与の削減や不支給など賃金面の対策
・土地や建物、株式など不用資産、遊休資産の売却

これらの対策を行うことが可能であるにもかかわらず実施せずに、いきなり整理解雇を行った場合には、解雇される従業員が納得しないばかりか、裁判では解雇権を濫用したものとして解雇が無効と判断されることがある。

3.解雇される者が合理性な基準で選定されていること(被解雇者選定の合理性)

また解雇される従業員の選定が、合理的な基準によって選定されていることも必要である。一般的には、所属部署や勤務地、企業への貢献度、勤続年数、年齢、扶養家族の有無などを考慮して選定が行われこととなると思うが、企業側の恣意的な判断ではなく、客観的で合理的な基準によって選定が行われなければならない。

例えば、日頃から会社に対して批判的な従業員だけを対象にしたり、労働組合の活動に熱心な従業員を集中的に対象としたりすると解雇権の濫用または不法労働行為として、解雇が無効とされる可能性がある。なぜなら、人選に合理性や妥当性がなく不自然であるからだ。

女性の差別的な扱いについても配慮する必要がある。男女雇用機会均等法では、事業主に対して労働者の性別を理由とした差別的な扱いを禁止している。したがって、女性のみを整理整頓の対象としたり、解雇する基準を年齢とした場合に女性の年齢を男性より低くしたり、勤続年数の基準を性別で変えたりして、男性と女性の扱いが異なることが無いように注意する必要がある。

4.解雇対象者や組合に十分説明し、協議したこと(手続きの相当性)

整理解雇を行う前には、企業は従業員または労働組合に対して、整理解雇の必要性や具体的な内容について十分に説明して、協議や交渉を行う必要がある。このような、手続きを行わずに整理解雇を行った場合には無効と判断される可能性がある。

整理解雇の手順7ステップ

整理解雇は、通常の解雇とは異なるため、実施するには手順にも違いがある。整理解雇を行う際に、必要な手順は以下の通りである。

1.整理解雇の基準の決定

まず、各種の経営指標から経営再建のために必要な解雇人数を決める必要がある。解雇する人数が少ないと再建が進まず整理解雇を繰り返すことになり、多すぎると業績が回復した時に対応できなくなる可能性が考えられる。

次に、整理解雇の対象となる者の範囲を決めなければならない。整理解雇は、解雇される従業員にとっては収入がなくなるため、経済的に深刻なリスクである。そのようなことを考慮し、扶養家族がいないなど、解雇により受ける経済的ダメージが比較的少ない従業員を選ぶのが望ましい。

また整理解雇は、経営再建の手段であるため、再建のために必要な人材は残す必要がある。対象者の範囲については、仕事上の能力がより低い者であることや会社に対する貢献度が少ない者であることも重要な判断材料である。

2.解雇日や退職金の決定

以上に加えて解雇日や退職金についても決める必要がある。退職金については、退職金規定に定められた額を支払う、所定の退職金に上積みして支払うの2つの取り扱いがある。労働法上は、整理解雇だからといって規定の退職金以上に優遇しなければならないという規定はないが、円満に整理解雇を進めるにはできる限りの優遇策を講じるのが望ましい。

3.整理解雇実施の発表と解雇対象者の決定

解雇基準を正式に決定したら、従業員に対して整理解雇を実施することを発表する。その後、解雇基準に沿って具体的に誰を解雇するか決定する。解雇基準に該当する従業員の人数が、解雇予定人数より多い場合には、どのような理由により絞り込んだのかも説明する必要がある。

4.解雇の予告

労働基準法では、「使用者は、労働者を解雇しようとする場合においては、少なくとも 30 日前にその予告をしなければならない。30 日前に予告をしない使用者は、30 日分以上の平均賃金を支払わなければならない」(第 20 条)と規定している。整理解雇の場合でも、企業は解雇日の30日前までに解雇者に対して、解雇の予告を行わなければならない。

30日前に予告できない場合は、30日分の平均賃金にあたる「解雇予告手当」を支払って解雇することが認められている。しかし、解雇者が次の就職先を探すためにもできるだけ早く解雇予告を行うべきである。

5.解雇辞令を交付する

解雇日には、解雇者に対して解雇辞令を交付する必要がある。解雇辞令の交付によって、企業と従業員の間で結ばれていた雇用契約が解除されることになる。

6.解雇後の事務手続きを正しく行う

解雇した従業員に対して、離職票の交付と年金手帳の返却を行い、公共職業安定所には雇用保険被保険者資格喪失届の提出、社会保険事務所に厚生年金と健康保険被保険者資格喪失届を提出するなど離職に伴う事務手続き行う。

7.労働組合への説明

労働組合がある企業では、労働協約で整理解雇について一定の取り決めをしているケースが多いので事前に確認が必要である。労働組合に十分な説明をしないまま、整理解雇を行った場合には、経営に対する不信感を抱かせて、最悪の場合には労使紛争となる。

労働組合と企業は整理解雇について、組合への通知事項とする、組合との協議事項にする、組合との同意事項とするなどの取り決めをしていることがある。その場合には、誠実に守らなければならない。なお、組合との同意事項としている場合でも、組合の同意がなければ絶対に整理解雇が行えないというわけではない。組合に整理解雇の必要性を十分に説明しても組合が同意しない場合には、企業側の判断で解雇を行うことができる。

業績不振による解雇には誠実な対応が求められる

業績不振により人員整理を行う場合には、人員を削減しなければならないほど経営状態が悪化していることを、従業員や労働組合にしっかりと説明することが重要である。その上で、退職金を上積みするなど、通常の退職より良い条件にすることで希望退職者を募るのが良いだろう。整理解雇は、あくまでも最終手段である。(提供:THE OWNER

文・小塚信夫(ビジネスライター)