4月30日、ネット通販最大手のアマゾン・ドット・コム(以下、アマゾン)が発表した2020年1~3月期決算は、売上が755億ドルと前年同期比で26%増加し、同期としては過去最高を記録した。だが、その一方で純利益は29%減の25億ドル、1株利益は5.01ドルとなり、ファクトセットがまとめたアナリスト予想(純利益32億6000万ドル、1株利益6.23ドル)を大きく下回ることとなった。
新型コロナ危機で売上は増加したものの、倉庫で働く従業員への危険手当や感染防止等のコストが利益を圧縮した。ちなみに、アマゾンの配送コストは世界全体で109億ドルに達し、前年同期比で49%増加している。
ウォール街では「いまやアマゾンの配送システムは米国の市民生活の根幹をなす社会インフラに変貌した」(アナリスト)と評価する声が聞かれる。だが、その一方で出店業者データの不正利用疑惑で政治的な風当たりが強まるなど順風満帆というわけでもなさそうだ。
今回はアマゾンの最新動向をリポートする。
アマゾンの「新型コロナ対策」は40億ドル以上
アマゾンは4~6月期について売上高を750億~810億ドル、営業利益は「15億ドルの赤字から15億ドルの黒字」となる見通しを示している。同社は現在の不確実な情勢を鑑み「将来を予想することは非常に困難」とし「赤字と黒字どちらにも転ぶ可能性もある」考えを示した。
アマゾンのジェフ・ベゾスCEO(最高経営責任者)は「4~6月期は40億ドル規模の営業利益を見込んでいたが、同額かそれ以上を『新型コロナ対策』に使う」と述べている。新型コロナ対策には倉庫で働く従業員等の保護具や消毒用品、体温検査、危険手当などが含まれている。全従業員に新型コロナウイルスの検査を実施する予定で、施設内の清掃も強化する計画だ。
アマゾンは従業員向けのマスク1億個を調達、体温検知器を1000台、体温計を3万1000個購入し「配送センターや実店舗の従業員には毎日体温検査を実施する」としている。
新型コロナ危機で人手不足、物流ひっ迫
1~3月期のアマゾンのeコマース事業は北米の売上が前年同期比29%増の461億3000万ドル、北米以外の国際事業は18%増の191億1000万ドルと急増した。しかし、それは同時に深刻な人手不足と物流ひっ迫をもたらしている。
アマゾンは3月に10万人、4月に7万5000人をそれぞれ募集しているが、それでもヒューマンリソースは無尽蔵というわけではない。限られたヒューマンリソースをどう振り分けるかが喫緊の課題となる中、アマゾンは異例の対応に踏み切った。その一つが「販売量を減らす」戦略である。
そもそもeコマースは、その多くが消費者の購買意欲を促すように設計されているが、アマゾンは「消費者ができるだけ買い物カゴに商品を入れない」ようなサイト設計の見直しに動いている。限られたヒューマンリソースで医薬品や生活必需品等の発送を最優先し、それ以外の注文数を減らす措置である。