ESG(環境・社会・企業統治に配慮している企業)投資やESG経営への関心が高まる中、これまでの利益の追求に焦点を置いた資本主義から、「人類と社会の幸福の追求に焦点を置いた資本主義」であるモラル・キャピタリズム(Moral Capitalism)への移行が提案されている。
こうした流れは、企業や投資家だけではなく、あらゆる人々に、経済的・社会的・精神的恩恵をもたらす可能性を秘めていると期待されており、米金融大手バンク・オブ・アメリカ(Bank of America Corporation)も「今後10年間注目すべき投資テーマ」 の一つとして注目している。
ESGが注目されている背景
Environment(環境)、Social(社会)、Governance(企業統治)を組み込んだ投資や経営が重要視されている背景には、世界的なサステナビリティー(持続可能性)意識の向上がある。
長年にわたり多くの企業が利益を優先した結果、環境問題や所得格差、労働問題といったさまざまな課題が議論されるようになった。これを「資本主義の負の産物」と見なす声もある。
だれもが自由に働けて、富を築くチャンスを得られると同時に、国の経済成長の促進につながる点が資本主義のメリットだ。しかしその結果、競争社会が生まれ、所得や教育などさまざまな格差が生じるというデメリットがある。
既存の資本主義制度下では解決できないどころか、悪化の一途をたどっているこれらの問題への取り組みは、今や企業価値や成長力だけではなく、国家の経済成長にも影響を与える重要なサステナビリティー課題である。
資本主義とモラルの共存は可能なのか?
こうした既存の資本主義のジレンマに対する解決策として、注目を浴びているのがモラル・キャピタリズムだ。