雑談をすることが心理的安全性を高める

次のポイントは「雑談」です。リモートワーク成功のカギは、雑談ができる状況をどう作り出すかにかかっていると言っても過言ではありません。

オフィスでの雑談が多い部下に困っているマネージャーもいると思いますが、私は、雑談は「相談」のきっかけとなる重要な要素だと捉えています。

部下に相談してもらうことは、部下の状況を把握するためにとても重要です。しかし、「いつでも相談に来い」と声高らかに言っていれば、部下が相談に来るようになるかといえば、そんなことはありません。

部下がマネージャーのところへ相談に来ない理由の一つは、心理的安全性が担保されていないからです。

「親身になって話を聞いてくれる気がしない」「相談して、問題がもっと大きくなったらどうしよう」「すぐに別の人に噂を流されるのではないか」というような不安要素があると、人は相談を回避する傾向があります。

ですから、その不安を解消し、相談のハードルを下げることが必要です。そこで有効なのが、雑談なのです。

リモートワークだと、オフィスよりも雑談をする機会が減りがちです。しかし、リモートだからこそ、雑談はより重要になります。

そこで、リモートワークでいかに雑談を活発にするか、当社は長年にわたってトライ&エラーを繰り返してきました。

当初は、就業時間中、スカイプをずっとつないだままにしていました。しかし、だんだんと社員数が増えてくると、声や話題が混線するようになりました。

そこで、次に試したのが、チャットツールです。

当社はシステム開発会社なので、さらに進めてRemottyというバーチャルオフィスを作りました。

リアルなオフィスの良いところを取り入れたもので、カメラを使ってチームメンバーの様子を画面に表示し、それを見ながら、チャットやウェブ会議を気軽にできます。

Remottyは他社にも提供していますし、バーチャルオフィスのサービスは他にも米国の企業が提供しているSococoなどがあり、多くの企業が導入しています。

システムを整備しても、中にはそもそも雑談が苦手な人もいます。そんな人でも相談のきっかけをつかめるよう、当社では、日記を書いてもらって自己開示をしてもらうなどの工夫もしています。

働く時間まで自由でいいわけではない

3つ目のポイントは、「働く時間を揃える」ことです。

中には「自分は夜型だから、夜に働きたい」という人もいますが、それではチームとして成果を上げることができません。

「保育園の送り迎えに行く」「免許の更新に行く」といった理由で働く時間を調整するのは自由でいいのですが、「チームで働く」という原則を明確にして、それを価値観として根づかせることが大切です。

リモートワークだからといって、いきなり時間も空間も自由にするのではなく、まずは空間だけを自由にすることから始めること。

そして、チームの人数や業態などに合わせて、チャットツールやウェブ会議などをうまく組み合わせて活用し、新しい働き方にチャレンジしていただければと思います。

倉貫義人(ソニックガーデン代表取締役社長CEO)
(『THE21オンライン』2020年04月11日 公開)

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