日本最大のIT見本市「シーテック」は今年、新型コロナウイルスの感染拡大防止に伴いオンラインで開催されることが決まった。いわゆる「ウィズ・コロナ(新型コロナとの共生)」の時代の販促活動の一形態として、インターネットによる「バーチャル展示会」への注目度が高まりつつある。
シーテックは最先端の家電やIT技術が集結する国際展示会。通常は幕張メッセ(千葉市)で行われ、昨年は14万人以上が足を運び、出展者数も前の年より9%多い787社・団体となるなど順調に規模を拡大していた。
しかし、屋内型の施設に大勢の人が詰め掛け、対面で製品の説明や商談が繰り広げられる見本市は「3密」の典型だ。こうした中、主催団体は20年にわたり幕張メッセで毎年開いてきたシーテックのオンライン化を決断した。開催概要は6月以降に発表するとしている。
シーテックに限らず、見本市は従来のような開催方法が難しくなっている。日本国内で新型コロナが終息した場合も、正常化は遠い。イベント会社にとっては強い逆風となり、関連企業が新年度の業績を見通せないケースが多発している。
そうした中、カギを握るのがオンラインだ。バーチャルの技術を駆使し、会場に足を運ばずネットで見本市にアクセスしてもらい、臨場感のある画像や説明を提供する取り組みが加速している。
イベントの企画運営を手掛けるテー・オー・ダブリュー(=TOW、4767)の梶岡二郎取締役兼執行役員は、「(新型コロナに対応し)広告代理店が相当な勢いでオンライン化に舵(かじ)を切っている」と話す。同社も展示会などのバーチャル需要を取り込み、厳しい事業環境を乗り切る構えだ。
今6月期第3四半期累計決算は、連結営業利益が前年同期比20%増の20億円に拡大したが、新型コロナの影響で通期計画(21億円、前期比5%増)は流動的。ただ、株価は昨年1月の高値559円から大幅な調整を挟み、足元でも300円台と悪材料の織り込みは進んだ。オンライン化の波は再評価につながる。
同業では博展(2173・JQ)もオンラインに力を入れていく。リアル型のイベントに関しては新型コロナでキャンセルも発生したが、前3月期末の受注残(36億円、前々期末比27%増)は「おおむね確度の高いもの」(博展の経営企画部)。また、キャンセルされた顧客に対しても、ネット上でアバター(分身)を使ったバーチャルイベントの開催などを提案しているという。
IT系ネットメディアを運営するアイティメディア(=ITM、2148)は、2009年からバーチャルイベントサービスを展開している。現況を踏まえ、展示会やセミナーのオンライン化への提案を積極化。コロナ・ショックを打ち消し上昇軌道に復帰した株価の押し上げ要素となりそうだ。
新興市場では、シャノン(3976・M)に注目したい。同社は主力のクラウド型マーケティング支援プラットフォームに、3D(3次元)画像や実写によるバーチャル空間を実現するイベントサービスを追加した。同社によれば、同サービスは4月だけで100件を超す引き合いがあったという。豊富な実績を踏まえると、ここ2年の間ほぼ1000円台の低水準でもみ合ってきた株価が意外高する可能性も意識される。このほか、オンラインでの基調講演に絡み、Jストリーム(4308・M)もマークしたい。(5月27日株式新聞掲載記事)
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