要旨

中国経済の見通し
(画像=PIXTA)
  1. 新型コロナ禍で経済活動をほぼ全面停止していた20年1-3月期、中国の国内総生産(GDP)は実質で前年比6.8%減と、統計を遡れる1992年以来で初めてマイナス成長を記録した(左下図)。一方、4月の消費者物価は前年比3.3%上昇と、1月の同5.4%上昇をピークに3ヵ月連続で低下してきた。アフリカ豚熱(ASF)の蔓延で豚肉価格が前年の約2倍と高止まりしているものの、食品・エネルギーを除くコア部分は前年比1.1%上昇と低位で安定している。
  2. 需要項目別に見ると、個人消費の代表指標である小売売上高は1-2月期に前年比20.5%減となった後、3月には同15.8%減、4月には同7.5%減と緩やかに持ち直してきている。投資の代表指標である固定資産投資(除く農家の投資)は、1-4月期に前年比10.3%減と1-3月期の同16.1%減からマイナス幅を縮め、4月単月では前年比7.3%増と前年水準を上回った模様だ。但し、輸出に関しては欧米の輸入需要減で新規輸出受注が悪化するなど先行きは暗い。
  3. 中国では5月22日~28日に全国人民代表大会(全人代、国会に相当)が開催された。財政政策に関しては、「積極的な財政政策はより積極的かつ効果的なものにする必要がある」として、財政出動は19年より3兆6千億元(日本円換算で約54兆円)拡大することになる。他方、金融政策に関しては、「穏健な金融政策はより柔軟かつ適度なものにする必要がある」として、通貨供給量(M2)・社会融資総量の伸び率を前年の水準を上回るよう促す方針が示された。
  4. 以上を踏まえて、20年の実質成長率は前年比2.4%増、21年は同5.0%増と予想する(右下図)。中国政府は“非接触型”の慎重な出口戦略を採用しているため、景気回復の勢いは緩やかなものとなるが、4-6月期にはBeforeコロナを僅かに下回る水準まで回復し、20年下半期にはそれを上回ってくると予想している。但し、新型コロナウイルスは正体不明な点が多いことから、“第1波”を超える大波が襲来する可能性があるという不確実性を抱えている。
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(画像=ニッセイ基礎研究所)