このところメディアは、結構な頻度で「ESG投資」若しくは「ESG投信」を取り上げているようだ。筆者もこの半月で「ESG投資」に関するインタビューを2度も受ける機会があった。「何か業界がこっちの方向で仕掛けているのかな?」と下司な勘繰りもしたくなるが、流石にそれはないだろうと思う。ただ良い機会だと思うので、今回は「ESG投資」について筆者なりの意見を示しておきたい。

「ESG投資」とはなにか?

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(画像=PiotrAdamowicz / pixta, ZUU online)

「ESG投信」は「ESG投資」を商品化したものである。まずは「ESG投資」から整理しておきたい。

教科書的に説明すると、環境(Environment)・社会(Society)・ガバナンス(Governance)の3つの要素を考慮して投資先を選定する投資のことで、頭文字を並べて「ESG投資」と呼ぶ。最近はフィデュシャリー・デューティー(受託者責任)だの、スチュワードシップ・コード(「責任ある機関投資家」の諸原則)だのと、機関投資家や運用会社自体にカタカナで倫理的な行動規範を強く求める風潮があるが、ESGとはそうした彼らが投資判断をする際に、投資対象に対して求める評価尺度のようなものだ。

一般的にはかつて流行ったSRI(Socially Responsible Investment:社会的責任投資)の流れを汲むものとか、その一手法というような見方をされているが、筆者が長く投資信託業界に居た経験からすると、2000年前後に流行した「ECOファンド」や「環境ファンド」といったテーマ株ファンドの投資発想がその原点にあるように思う。

その「ECOファンド」や「環境ファンド」という切り口をより掘り下げて、企業の社会的責任(Socially Responsible)という一面を加えたのがSRI投資であり、更にそこにガバナンス(Governance:企業統治)という一面を加えたのがESG投資だと捉えると、資産運用業界の手の内の変遷を理解し易いのでは無いかと思われる。これは世界的な潮流だ。

勿論、この間にこうした投資方法の具体的な運用手法についてもブラッシュアップしてきたと思われるし、多くの学術的な研究や論文発表が世界的になされ、アカデミックなものとして扱われ始めているのも確かだと思う。だが原点を辿ると、業界の識者達には怒られるかもしれないが、現場で実際に銘柄選別から売買までの実務を担ってきた者にとっては、ざっくりと前述の印象を受けるのが「ESG投資」だ。兎角投資の世界は「能書きにこだわる傾向」があるが、能書きや理屈だけでは投資は成功しないのはご高承の通りである。