東京株式市場は引き続き強弱感が対立する展開になっています。過剰流動性に支えられ、底固さを維持する一方、世界における新型コロナウイルスの感染拡大が再び加速しつつあり、投資家の警戒感が強まっています。しかし、個別には堅調な動きを続ける銘柄もあるようです。主力銘柄の中では、東京エレクトロン(8035)が7/3(金)まで4営業日続伸となり、上場来高値を更新しています。

東京エレクトロンといえば、我が国を代表する半導体関連銘柄の一角となっています。そこで本日の「日本株投資戦略」では、高値更新となった東京エレクトロンに続くような半導体関連株を抽出すべく、スクリーニングを行ってみました。

市場が業績拡大を予想する半導体関連銘柄はコチラ!?

日本株投資戦略
(画像=PIXTA)

それではさっそく銘柄の抽出を行ってみたいと思います。スクリーニング条件は以下の通りです。

(1)東証上場銘柄(新興市場を含む)であること。
(2)SBI証券のWEBサイトで銘柄検索ウインドウに「半導体」と入力すると、そこで出力される銘柄であること。
(3)アナリストが最低2名以上、業績予想を公表している銘柄であること。
(4)時価(7/3終値)が昨年末終値よりも上昇している銘柄であること。
(5)直近四半期の営業増益率が、今期の市場予想営業増益率を上回っている銘柄であること。
(6)来期の市場予想営業増益率が10%以上の増益予想の銘柄であること。

上記のすべての条件を満たした銘柄を(6)の来期予想営業増益率の高い順に並べてご紹介したものが表1となっています。

ここで改めて注目していただきたいのが、(2)の条件です。SBI証券の銘柄検索ウインドウの使い道は、コード番号または銘柄名を打ち込んで株価等を参照するだけにとどまりません。例えば「半導体」と打ち込んで検索ボタンを押すと、その関連銘柄が多数出力されるという便利な機能も有しています。社名やキーワードが半導体となっている銘柄はもちろん、「半導体製造装置」、「半導体・FPD製造装置」、「半導体商社」など、関連キーワードを含む銘柄も出力されます。今回の「日本株投資戦略」でも、当社検索ウインドウの便利な機能を使って、関連銘柄の絞り込みを行っています。

そうした半導体関連株をさらに直近四半期の業績で絞り込んでいます。直近四半期はトリケミカル研究所(4369)のみが2020年2~4月期で他の銘柄は2020年1~3月期です。いずれにせよ、世界的に新型コロナウイルスの感染拡大が加速し始めた厳しい時期を含んでおり、多くの企業が業績悪化に苦しんだ時期(四半期)です。そうした時期の増益率が、通期の市場予想営業増益率を上回っている事実は、その銘柄が半導体需要の拡大を業績に取り込んでいる可能性が大きいことを示してします。すなわち、直近四半期並みの増益率を維持できれば、今期も市場の期待に応えられる公算が大きいとみられます。

ちなみに、昨年末から7/3(金)までの騰落率でみると、日経平均株価は5.7%下落、TOPIX(東証株価指数)は9.8%下落となっています。今回はスクリーニング条件として、(4)に昨年末以降の株価上昇を入れていますが、これを満たしていることは、すでに相対的に市場をある程度アウトパフォームしており、高い評価を得ていることを示していると考えられます。

なお、ここで使った市場予想営業利益はBloombergが集計した市場コンセンサスです。表1はこの市場コンセンサスで来期予想増益率が10%以上の銘柄に絞るとともに、増益率の高い順に並べています。表1の銘柄は文字通り、市場が業績拡大を予想する半導体関連銘柄であると言えます。もっとも、「半導体」が掲載企業の業績に与える影響には個々に濃淡があるとみられます。中には、他の投資テーマとの関係が深い銘柄もあると考えられます。

市場が業績拡大を予想する半導体関連銘柄
(画像=SBI証券)

表1 市場が業績拡大を予想する半導体関連銘柄
コード / 銘柄 / 株価7月3日 / 上昇率(年初来) / 直前四半期営業増益率 / 市場予想営業増益率今期 / 市場予想営業増益率来期
<6407> / CKD / 1,929 / 5.0% / 64.4% / 36.5% / 70.4%
<4185> / JSR / 2,062 / 2.5% / -30.9% / -31.5% / 64.8%
<6967> / 新光電気工業 / 1,510 / 17.1% / 1233.6% / 215.7% / 46.2%
<6857> / アドバンテスト / 6,330 / 2.8% / 13.5% / 3.2% / 28.3%
<4970> / 東洋合成工業 / 8,340 / 90.4% / 232.7% / 11.1% / 25.5%
<6622> / ダイヘン / 3,950 / 9.1% / 27.6% / -2.6% / 23.2%
<4368> / 扶桑化学工業 / 3,880 / 19.9% / 5.6% / 0.2% / 19.8%
<6146> / ★ディスコ / 26,490 / 2.3% / 39.6% / 16.1% / 19.5%
<4369> / トリケミカル研究所 / 11,540 / 34.8% / 21.8% / 16.7% / 14.1%
<4186> / 東京応化工業 / 5,570 / 30.1% / 59.6% / 34.0% / 13.8%
<4063> / ☆信越化学工業 / 12,475 / 3.4% / 10.4% / -6.5% / 10.0%

※会社公表データ、BloombergデータをもとにSBI証券が作成。★印の銘柄は当社「テーマキラー!」でご紹介している銘柄です。また、☆印の銘柄は当社企業調査部がレポートを発行している銘柄です。直前四半期営業増益率は、前年同期比で計算しています。

なぜ今「半導体」なのか?

冒頭で触れましたように、東京株式市場は全般的には、引き続き強弱感が対立する展開になっています。しかし、個別には堅調な動きを続ける銘柄もあるようです。主力銘柄の中では、東京エレクトロン(8035)に象徴される半導体関連銘柄もその代表例になるかと思われます。

東京エレクトロンは世界的な半導体製造装置メーカーで、一時は同業の世界最大手企業である米アプライドマテリアルズ(AMAT)との統合が実現直前まで進みました。株価は昨年末23,925円から18%弱も上昇し、7/2(木)には一時28,200円と上昇来高値を更新し、7/3(金)も続伸する展開となっています。世界的に5G(第5世代通信網)、AI(人工知能)、IoT(モノのインターネット)への投資が本格化する中、半導体需要の本格的な拡大が予想されています。

もっとも、そんな東京エレクトロン自体は表1の銘柄として抽出されませんでした。直近四半期(2020年1~3月期)だけみると営業利益は前年同期比8.2%減益です。このペースでは2021年3月期の市場予想営業増益率である13.1%増を達成するのは難しいかもしれません。しかし、事業環境は明るいようです。

すなわち、世界の主要半導体関連銘柄を組み入れ銘柄とするフィラデルフィア半導体指数(SOX指数・図1)は6/10(水)に過去最高値を更新しました。同指数はその後はやや反落しましたが、ここにきて再び高値更新をうかがう展開になっています。上記の東京エレクトロンが最高値を更新していることもあり、投資家の半導体関連株への関心も高まっています。SBI証券のWEBサイトで、テーマ株への投資をアシストする「テーマキラー!」では、投資テーマとしての「半導体」が7/3(金)には「急上昇ランキング」の第1位になっています。

日本半導体製造装置協会(SEAJ)は7/2(木)、2020年度の日本製半導体製造装置の販売額が前年度比7%増の2兆2,181億円になるとの見通しを発表しました。表1で昨年末以降の値上がり率トップは東洋合成工業(4970)ですが、先端半導体の製造に必要なフォトレジストを手掛ける同社への注目度は高く、7/3(金)も10%を超える上昇となっています。

すなわち、半導体関連銘柄に注目することは、タイミング的にも十分理由のあることであると考えられます。

図1 半導体SOX指数(月足)

図1 半導体SOX指数(月足)
(画像=Bloombergデータを用いてSBI証券が作成。)

図2 東洋合成工業(4970・日足)

図2 東洋合成工業(4970・日足)
(画像=当社チャートツールを用いてSBI証券が作成。)

※本ページでご紹介する個別銘柄及び各情報は、投資の勧誘や個別銘柄の売買を推奨するものではありません。
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鈴木英之
SBI証券 投資調査部

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