(本記事は、カレン・ウィッカー氏の著書『つきあいが苦手な人のためのネットワーク術』CCCメディアハウスの中から一部を抜粋・編集しています)
あなたのソーシャルメディア・プロフィールのスタイルとは?
キャリアビルダー(求人検索サイト)の報告にあるように、いまは雇用マネージャーの7割がソーシャルメディア・アカウントを見て候補者選びの参考にする時代だ。ソーシャルメディアで活動を積み重ねて、あなたという人間を表現するにはどうすればいいのだろう。
誰にでも効果のある万能な策はない。ソーシャルメディアを使う楽しみの少なくとも半分は自己表現だ。ただし──何にでも「ただし」はつきものらしい──、あなたのフォーカスがキャリア、職探し、専門的な能力の開発にあるのなら、自分自身の何を世のなかに発信しているかに注意を払う必要があるだろう。
『ハーバード・ビジネス・レビュー』誌の研究で、マネジメントを専門とするアリアーヌ・オリアー=マラテレとナンシー・P・ロスバード両教授が仕事をもつ多くの人を調査し、オンライン・ペルソナをつくるための異なる4つの戦略を明らかにしている。教授たちはまず、自分にとって「最も自然なオンライン行動」は何かを描写するよう対象者に求め、そこからオンラインでの自己表現のための4つの戦略を導き出した。
・“オーディエンス”──プライベート用と仕事用で別のアカウントを使用する。プライベート用は非公開。 ・“オープン”──信憑性と透明性をいちばん重視する。心に浮かんだことを何でも投稿する。 ・“コンテンツ”──プロらしさが醸し出される、「慎重に検討した」コンテンツのみを投稿する。 ・“カスタム”──個々のグループ、オーディエンス、リストに合わせたメッセージを書き、コンテンツを分類する。
何をするか、自分をどう見せるかは、あなたがいまどんな人生を送っているか、どんな仕事に就いているか、職業上の目標は何かに大きく左右される。役者と弁護士なら、前者のほうが選択の幅は広い。重要なのは、自分は何を本物と感じるか、何が楽しいか、どんなスタイルが目標の実現に役立つかだ。私の知り合いには、ビジネス関連の投稿やシェアにかたくなにこだわるコンサルタントや、自慢話ばかりしている会社員がいる。
さて、5日間の自己表現エクササイズと、オンラインで職業人としての最高の自分を表現するための戦略を紹介したところで、こんどはいちばん使いやすい投稿スタイルと、ネットワークづくりのためのそれらの活用方法について見ていこう。
●ミニマリスト
ミニマリストは、重大ニュースから、いつまでも色あせないストーリー、口コミ動画やミームまでのあらゆるものを、ほとんど、いや、いっさいコメントをつけずに拡散し、何をどれくらい発信するかを慎重に選ぶ傾向にある。このアプローチは、弱い絆とのつながりを維持するのにもってこいだ。相手が興味をもちそうな記事や情報を送るといいだろう。
つながりづくりの方法は幅広い関心事について有益な情報を共有する。たとえば、多様性と包摂性、仕事の未来、コンテンツ・ブランディングなど。
●コメンテーター
自説にこだわり、ひじょうに多くのテーマについて感じたことを伝えなければ気がすまない人。激怒したコメンテーターをきっとよく見かけると思うが、ほかにも誰かの幸福のために、あるいは悪ふざけで、カスタマーサービス(特に不快な経験)、企業責任、ビジネスや社会にまつわるその他のトピックについての意見をバーチャルの世界に発信したい人もいる。自分の考えをいおうと思うなら、仕事用に利用しているソーシャルサービスでどんな発言をし、何を共有するかを戦略的に考えなければならない。
つながりづくりの方法は有益な情報を十分に盛り込んで、関連する事業方針や慣行に関するコメントをする。
●社会事業家
このタイプは、よいニュースや心温まる話を共有してホッとする瞬間を、そしてたくさんの「おおっ!」という瞬間を提供したがる。つねにとてもポジティブで、職業人としての自分とも難なく一体化できる。
つながりづくりの方法は慈善活動に熱心な企業のよいニュースを共有し、奨学金、働きながら学ぶプログラム、効果的な地域社会問題プロジェクトへの支持を訴えること。
どんな投稿をするか、何に「いいね」するか、それが重要!
こうした自己表現が本当に重要なのか、いまひとつ確信がもてないかもしれないが、それは必ずあなたのネットワークの外側の人たちの目に触れる。その理由は少なくともふたつある。
1 リクルーター、ヘッドハンター、学校や仕事のスカウトは、さまざまなソーシャルメディアで、人材探しの途中でたまたま見かけた名前や、誰かが推薦した人の投稿につねに注目している。彼らの仕事はリンクトインを見て終わりというわけではない(まだ納得できない人のために一言。先ほど引用した2017年のキャリアビルダーの調査によると、リクルーターがオンラインで見つけられない候補者を面接する可能性は57%低い)。
2 あなたの専門が料理だろうと人工知能だろうと、頼れる存在として知られたければ、たとえちょっとした表現でも、公の場ではイメージを高める可能性も台無しにする可能性もある。自分が発しているシグナルにいつでも注意を払うことが重要だ。講演者やコンサルタントや採用候補者を探している人は、仕事一色のアカウントは求めていない。
ただし、本気でソーシャルメディアをネットワークづくりに活用したければ、個人としてのプロフィールが職業上の目標や願望にそぐわないと思われてはいけない。一流のイベント・プランナーとして認められたいなら、オンラインでの印象は、少なくともプレッシャーの下で仕事をし、やり遂げる能力があることを裏づけるものでなければならない。SNSがはしご酒の話題ばかりだったら、それは……。
絵文字を侮らない
アップルが2008年にはじめてアイフォーンのキーボードに導入して以降、絵文字の利用は広まった。絵文字はあなたが発信するものに表情を与えてくれる、気軽に使える効果的な視覚言語だ。
●クリエイティブな句読点
インターネットがいかに言語を拡大し、変化させるかをテーマに執筆活動をおこなうリンギストのグレッチェン・マカロックは、絵文字を表現に色彩と人間味を加える「クリエイティブな句読点」と評している。「両手を後ろで組んだまま抑揚のない声で話をされたら、落ち着かないと感じるでしょう。ありきたりの標準英語だけで書かれた文章もそれと同じようなものです」
●言葉では物足りないとき
『ファスト・カンパニー』誌の先日の記事は、ビジネスの場面であってもいつも言葉だけでこと足りるとは限らないと指摘している。「リモートワークがあたりまえになっているチームは、しゃれの利いたいい回しや皮肉を必ずしも理解できるわけではない。実際に会ったことがないというのが大きな理由だ。だから、絵文字が感情を表現する手段として人気になったのも当然なのだ」
●会話を締めくくるもの
絵文字は一般に、ソーシャルメディアや携帯メールで使うものだが、やあるいは(多少くだけた、それでいて気持ちが伝わりやすい別の絵文字)は、Eメールのスレッドを締めくくるのにも便利だ。
数集めゲームではない
2018年初頭、『ニューヨーク・タイムズ』紙の大きな特集記事「フォロワー工場(The Follower Factory)」が、「世界じゅうのつながり欲求はフォーチュン500企業の地図を塗り替え、広告業界を一変させたばかりでなく、新たなステータス指標をも生み出した。それはあなたを『フォロー』し、『いいね』し、『友達』になる人の数である」と指摘した。オンラインの積極的な活用が本章のテーマである以上、次はいかに多くのフォロワーを得る必要があるかを熱く語るにちがいないと、みなさんは思い込んでいるかもしれない。
そんなことはしない!ソーシャルメディアが広く浸透した結果、いま世のなかには「フォロワーを増やす」のに役立つハウツー記事やビジネスの宣伝文句があふれている。あなたも積極的なエンゲージメントをもたらす「インフルエンサー」になれますよ、というのだ。
こうした過剰なフォロワー数重視の風潮が、フォロワー数を増やしたい人のためにフェイクフォロワーを売買する巨大なグローバル・ビジネスを生んだ。前述の記事はこれを「ソーシャルメディア詐欺の世界的市場」と呼んでいる。
なぜ人はこんなことをするのだろう?プロフィールをよく見せたい。知名度を上げたい。ビジネス上の影響力を強化したい。そしてなにより、もっとお金を稼ぎたい。さらに、有害なbot(コンテンツを盗む、オンラインのディスカッション・フォーラムに偽の書き込みをするといった悪質な行為を働くようつくられた自動ソフトウェア)の台頭が詐欺を増加させ混乱を大きくしている。
もちろん、多くの人に知ってもらうのはすばらしいことだ。だが、よく聞いてほしい。決してフォロワーを買ってはいけない。いかさま(しかもツイッター、フェイスブック、インスタグラムは定期的に偽アカウントを削除しているので、あなたの悪事も露呈する可能性がある)を働き、悪い輩になりすまされるセキュリティ上のリスクを負ってまで、わざわざやるような値打ちはない。
あなたを「崇拝する」バーチャルな人たちを集めるよりも、あなたが世のなかに発信するものの質のほうがはるかに重要だ。あなたのしていることに価値があり、人々の心に刺されば、おのずと注目が集まるものだ。
時間をかけて認知度を上げ、フォロワー数を増やす手本になるのが、ダビダ・レダリーだ。彼女が設立したヘルシー・メイヴェン(The Healthy Maven)はオンライン・メディア企業であり、ブログ、ポッドキャスト、ツイッター(フォロワー数5200人)、インスタグラム(43800人)、ユーチューブ・チャンネル(8800人)に多くの読者やリスナーや閲覧者を引きつけている。
以前に私は、インフルエンサー(複数のメディアでリーチ力を発揮している、レダリーもそのひとり)を探したことがある。フォロワーの数に執着してなさそうな人はいないかと思っていたところ、彼女は期待を裏切らなかった。「本物のブランドをオンラインで確立するためのありがたくない真実(The Slow Truth to Building an Authentic Brand Online)」と題した投稿で、レダリーは次のように述べている。
「どうしてあっちよりこっちの写真のほうが『いいね』が多いのか、なぜ誰もコメントしないのかと、私たちはついとらわれてしまう。けれどもそれは、壮大な時間のムダだ。(中略)実生活をいんちきでまがいものの人間関係で満たそうとしないのと同じように、オンラインの世界でも、心のこもらない「いいね」のために行動しなければならないという、ばかげたプレッシャーに振り回されてはいけない」
【POINT】 あなたのしていることに価値があり、人々の心に刺されば、おのずと注目が集まるものだ。
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