(本記事は、カレン・ウィッカー氏の著書『つきあいが苦手な人のためのネットワーク術』CCCメディアハウスの中から一部を抜粋・編集しています)

ウィークデーの義務

パーティー
(画像=Olga Sapegina/Shutterstock.com)

社内での駆け引きや、自分がどう思われるかを考えると、チームとのランチやグループ旅行に参加しないというのは難しい。もしさぼったら、悪名高き「チームプレーヤー失格」の烙印を押されかねない。だから、行こう。そこで心を通わせる会話ができればもうけもの。そして、イベントが終わったら、コーヒーデートやウォーク・アンド・トーク(散歩しながら話をするミーティングの一種)の機会をつくって、必ずひとりずつフォローアップしよう。

一対一でなら、チームメンバーの関係性の理解に本当の意味で力を貸してくれる同僚がいる可能性がある。進行中のプロジェクトについて正しい情報をもっている人がいるかもしれないし、参考になるキャリアの話を聞かせてくれる人がいるかもしれない。

そのような交流をいつもの習慣にすること。あなたが詳しく知りたいのは誰の役割、またはチームか。(役職やチームに関係なく)興味を引かれるのは誰だろう?知り合いになり、自分のネットワークに加わってほしいのはそういう人たちだ。私がそれを学んだのは、グーグルに入ってまだ間もないころだった。

私はさまざまなプロジェクトを通じて社内の数多くの人やチームと出会うことができた。ときおりの短い交流を重ね、多くのすてきな人たちとの友情や職業上のつながりを長いあいだ保ちつづけている。

【POINT】
コーヒーデートやウォーク・アンド・トークの機会をつくって、ひとりずつフォローアップしよう。一対一でなら、本当の意味で力を貸してくれる同僚がいるかもしれない。

おぞましき会社のパーティ

はじめて本書の企画を出版社に売り込んだとき、私はここ数年、会社の休日パーティに出席するのは遠慮していると話した。規模が大きくなりすぎて、知らない人だらけになったからだ(彼らの配偶者はあたりまえとしても、一度も見たことがない人たちまでいる)。この発言はミーティングでおおいに注目を集めた。目的は正しくても、参加を強制されるパーティを楽しんでいる人がごくわずかなのは、明らかだ。

グーグルの休日パーティの参加者の数が、従業員その他数千名にまでふくれあがると、知っている人に会える可能性は低くなった。それでは当然、そうした巨大イベントに参加する意欲はますますなくなっていく。意味のある交流ができるチャンスも、オープンバー(パーティなどでアルコールを無料で提供するバー)がある可能性も少ない。お酒が入ったほうが気が楽になるので、たいていの人が食べずに飲んでばかりいる羽目になる。

家にいたいもうひとつの理由は、私は独身者なので、パーティにいっしょに行って、印象に残らない出会いや仕事関連のムダ話の攻撃に耐えてほしいなんて、とても友人にはお願いしたくないからだ(代わりに頼みごとを聞いてくれたら行ってもいいという友人がいたら、それもひとつの手だが)。とにかく、私のいいたいことはわかると思う。正直なところ、そんなものに行くくらいなら犬の散歩がしたい!

働いている組織がもっと小さければ、パーティはもう少し(だけ)楽しいかもしれない。その場にいる人のほとんどが知り合いだろうし、運がよければチームと交流したり、真の友情を育んだりもできるだろう。いいことだ。ただし、忘れてはいけない。そこはあくまでも仕事の場である。先日、ヴァイス(30ヵ国に支部をもつデジタルメディア)に掲載された記事に次のような記述があった。

「仕事のパーティは、表向きはいっしょに仕事をしている人たちとの交流イベントである。(中略)参加は自由だから、給料は出ない。(中略)しかし、現実には参加しないという選択肢はない。『仕事』と『仕事以外』の境界線があいまいになると、社内の駆け引きが表面化するからだ」

そうしたシナリオでは、社内政治に奔走する人やキャリアを自慢する人が現れる。「人の行動を目にすると同時に、自分も人から見られる」ことは、どうしたって避けられない。そんなところに出かけていくなんて憂鬱だ。そんなあなたへのアドバイスは、早く行って会場を2度歩き回り、出席をアピールする必要がある人に必ずあなたの姿を見せてから帰宅するか、どこかでおいしい食事をとって遅めに会場に入ること。後者の場合もさくっと会場を回って退出しよう。

結論:嫌でたまらないこと、労力の割に大きなメリットが得られないことをして時間をムダにするのはやめよう。ただし、それが義務なら、短い時間だけ顔を出そう。そうしておけば出席したといえるし、ポイントも稼げる。

アリソン・グリーンは、運営するサイト「アスク・ア・マネージャー」で、仕事上のさまざまな問題に的確なアドバイスをしている。彼女の意見もほぼ同じだ。「1時間だけ出席するんです。顔を出して、上司の近くを何度か歩き回ってあなたがいることを印象づけたら、帰りましょう。子どもがいる人は、それがいい口実になります」

参加が自由な場合

絶対参加のミーティングのほかにも、出席したほうがいい会議やワークショップがある。いまの仕事のために知識の幅を広げたい、将来のために人々とつながりをつくりたい。目的はさまざまだろうが、そうした集まりの意味はなんといっても人に会うことにある。

IDカードであなたを品定めし、あなた越しにいま来た人を見ている(こんな人はよくいる)騒々しい人たちに囲まれながらも、そうした時間を自分にとってできるだけ有益なものにしなければならない。

●会議を乗り切る

仕事関連のイベント、幅広い業界の会合、スキル育成ミーティング。何であろうと、そこにいるすべての人のご機嫌をとり、話をする義務はない。ロボットに変身する必要などないのだ。むしろ、たとえば、新しい知識を得る、話してみたい人や企業だけに的を絞るなど、大勢の人のなかですごす時間で達成したい2、3の目標を戦略的に立てて行動しよう。そして勝利を宣言し、家に帰ろう。

数日間続く会議や見本市に行くとしよう。出かける前に、まずはスケジュール確認。心から興味を引かれるセッションを選ぶ。できれば、たくさんの人に囲まれても元気にすごせる時間帯に開かれるものがいい。

朝型人間の私は、午前中に頑張るのがいつものパターン。午後になると勢いがなくなってくると自覚しているからだ。コーヒーを飲んだり歩き回ったりする余裕がもてるように、私はたいていセッション開始の1時間前までに行く。知り合いのなかには、昼休みの直前に来て人々をよく観察し、いっしょに食事をして午後のセッションをともに受けられそうな人を探すほうがいいという人もいる。あるいは、最後のセッションに参加し、終了後のカクテル・パーティに30分顔を出したいと思う人もいるだろう。

自分に合うどんなやり方でもいいが、少なくとも1時間は会場で人々と会話を交わそう。それくらいあれば、状況を見きわめてひとりかふたりと手早くつながりをつくることができるだろう。

会議のスケジュールによっては、基調講演を待つあいだやグループ・セッション中に少し人と話ができる場合もある。会議モードに入った人はたいてい短い雑談に快く応じてくれる。

最後に「後日ご連絡いたします。名刺をいただけますか?」といって話を終えるといい(互いの会議アプリに位置情報を入力する、リンクトインのつながりを求めるなど、都合のいいやり方なら何でも)。IDカードや名札をつけて出席する会議なら、あとから電話するよりも、まずここで話をしましょうという雰囲気を出そう。そう、アイコンタクトをとって。

印象深い2017年のエッセイ「心配性の内向型人間の私が、大規模イベントをどう乗り切っているか(How This Anxious Introvert Handles Large Events)」で、ベンチャー・キャピタリストのハンター・ウォークは、とくに半日以上も大勢の人々に囲まれる機会を悪くない時間にするために、有効な策をいくつか紹介している。そのうちのひとつが、ちょっと休憩してエネルギーをチャージすること。

会場の周囲を歩き回るもよし、ひとりでお酒を飲むもよし。何かをして気分を変えてから会場に戻ろう。もうひとつが、誰かとその場を離れること。ウォークは、「僕は人と歩きながらいろいろな話をするのがとても好きだ。イベント会場を出ることもある。夜のイベントだとなおさら効果的だ。いっしょにすごしたいと思う人を見つけたら、酒が入って騒々しい人たちの輪から離れて、そう、座って2、30分話をする。それからまた喧噪のなかに戻るんだ」と述べている。

TRY IT OUT やってみよう

●イベントで誰かに話しかける

会議は、ちょっとした雑談をするのにうってつけの場所だ。間がもつし、コーヒーバーにいるときや講演の開始を待っているあいだなら、なおさら都合がいい。休憩中、私は努めてせかせかした様子を見せず、人に対してオープンな印象を与えるように心がけ、携帯電話はもっても画面は見ずに、会場を歩き回る。

入場や軽食を並んで待っているときが、あいさつを交わす絶好の場だ。互いの勤務先(IDカードが読めれば)がわかり、短いやりとりができればしめたもの。終了前に何らかのつながりを結ぶことができたら、フォローアップのためにも名刺を用意しておくと役に立つ。会話のきっかけとなる言葉をいくつか紹介しよう。

・「現在の会社に勤めて何年になりますか?」は、最初の一言にもってこいだ。そのあとに、当たり障りのない賞賛の言葉をつづけるともっといい。「御社はすごい/魅力的/盤石ですね」

・相手の素性が不明な場合は、昔からこんなふうにいっておくとまちがいがない。「どういう理由で参加されたのですか?」「これまでのところ、会議についてどう思っていますか?」「楽しんでいますか?」のような、「はい、いいえ」で答えられる質問ではなく、自由に答えられる質問をすること。

簡潔な自己アピールができるよう準備しておく。ただし、いまの仕事や将来目指すキャリアを短い言葉でうまく説明できなければ、ほかの人に話してもらってかまわない。

●規模の小さい非公式の会合

終了したばかりの継続研修コースで会った人たちと連絡をとりつづけたい、従業員の多様性を推進するグループがほかの企業の従業員の話を聞きたい、作業チームが社外の慈善プロジェクトの実施を検討したいなど、非公式の集まりにはさまざまな目的がある。

やる気があれば、最後までやり通すのに苦労するようなことはまずない。気乗りしないのは、その会合からは求める成果があがらない、あるいはタイミングがよくないサイン。そんなときは参加しなくても問題ない。

●継続的な学習

参入したい分野や興味のある企業の情報を集めたければ、将来を考えたときに役に立ちそうな自由参加のイベントは多い。著者の話を聞いていま話題のトピック(デジタル、医療、経済の安定など)の概要を知り、理解を深められる場合もある。

私の知るキャリアコーチは、あなたが給与をもらう会社員でなくコンサルタントならなおのこと、3ヵ月に1度はそうしたイベントに行くようにすすめる。社会活動への参加の機会だし、つねに最新の情報を得ることができるからだ。

本書で何度か述べたように、オープンな心で、仕事に役立つイベントに好奇心をもつのはいいことだ。キャリア強化のための(参加自由の)イベントに行こうか行くまいかを決めるときは、次の質問を自分に問いかけてみよう。

・好きな人たちは出席するか?(少なくとも、その人たちといっしょにすごしてその夜を切り抜けることができる)

・話を聞きたい講演者はいるか、または本当に興味のあるトピックか?私の場合、「モバイル決済の将来」や「ロボットと仕事」をテーマにしたセッションがあれば、シリコンバレーで1週間すごせるので、おもしろい見解をもつ講演者や知識豊富なインタビュアーがいるかが決め手になる。

・楽しそうな場所で開かれるか?先ごろ私は、世界的な信頼性の問題に関するマスコミ向けのイベントに出かけた。テーマに魅かれたのもさることながら、それが開催される新しいイベント・スペースを見てみたいと思ったからだ。

・仕事の役に立つか?私はあらゆる業種の企業と仕事をしているため、さまざまな話題について業界の最新の見解を把握しておく必要がある。人工知能企業を相手にコンサルタント業務をしたければ、その分野の問題に精通しておくと好都合だ。だから私は、多くの情報が得られる「敷居の低い」イベントを探している。

要は、行ってみること。ときどきでもかまわない。外に出て新鮮な空気を吸うのはいいものだ。

つきあいが苦手な人のためのネットワーク術
カレン・ウィッカー(Karen Wickre)
グーグル社に10年近く在籍したのち、ツイッター社で編集ディレクターを務めたグローバル・コミュニケーションのエキスパート。Wired.comにコラムを寄稿し、いくつかのジャーナリズム委員会にも所属している。LinkedIn、Medium、およびその他のソーシャルメディアを通じ40,000人近くのフォロワーと連絡先を持ち、その多くはインフルエンサーとして知られている。サンフランシスコ在住。本書は初の著書。

※画像をクリックするとAmazonに飛びます
ZUU online library
(※画像をクリックするとZUU online libraryに飛びます)