2017年9月に日本でのサービスを開始した台湾発のライブ配信アプリ「17LIVE(イチナナライブ)」は約1年でシェア日本一となり、その後も急成長を続けている。とりわけ今年2月から4月にかけてはライバー(ライブ配信者)の契約者数が約10倍にも伸びた。新型コロナウイルスの感染拡大のため、リアルな場でのライブができなくなった人たちが、17LIVEの利用を始めたのだ。17LIVEで月に3万円以上の報酬を得たライバーは実に6,701人にも上る(今年2月1日~4月30日調査)。17LIVEで収益を上げるポイントを、運営会社である〔株〕17 Media Japanの大淵公晴氏に聞いた。

17LIVE,大淵公晴
(画像=17LIVE,大淵公晴)

――17LIVEは、視聴者がライバーに「ギフト」を贈ると、ライバーが報酬を得られる仕組みになっている。いわゆる「投げ銭」だ。同様の仕組みを持つライブ配信アプリは他にもある中で、17LIVEの特徴の一つはライバーのジャンルが幅広いことにある。

大淵「ミュージシャンだけでなく、マジシャンなどの一芸を持つ人やアスリート、その他、多種多様な人たちがライブ配信をしています。せんちゃんという70代のおばあちゃんのライバーもいて、配信内容は普通の日常の様子なのですが、根強い人気があります。

当社のミッションは”Empower Artist, Entertain the world.?才能を輝かせ、世界をワクワクさせる?”。ここで言うArtistとは、何かを発信したいすべての人のことです。”誰もが何かのアーティストになれる”と考えています」

――現在は有名芸能人もライブ配信をしており、特に新型コロナウイルスが流行してからは芸能人からの問い合わせも増えているという。しかし、有名芸能人にライブ配信をしてもらって認知度を高めるという戦略は取ってこなかった。

大淵「ラジオからビートルズが生まれ、テレビからマイケル・ジャクソンが生まれ、YouTubeからジャスティン・ビーバーが生まれたように、ライブ配信から次の才能を世界に送り出したい。ですから、『これからの人』たちにライブ配信をしていただき、その人たちが夢を実現するのを視聴者が応援する場として盛り上げる工夫をしてきました。

盛り上げるというのは、ライブ配信の画面を演出する機能も含みますが、それだけではありません。例えば、一流のミュージシャンの担当をするバックバンドやスタッフ陣で運営するリアルな音楽フェスを企画し、そこに出演する権利をかけて、ライバーたちにライブ配信で競ってもらったりしています。会場には音楽業界関係者も招いて、その目に留まれば、デビューできる可能性もあります。すると、自分が応援するライバーが出演できるよう、視聴者は熱心に応援するわけです。

CDデビューしたいライバーもいれば、雑誌に載りたいライバーもいますし、お金を稼ぎたいライバーも、有名になりたいライバーもいます。ライバーたちがどんな夢を描いているのかを具体的に聞いて、その実現につながるイベントを企画しています」

――では、数多くいる17LIVEのライバーの中で、視聴者に応援され、ギフトを贈ってもらって収益を上げるためには、どうすればいいのだろうか?

大淵「様々な要素があって、私たちも『これだ!』と言うことはできないのですが、例えば、ただ見栄えが良ければ人気が出る、というわけではありません。他の人がやっていないことをやったり、構成に工夫を凝らしたりと、努力をしているライバーは人気が出てきているように思いますね。特に重要なのは視聴者とのコミュニケーションです。ライブ配信だと、対面しているときよりも人間性が伝わると言う人もいます。先ほど挙げたせんちゃんが人気なのも、視聴者からのコメントに返す言葉に温かみがあるからでしょう」

――これは、リアルなライブと大きく違う点だという。

大淵「観客が入場料を払って聞きに来るリアルな音楽ライブだと、観客とコミュニケーションを取らずに、ただ音楽を聞かせるだけでも成立します。けれども、ライブ配信だと、それでは視聴者があまりギフトを贈りません。新型コロナウイルスの流行が始まった頃には無観客ライブを配信することもよくありましたが、それはそれで意味があるので今後も続けていくものの、収益を上げるという面では難しい。ライバーと視聴者のインタラクティブなコミュニケーションのツールがギフトなんです。曲の合間にコメントをくれた視聴者個々人の名前を呼んで言葉を返すなど、視聴者とコミュニケーションを取ることで、ギフトを贈ってもらいやすくなります。

新型コロナウイルスが流行してから、それまで受け付けていなかった企業アカウントも開放して、店頭でやっていたイベントなどをライブ配信していただけるようにしたのですが、その場合も、『店頭と同じことをしても収益は上がりませんよ』というお話をさせていただいています。有名人の方でも収益が上がらないことはよくあります。

もっとも、有料配信もできるようにしていて、その場合はリアルなライブの入場料と同様の形で収益を上げることができます。また、当社では『HandsUP』というライブコマースサービスも提供していて、そちらで収益を上げる方法もあります」

――17LIVEならではの、ライバーが収益を上げやすくする仕組みもある。

大淵「ライバー一人ひとりに担当マネージャーをつけています。当社(日本法人)には160~170人の社員がいるのですが、その約半数がライバーを担当するマネージメントの部署に所属していて、ライバーに悩みがあればいつでも聞いたり、定期的にライブ配信を視聴してアドバイスをしたりしています。もともと芸能事務所に勤めていた者や、美容に詳しい者、ゲームに詳しい者などがいて、それぞれの強みを活かしてライバーを支援しています。成功した施策の事例やトラブルの解決事例なども社内で共有して、ライバーの活動に還元しています。ライバーのコンテンツ作りにまで、当社の社員が入り込んでいるのです。先ほど、ライバーの夢を聞いてイベントを企画しているというお話をしましたが、それもライバー担当チームが中心となって行なっています。

ライブ配信は、そのための機材やソフトウェアを使っている人もいますが、スマホだけでもできます。ただ、画角などにはノウハウがあるので、それを初心者に教える講習会も開催しています。エフェクターなどの機材の使い方を学ぶ講習会や、未成年のライバーもいるので、『SNSにアップする写真には位置情報を残さないように』といったネットリテラシーの講習会も開いています。新型コロナウイルスの流行前は、50人くらいの規模の講習会をリアルでしていたのですが、今はオンラインに切り替えました。

今後、さらにライバーが増えてくると、1人のマネージャーで多くのライバーを担当できるようにする必要があるので、そのために個々の知見をさらにノウハウ化したり、チャットボットを導入したりといった施策もしています」

大淵公晴(17 Media Japan ビジネスデベロップメント ジェネラルマネジャー)
(『THE21オンライン』2020年06月15日 公開)

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