(本記事は、今泉清氏の著書『ONE TEAM!ラグビー日本代表に学ぶ最強組織のつくり方』日本能率協会マネジメントセンターの中から一部を抜粋・編集しています)

スクラム
(画像=PIXTA)

相手を受け入れる姿勢から「ONE TEAM」は始まる!

ここまでは、ラグビー日本代表チームがいかにして「ONE TEAM」を築き上げていったのかについて述べてきた。そのヒントが、少しでも掴めただろうか。

ここからは、さらに「ONE TEAM」になるための具体的な方法について、私の経験を交えながら踏み込んでいきたい。

まず、私なりに今回のワールドカップを振り返ると、「なぜ、ラグビーの〝ラ〟の字も知らなかった多くの日本人が、これだけの盛り上がりを見せたのか?」ということを記さずにはいられない。

少し前までは、多くの日本人からこんな声が聞こえてきたものだ。

「ラグビーって、ルールがよくわからない……」

「日本代表なのに、外国人だらけっておかしくない?」

たしかに、野球やサッカーと違ってラグビーはプロ化が進んではいるものの、日本国内ではまだアマチュアスポーツだ。

以前から根強いファンはいるものの、ニュージーランドのようなラグビーが文化であり、生活の一部として根付いているわけでもない。

だが、日本で開催されたワールドカップは私の想像をはるかに超えるほどの盛り上がりを見せた。いったいなぜ?

ラグビー弱小国と呼ばれた日本代表チームが予選プールを全勝で初のベスト8進出を決めたからだろうか。たしかに、それも一理あるかもしれない。

だが本当の理由は、言語も文化も違う、さまざまなルーツを持つ7か国15人の海外出身選手を含む31人で構成された日本代表チーム一人ひとりが互いを受け入れ、日の丸が袖に縫われたジャージーに身を包み、「ONE TEAM」になって懸命に戦う姿に多くの日本人が感動したからではないだろうか。

「はじめに」でも少し触れたが、ラグビーは他のスポーツの代表資格とは異なり、以下の3つの条件のうちひとつでも当てはまれば日本代表の資格が得られることになっている。

  • 出生地が日本である
  • 両親、または祖父母のうちひとりが日本出身である
  • 日本に3年以上継続して居住している

三番目の「日本に3年以上継続して居住している」については、2020年12月31日から5年以上の条件に変わることになっている。

いずれにせよ、こうした条件のもとに約半数にも及ぶ海外出身の選手たちも含めて日本代表選手たちは構成され、信頼と責任を持ってそれぞれの役割を果たし見事なまでの「ONE TEAM」ぶりを発揮したのだ。

こうした日本代表チームの話から、日本で働くビジネスパーソンが学べることがきっとあるはずだ。

ビジネスという世界においても、「グローバル」「ダイバーシティ」という言葉が浸透しているが、それだけではない。

たとえ日本人同士であっても、年齢や性別が違うだけで考え方や行動パターンだってさまざまに違う。そうした人たちが同じ会社、部署で働いているわけだ。

さらに言えば、働き方改革によって私たちの働き方すら多様化してきている。

そんななかで日本代表チームのように「ONE TEAM」になって成果を上げていくために、まずは「相手を受け入れる」ということが重要なのである

社長とミドルリーダー、ミドルリーダーと社員にしても、一人ひとりによって価値観は違う。

その価値観を理解することは難しいが、受け入れることは今すぐにでもできることだと私は思っている。

選手が互いを受け入れたことによって、日本人の強みと外国人の強みが融合することで、日本代表チームは何倍ものパワーを手に入れることに成功したように、会社組織でもさまざまな考え方や価値観を持つ人間たちが互いを受け入れることで、より強いチームが生まれるのである

言葉に出して「違い」を知ることで一体感は強固になる!

このように、多くの海外出身選手を交えて構成された日本代表チームは一体感を示し、「ONE TEAM」はより強固なものとなった。

だが、その道のりのなかでヘッドコーチのジェイミー・ジョセフも含め、多くの選手間で時に衝突するほどの意見の食い違いがあったという。

さまざまな個性やアイデンティティーを持った人間が集うなかで成果を上げていくためには、できるかぎりはっきりと言葉として口に出し、互いの意見をすり合わせて明確化するコミュニケーションが必要なのである。

こうした経験は、私自身も痛いほど味わってきた。これは、私がサントリーで現役選手だったころのエピソードだ。

当時のサントリーには早稲田大学、明治大学、日本体育大学、青山学院大学など、ラグビーの強豪校で活躍したプレーヤーが数多く在籍していた。

ある日の練習で「飛ばし横」というサインプレーの練習をしていたときのことだ。

飛ばし横とは、スクラムハーフからスタンドオフにボールが渡り、スタンドオフから第1センターを飛ばして第2センターにボールを送り、フルバックがその横に走り込んでボールをもらうという単純なサインプレーだ。

サントリーの練習でフルバックだった私はこのとき、明治大学出身の第2センターの選手からボールをもらう手筈だったが、走り込んだ私とその選手の間にボールがポトンと落ち、そこで当然プレーが止まった。私は彼に近づいてこう言った。

「何してるんだよ、ちゃんと俺に放れよ!」

すると、明治出身の選手から思いもよらない言葉が返された。

「今泉さんこそ、僕のすぐ横に来なきゃダメじゃないですか!」

「はあ? お前何言ってるんだ! 飛ばし横なんだから俺が外のスペースに走るから、素早くそこにパスしろよ!」

そこからはお互いに一歩も引かず、他のメンバーを巻き込んでの大激論。そこへ、右ウイングの日体大出身の尾関弘樹がこのように口火を切った。

「我々のチームは早稲田でも明治でもないんです。サントリーとして飛ばし横を確立していく必要があるんじゃないでしょうか」

この発言にみんなが納得して、具体的な飛ばし横のサインプレーについて話し合いをすることができた。ここではっきりしたのが、飛ばし横というごく簡単なサインプレーでも早稲田と明治ではまるで考え方や動きが違ったことだった。

そして、ここであるひとつの疑問が湧いてきた。

飛ばし横という、ごく単純なサインプレーでもこうした違いがあるならば、他のプレーでも違いがあるかもしれないということだった。

そこで、その日はその練習が終わってからみんながミーティングルームに集まり、ホワイトボードに自分たちがやっているサインプレーやフォーメーションなどをすべて書き出し、メンバー全員の〝頭の中〟にあるものを意思統一していく作業に没頭した。

その甲斐もあって、この年は強敵だった神戸製鋼に勝つという快挙を成し遂げることができた。

会社や部署といったチーム組織のなかでも、こうした教訓は同じだ。

暗黙の了解で「わかってくれるだろう」と安易に考えていると、そこにはとんでもない落とし穴が潜んでいるかもしれない。

チームを一体感ある強固な組織にするためには、ときに、激しくぶつかり合うかもしれない。だが、それでも言葉に出してしっかりと意思統一していくことが重要なのである。

ONE TEAM!ラグビー日本代表に学ぶ最強組織のつくり方
今泉 清
元ラグビー日本代表、人材育成コンサルタント。1967年生まれ。大分舞鶴高から早稲田大学に入学。天衣無縫ともいえるプレーぶりから早稲田ラグビーを代表する選手として活躍、在学の4年間で関東大学対抗戦優勝2回、大学選手権優勝2回、日本選手権優勝1回と早稲田ラグビー黄金期をつくる。1990年対抗戦明治との優勝決定戦でのロスタイム70メートル独走トライは今もラグビーファンには語り継がれている。大学卒業後はラグビー王国ニュージーランドでプレー。一流のラグビーを経験した後、名門サントリーに加入。1995年にはラグビーW杯南アフリカ大会日本代表に選出されるなど華々しい経歴を持つ。引退後は、母校・早稲田大学ラグビー部のコーチに就任し、清宮克幸監督の右腕として結果を出すと、その後サントリーのプレイングコーチに就任、後進の指導にあたった。現在は、ラグビーを通じて取得した『組織論』をテーマにした人材育成コンサルタント及び講演家として活動しているほか、CSテレビチャンネルJ SPORTSで世界のラグビー解説者を務めている。著書に『オールブラックス圧倒的勝利のマインドセット』(学研プラス)、『勝ちグセ。』(日本実業出版社)などがある。

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