株式や債券をはじめとする金融市場で取引を行っている人には、自分自身の資産運用を目的としている個人投資家と、金融機関などに所属している機関投資家に大分類できます。後者は機関投資家と呼ばれており、言わば投資のプロフェッショナルです。

機関投資家は金融市場の動向にも影響を与えているので、投資経験がある程度豊富な個人投資家たちは、機関投資家の動向に関するニュースにもアンテナを張ってきたことでしょう。一方で、投資を始めたばかりの個人投資家たちは、機関投資家がどのような運用を行っているのかについて、興味津々ではないでしょうか?

そもそも機関投資家とは、どういった大口投資家のことを指すのか?

資産管理
(画像=wipas/stock.adobe.com)

機関投資家に該当するのは、銀行や証券会社、保険会社、投資信託の運用会社、投資ファンドなどです。また、公的年金の原資を運用しているGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)も然りで、その資金の規模がグローバルに見比べても巨額であることから、世界最大の機関投資家と呼ばれています。

また、東京証券取引所における売買シェアが約7割に達している外国人投資家の大半は、海外の金融機関や年金基金といった機関投資家です。同市場における個人投資家のシェアは2割程度にすぎず、機関投資家がほとんどを占めているのが実情です。

そうなると、当然ながら彼らの動向が市場全体に対してインパクトを与えやすいと言えるでしょう。したがって、個人投資家が自分自身の運用を考える際にも、機関投資家の情勢を観察しておくことが重要です。

機関投資家はそれぞれの運用方針やルールに基づいて投資している

個人投資家の場合は、自分なりの方針を固めたうえで綿密に計画を立てて投資を行っている人もいれば、特に自分なりの方針は定めず直感的に売買している人もいることでしょう。これに対し、機関投資家はそれぞれの運用方針やルールに従って運用を行っています。

たとえば、先程も取り上げたGPIFは第4期(2020年4月〜2025年3月)中期目標として、「最低限のリスクにとどめたうえで、長期的に年金積立金の実質的な運用利回り1.7%(表面上の利回り−名目賃金上昇率)を確保する」ということを掲げています。そして、その目標値や近年の経済情勢を踏まえ、国内外の株式と債券に25%ずつ均等に投資する基本ポートフォリオを策定しています。

GPIFによれば、第3期中期目標(2015年4月〜2020年3月)の基本ポートフォリオを策定した局面と比べて金利低下で国内債券の利回りが低下している状況を踏まえ、第4期中期目標ではその割合を低下させた一方で、相対的に金利が高い外国債券の割合を増加させているそうです。いずれにしても、GPIFのような年金基金の運用は長期スパンと安定的な運用を大前提として方針などが定められています。

対照的に、銀行や証券会社の運用は単年ベースなど、もっと短期のスパンで行われているケースが多いようです。保険会社は契約者に支払う保険金の原資を増やすことを目的に投資を行っており、銀行や証券会社と比べれば長めのスパンの運用が中心で、年金基金と同様に安全性や安定性が重視されています。

こうした方針の違いによって、株式のみならず国債をはじめとする債券、REIT(不動産投資信託)など、運用の選択肢はそれぞれの機関投資家によって異なってきます。また、株式に投資する際にも、売りたい、あるいは買いたいと思ったときにすぐに行動が取れるように流動性を確保するため、個別銘柄は一定額以上の時価総額に達しているものに対象を絞ったり、日経平均やTOPIX(東証株価指数)といった指数に連動するETF(指数連動型上場投資信託)を売買したりするケースが主流のようです。

機関投資家のルールを参考にしつつ、個人投資家の強みを生かそう!

金融市場では、巨額の資金を動かして市場全体に大きな影響を及ぼしうる機関投資家のことを「クジラ」と呼んでいます。金融界で最も巨大な「クジラ」とされているのはGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)です。

そういった主たる機関投資家の動向をニュースなどでチェックしておくことは、個人投資家が自分自身の売買判断を行う際にも重要なポイントとなってくるでしょう。また、機関投資家を一つの手本として、自分なりの投資ルールを決めておくことも大切です。

一方、個人投資家にも強みはあります。例えば、年金基金は長期のスパンを原則としているとはいえ、機関投資家が決算のような期限に縛られているのに対し、個人投資家にはそういった制約がありません。時価総額の面から機関投資家が手を出せない中小型の銘柄にも投資できます。

さらに、1980年代に自分が運用するファンド(投資信託)の資産額を2,000万ドルから140億ドルにし、伝説の投資家と崇められるピーター・リンチも、その著書『ピーター・リンチの株の法則』で次のような趣旨のことを述べています。

「個人投資家の強みは、自分がよく知っている企業や業界に投資できること。その強みを生かせば、プロをしのぐ運用成績があげることも可能」

この言葉や機関投資家などの「プロ」の運用方針を参考にしながら、自分のスタイルを探求していきましょう。(提供:Wealth Road