(本記事は、寺岡孝氏の著書『不動産投資の曲がり角で、どうする? ーー損切りするか、保有し続けるか。』クロスメディア・パブリッシングの中から一部を抜粋・編集しています)

不動産投資は賃貸業であり賃貸経営

不動産投資
(画像=PIXTA)

不動産投資にはその対象物として、「区分マンション」や「一棟モノのアパート・マンション」といったものから、商業ビルやオフィスビル、ホテルや民泊医療・介護施設、物流倉庫等、様々な需要に対応するものがあります。

どれも建物を他人に貸し、その賃料を得ることを生業とするわけで、その基本は「不動産賃貸業」と言えます。

大家の資格

不動産賃貸業は他人にモノを貸すので、そこに貸し借りの契約行為が存在します。

不動産を持っているオーナー側は、建物のメンテナンスや修繕、家賃の滞納や未払い金の回収など、様々な事象に対応することになります。つまり、不動産投資は「投資」という名称がついていながら、基本は「大家業」あるいは「賃貸業」であることを認識しないといけないのです。

いわゆる大家業を専業で行える人は、基本的には不動産賃貸業を熟知していることや時間的な余裕が求められます。したがって、建物の貸し借り以外に何をしなければいけないのかをよく知っていて、それに対応できる時間がなければ大家業を勤めるのは難しいことです。

例えば、物件を持っていても空室では当然、家賃収入は入ってこないため、入居者探しにマーケティングやプロモーションをしなければなりません。入居者が見つかれば、その契約の手続きと共に入居前の準備、実際に家賃収入が入ってきたら、後々、収支計算をすることになります。物件の管理や、設備のチェック、入居者からのクレームの連絡があればすぐに対応を迫られます。空室リスクは常にあるので情報を収集し、賃貸経営の知識はもちろん、トレンドを随時チェックし、人脈作りも大切です。自分ではできない仕事は業務委託するにしても、リフォーム関連業者や税理士や弁護士とのやりとりをするには、それぞれの担当者と対等に話し合える知識が求められるのです。

不動産投資の曲がり角で、どうする? ーー損切りするか、保有すし続けるか。
不動産投資の曲がり角で、どうする? ーー損切りするか、保有すし続けるか。
(画像=不動産投資の曲がり角で、どうする? ーー損切りするか、保有すし続けるか。)

「本業が別にあって時間がない」あるいは「大家業の内実についてよく知らない」など、不動産投資での大家業を専業することが難しい人は、その仕事を肩代わりしてもらう必要があります。

それが、いわゆる不動産賃貸の管理業を行っている業者で、委託するという行為が発生するわけです。

とくに、サラリーマンが不動産投資を行うと、大家業ができない人が大半ですから不動産賃貸の管理委託をしてもらうことになります。

その場合は、相場として家賃の5%程度を管理委託料として支払い、タスクを肩代わりしてもらいます。それ以外の仕事は自分で行う必要があります。

すべての管理を委託するサブリースならば、家賃の10%前後を管理委託料も含めたサブリース料として支払うことになり、自分の手取りが減ります。ローンを組んで家賃収入を返済に見込んで物件を購入しているなら、こうした管理委託に関する手数料も長期的な収益を考えていくうえで考慮すべき点です。大家業の内実をほとんど知らず、「何もしなくても、たとえ空室になってもきちんと収入が入ってくるのでお勧めですよ」と言われるがまま言い値の管理委託料を払ってしまうと、赤字が一向に減らない賃貸経営の状況に陥ってしまいます。

そもそも不動産投資とは、どんなスキームなのか

不動産投資
(画像=metamorworks/stock.adobe.com)

それでは、不動産投資とは、どのようなスキームとなっているのでしょうか。その仕組みについて、一般的なものを簡単にご説明しましょう。

スキーム

不動産投資は、不動産を貸し出して家賃収入を得るという単純なスキームです。

その手順は次のようなものです。

  1. 不動産(一棟アパート・マンションや区分マンションなど)を購入する(金融機関でローンを組む=他人資本を活用する)
  2. 賃貸物件として貸し出す
  3. 家賃収入を得る(インカムゲインを得る)
  4. 家賃収入でローンを返済する(だから家計には響かない)
  5. 売却する(キャピタルゲインを得る)

どの不動産投資会社のパンフレットを見ても、おおよそ似たような説明がなされています。

「不動産投資とは、他人資本(銀行ローン)を利用して、家賃収入(インカムゲイン)をローン返済に充て、資産を構築する投資である」といった具合です。

「年金代わり」または「ローンでキャッシュフロー極大化」

そして、2つの方針をアピールします。

ひとつは、「購入した不動産を持ち続け、ローンを完済後に丸々入ってくる家賃収入を年金代わりにする」というもの。これは、区分マンションのセールストークでよく見られるものです。

もうひとつは、「一棟マンションを購入し、キャッシュフローを極大化して次々に別の一棟マンションを買い進めていく」というもの。いわゆるレバレッジを効かせた投資ができるということで、ローンを組めるだけ組むやり方です。

生命保険代わり

物件の購入でローンを組む際には「団体信用生命保険」に加入することが推奨されます。団体信用生命保険とは、住宅ローンを契約している人がローン返済中に死亡、あるいは働けないほどの重度の障害を負った際、ローンの残りを代わりに払ってくれる住宅ローン専用の生命保険のこと。それに加入しておけば、生命保険としての機能があると謳われています。

このように、不動産投資会社のパンフレットには「節税効果」「生命保険代わり」「年金代わり」「資産をたくさん持てる」といった言葉が並んでいます。それによって、将来への不安や期待に対してソリューションを打ち出しているかのようなイメージが描かれているのです。以前までは、「キャピタルゲイン(売却益)」という言葉も共に並んでいましたが、それを強調する不動産投資会社は少なくなりました。今は、物件価格そのものが高騰している時代のため、売却益が発生しにくい現状を踏まえて、どこも安請け合いできないようです。

成功ポイント

「不動産投資を成功させるためのポイント」としては、

不動産投資の曲がり角で、どうする? ーー損切りするか、保有すし続けるか。
(画像=不動産投資の曲がり角で、どうする? ーー損切りするか、保有すし続けるか。)

などが、重要であると解説されています。

パンフレットや不動産投資の本などでは、次の点がおしなべて強調されています。

  • 空前の低金利時代にあっては、お金を借りる方が有利
  • 自己資金は必要ない。フルローンを最長期間で組むのがいい
  • 不動産投資は実物投資なので、ローリスク・ミドルリターンである
  • 時間のないサラリーマンには適した投資である

とくに、資金のない20代~30代をターゲットにした場合、必然的にこのようなことが強調されるのだと思います。

パンフレットを見てみると、資金がなくてもローンを組んで「ローリスク・ミドルリターン」で運営していく投資商品であるイメージが強調されていることがよくわかります。

一見すると株や投資信託といった投資商品と並ぶ投資商品に見えますが、そこに大きな落とし穴があるのです。

不動産投資の曲がり角で、どうする? ーー損切りするか、保有し続けるか。
寺岡 孝
1960年東京都生まれ。アネシスプランニング株式会社代表取締役。住宅コンサルタント。住宅セカンドオピニオン。大手ハウスメーカーに勤務した後、2006年にアネシスプランニング株式会社を設立。住宅の建築や不動産購入・売却などのあらゆる場面において、お客様を主体とする中立的なアドバイスおよびサポートを行い、これまでに2000件以上の相談を受けている。東洋経済オンライン、ZUU online、スマイスター、楽待などのWEBメディアに住宅、ローン、不動産投資についてのコラム等を多数寄稿。著書に『不動産投資は出口戦略が9割』『学校では教えてくれない! 一生役立つ「お金と住まい」の話』(クロスメディア・パブリッシング)がある。

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