(本記事は、寺岡孝氏の著書『不動産投資の曲がり角で、どうする? ーー損切りするか、保有し続けるか。』クロスメディア・パブリッシングの中から一部を抜粋・編集しています)

不動産投資でカモられないための相談事例

不動産投資
(画像=PIXTA)
Q. 【区分マンションの相談事例】
新築ワンルームマンションを保有すべきか売却すべきか。
T.Tさん 〈年齢〉31歳 〈年収〉620万円 〈貯金〉1,000万円

5年前に新築ワンルームマンションを3件購入しました。1件は大阪1,890万円(ローン1,650万円、変動金利2.875%、35年)、2件は京都で1,820万円(ローン1,810万円、変動金利2.4%、35年)のものです。いずれも駅から10分前後の立地です。家賃収入は1件につき6万5,000円。返済額はそれぞれ月々6万3,000円で管理費はそれぞれ7,700円くらいです。

節税や年金対策などの説明を受け、納得して購入したつもりですが、結婚など自身の環境が変化したこともあり、今後も保有するべきなのか、悩んでいます。

年34万円ほどの持ち出しがあって赤字です。今後、金利が上昇したときなどのリスクも考慮すると、家族に迷惑をかけてしまうのではないかと不安でたまりません。

税金のことを考えて5年は保有してから売却を検討する方がよいのか、場合によっては損切りしてでもすぐに売却をしてしまう方がよいのか、あるいは5年後も保有し続ける方がよいのか? と考えても答えが出ません。

アドバイスをお願いします。

A.
大阪圏のマンション投資は、物件価格が東京都内と比べる割安感がありますが、最終的な出口が取りにくいのが現状です。

新築時の賃料も比較的高めですが、築10年以上になると徐々に値下がり傾向になります。大阪市内でも場所によれば需要もあり、投資の維持・継続が考えられますが、エリアによってはワンルームの20平米前後で賃料が5~6万円という現実があります。

また、大阪市内では更地があればワンルームマンションかホテルの建築用地となっているのが現状で、賃貸住宅はかなり供給されており、需要とのバランスが悪く飽和状態にあります。そういう見方ができる理由のひとつは、新築の賃料の方が築浅の賃料よりも安い賃料設定で入居募集を行っているからです。したがって、入居者は移動民族のように新築物件に転居してしまいます。

大阪市内は狭いエリアですから、多少遠方に転居しても、地下鉄などの利便性があるので入居者にとっては影響が少なく、安価な賃料などの条件のいい住まいに移っています。

そう考えると、築浅の売値が高く、賃料も高い期間に売却しておく方がよいでしょう。

また、京都市内の物件は、市内の大学の学生の需要が根強くありますが、大阪市内同様にエリアによっては厳しいケースもあります。

したがって、保有物件の調査後に売却か保有かの判断にはなるでしょう。

以上の点を踏まえて、現状では5,270万円の借入れがあり、年収から見ると住宅ローンは借りにくい現状です。

もしも今後、自宅を買うという話になった際には、投資用のローンがあるために融資不可の場合も想定されますので、所有している意味がないとお考えになるのであれば、早期に売却しておく必要があります。

加えて、年間で34万円の持ち出しがあるとのことですが、5年間で170万円、10年で340万円ものムダな支出がある状態です。保有を前提とする場合には、将来に渡って支出があることも考慮すべきでしょう。

中小企業,人材不足,解決,成功事例
(画像=(写真=Zodiacphoto/Shutterstock.com))
Q. 【一棟モノのマンションやアパートの相談事例】
マンション投資をして成功しますか。
Y.Tさん 〈年齢〉35歳 〈年収〉1,000万円 〈貯金〉800万円

業者からの投資用マンション一棟購入の勧誘がありました。厳選して仕入れているマンションだそうで、立地その他悪くはないように思います。

しかし、どのマンションも家賃で回収するのに約20年かかり、その先のことは時代も含めわかりません。マンション投資というものはそれほどよい投資とは思えなくなりました。

実際のところ、20年くらい前に始めて成功している人はいるのでしょうか?

A.
家賃で回収するのに20年間かかるということは、賃料相場に比べ、物件の価格が比較的に高い可能性があります。

不動産投資は長期間にわたって一定の収益を求めるものと考えたいところですが、個々人の場合では、大手の不動産会社のような巨大資本をもとに投資を行うことは難しいため、一定の大きな収益を上げることはできません。

むしろ、どちらかと言えば一定の期間に稼がせて、あるときに売却し売却益を求めるというケースが多いものです。

ただ、どういった場合であれ、いかに安く物件を購入するかは重要なポイントになり、リスクの軽減になります。

また、業者が厳選して仕入れているということは、物件価格に業者の利益が乗っている可能性は高く、賃貸の管理までもこの業者が行うとなれば、業者が儲かるだけになってしまいますので注意すべきです。

可能であれば、物件探しや賃貸管理などは業者任せにせず、ご自身で探索などをされて収益が上がるようにしておくべきでしょう。

こうした点を考慮して、投資の是非を検討されてはと思います。

不動産投資の曲がり角で、どうする? ーー損切りするか、保有し続けるか。
寺岡 孝
1960年東京都生まれ。アネシスプランニング株式会社代表取締役。住宅コンサルタント。住宅セカンドオピニオン。大手ハウスメーカーに勤務した後、2006年にアネシスプランニング株式会社を設立。住宅の建築や不動産購入・売却などのあらゆる場面において、お客様を主体とする中立的なアドバイスおよびサポートを行い、これまでに2000件以上の相談を受けている。東洋経済オンライン、ZUU online、スマイスター、楽待などのWEBメディアに住宅、ローン、不動産投資についてのコラム等を多数寄稿。著書に『不動産投資は出口戦略が9割』『学校では教えてくれない! 一生役立つ「お金と住まい」の話』(クロスメディア・パブリッシング)がある。

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