(本記事は、寺岡孝氏の著書『不動産投資の曲がり角で、どうする? ーー損切りするか、保有し続けるか。』クロスメディア・パブリッシングの中から一部を抜粋・編集しています)

アフターコロナで変化する不動産市況

不動産投資
(画像=PIXTA)

コロナ禍で働き方が変わる

コロナの影響で働き方が大きく変わってきました。

私のいるオフィス近辺では製薬会社や金融関係の大手企業が多く、今年の4月以降は日中、街に人が歩く姿はほとんどありません。

緊急事態宣言が出てからは、いわゆるテレワークや在宅ワークが大手企業では進んでおり、ある大手企業に勤めるお客様は会社に来たのは月に1、2度ということです。

いままでの働き方は都心にあるオフィスに毎日、通勤することが前提で、それは普遍的なものでした。

私もサラリーマン時代は毎朝、会社に出勤するということが当たり前で、しかも就業規則にある始業時間よりも30分や1時間前からオフィスに出向き、早朝から会議や個別ミーティングなどを行っていた時代を思い出します。

個人的には就業規則の始業時間前に出社するのは非常にナンセンスなものと感じていましたし、インターネット環境が進むにしたがって、わざわざ会社に来てミーティングなどをしなくてもいい時代は来ると思っていました。

それが、意外なきっかけで在宅を前提とした働き方の時代がやってきたのです。

職住近接の都心住まいはアフターコロナで必要か?

世界中を恐怖に陥れた新型コロナウイルスですが、ご承知の通り、いままで経験したことがない生活をしていかなければならない現実に直面しています。

リモートワークや在宅ワークといった働き方の変化で、職住近接の住まいは不要になる可能性が出てきました。

無駄な通勤時間やその苦痛は在宅ワークに慣れてしまうと、二度と戻りたくはないものです。

さて、そんな在宅ワークの到来は自らの住まいにも影響が出てきています。

とくに、子どもがいる家庭では学校にも行けないので、家族全員がずっと家にいることになります。

そうなると、手狭なマンション住まいでは在宅ワークができる場所を確保するのは非常に難しい環境になります。

まして、共稼ぎで奥様も在宅ワークとなれば、ワークをする場所が2カ所も必要になります。となれば、マンション住まいではますます難しい環境になり、かなりのストレスがかかることになります。

大金のローンを組んで買った都内のマンションの役割は、あくまでも都心にあるオフィスに通うことが大前提でした。したがって、かなり無理なローンを組んで買っている共稼ぎ夫婦が多いはずです。

ところが、コロナ禍の状況下では、この都内のマンションでは、その役割を果たすどころか、かえってストレスの溜まる住まいと化しているのです。

マンションの間取りの大半は3LDKで、都心に近づくにつれて2LDKの手狭な間取りになります。仮に3LDKのマンションに住んで在宅ワークを想定してみると、夫婦2人だけであればなんとかなりますが、子どもが2人もいると大変です。

ニューノーマルが定着し始めると、例えば、都心のマンション住まいという形態は不適格な住まいになりかねません。そもそも「都心のマンション住まいをする」という想定は夫婦共働き、子どもが1人ないし、2人、マンションのタイプは3LDKで専有面積が概ね60~70㎡程度。日中は家族の大半が家にいない想定で考えられた住まいですから、到底、夫婦2人がそれぞれ在宅ワークをするスペースはありません。

こんなマンション住まいで、仮に夫婦が共に在宅ワークとなれば、かなりストレスがかかるのは至極当然で、狭いマンション住まいと在宅ワークの共生は難しいでしょう。

このような日常生活が1カ月も続くと住まいの住み替えを検討し始めます。

では、在宅ワークを前提で住まいを考えた場合、マンションには限界があることが気づかされ、部屋数が多く取れる戸建ての方が、家の中でワークスペースとプライベートスペースの区分けがしやすいことがわかります。

アフターコロナの住まいはマンション?それとも戸建て?

マンション,戸建て,比較
(画像=PIXTA)

そもそも、都心のマンションに住むということは、基本的に寝に帰る場所だけであって、仕事場で自宅を利用するという概念はありません。

したがって、都心にできる限り近く、しかもアクセスが優れているという点だけが高い評価を受けていましたので、住まいの広さには目を瞑り、とにかく立地ありきでの住まいを優先させていたのです。

ところが、在宅ワークなどを強いられることになると、マンションの場合には個室の少なさが在宅ワークには致命的で、向かないことが明らかになりました。

そこで、考えられるのは都心から少し離れた戸建ての住まいの見直しになります。

現に、コロナ疎開と言われるように、都心から那須や軽井沢といった別荘地に引きこもる人が増えましたが、マンションと比べると部屋数が多い戸建てに目が向き始めるのは至って自然なことでしょう。

一戸建ての間取り次第で快適な在宅ワークが可能に

では、一戸建ての住まいではどういった間取りが在宅ワークに向くのでしょうか?

従来の一戸建ての間取りは2階建ての場合、1階に和室とLDK、それに洗面、トイレ、浴室、2階が寝室と子ども部屋2部屋というパターンが一般的でした。

ところが、近年の住まいでは断熱性能や外部からの遮音性能がよくなり、広いワンルームの中にLDKや和室コーナーなどで1階の間取りが構成されていたり、2階に行く階段はリビングを経由してからでないと2階に上がれないというような間取りに人気があります。

こうした間取りに加えて、在宅ワークをするスペースを取る間取りを考えてみましょう。

在宅ワークではリモートやTV会議なども対応しなくてはなりません。

そうなると、一部屋ぶん余計につくるという考え方になります。

新たな部屋をつくるとなれば、カンタンにできる方法としては広い部屋を建具で仕切って簡易的に在宅ワークスペースをつくってみてはと思います。

例えば、リビングルームの一角に3帖程度の空間を建具で仕切るとか、寝室に同様な形でスペースをつくってみるといいかもしれません。

また、これから住宅購入を検討する場合には、こうした在宅ワークができるスペースがある、あるいはつくることができる住まいがいいでしょう。

不動産投資の曲がり角で、どうする? ーー損切りするか、保有すし続けるか。
(画像=不動産投資の曲がり角で、どうする? ーー損切りするか、保有すし続けるか。)

階段の踊り場やホールにカウンターを設け、PCやプリンターを置き天井からはロールスクリーンを下げてTV会議ができるようにするというような設計、設備が必要でしょう。

いわゆる「ハウスオフィス」という場所を自宅に設ける発想が、これからの住まいには必要不可欠になりそうです。

サラリーマンといえども、自宅で活動する個人事業主的なスタンスで、住まいづくりが必要な時代になりそうです。

オフィス需要も激変するか?

不動産業界では街に多くの人を集めることで、そこの不動産価値を上げることがひとつのビジネス戦略でした。

大手の不動産会社ではホテルやオフィス、ショッピングモールなどをある一定の場所に集約させて、そこで発生する賃料で収益がうまく上げられるようにオフィスビルや商業ビル計画をする、そうすることで不動産価値を上げるというビジネスモデルです。

例えば、若者に人気のある渋谷ではオフィスの床面積が不足気味でしたが、これからのオフィス需要は大きく影響を受けることとなります。

コロナ問題が起きてからは一定の社会的距離を保つことが必然とされ、コロナが収束できたとしてもニューノーマルが定着すれば、広いオフィスは不要になります。

現に、都心のオフィスはすべて解約してしまい、社員全員が在宅ワークに変わったという企業もあります。

そうなると、広いオフィスを貸し出しすることで多額の賃料を得ていた不動産会社は方向転換を余儀なくされるでしょう。

森トラストの2018年12月時点での調査では23区の大規模オフィス(延床面積10,000㎡以上)の供給量は過去20年で4番目の高水準だったとのことです。

コロナを機にこうした大規模オフィスの需要が明らかに減少傾向になれば、不動産価格には大きな影響を及ぼすことになります。

インバウンドメインのホテル需要は厳しい状況に

今年のはじめぐらいまではインバウンドでホテル業界は活況に満ちていましたが、コロナ以降は壊滅的な打撃を受けています。

ホテル業界ではこれまでの危機と比べると、コロナの影響は多大なるものであり、外出を控えるように言われてしまうと宿泊需要は必然的になくなります。

また、インバウンドの需要はほとんどゼロに等しく、例えば、大阪市内のホテルでは稼働率がゼロ%というホテルもあるとのことでした。

ホテルは宿泊需要や出張需要があっての業界ですが、コロナのようなパンデミックはホテル業界にとっては最大のリスクということになります。

中でも、インバウンドの宿泊需要を見込んで、多くの民泊や中小規模のホテルや宿泊施設が建設されました。

不動産投資の中で、宿泊需要は居住用の需要に比べると、利回り的にはホテルなどの方が稼げるという点で不動産業者はこのマーケットを勧めてきました。そのため宿泊需要がゼロの状況下になることは誰も想像はしていなかったのでしょう。

例えば、コンパクトホテルと称して運営していたファーストキャビンという会社が今年の4月に破産申請をしました。

カプセルホテルと同感覚ではありますが、全国展開もして話題となっていた会社の出来事だけに宿泊需要の厳しい一面を見ることになりました。

観光都市でのホテル需要はすでに過剰気味とも言われていた最中に、コロナの影響をもろに受けることになり、今後もファーストキャビンのような事例は増加する可能性が高いでしょう。

ところが、こうした環境下を想定していたホテル会社があります。

皆さんご存じのアパホテルのアパグループです。

アパホテルはコロナの無症状・軽症者用のホテルとして行政に10棟程度貸し出すと2020年7月時点では聞いています。元谷代表の話では手元資金の多さとホテル自体を自己資金で建設している点で他のホテル会社と異なるところです。

中でも、借入完済と自己資金で建てたホテルが70棟近くもあるとのこと。

借金がなければ、ホテル自体の運営経費だけで、宿泊で使ってもらえばそのまま収益として上げられるわけです。

この点は他の企業とは大きく異なる点です。

このように、投資対象に過多な借金を組んでしまうと、万が一のことが起きた場合にはお手上げ状態になることがおわかりになるでしょう。

元谷代表は宿泊事業での最大のリスクは戦争とパンデミックだと言っておりました。

自然災害も大きなリスクのひとつではありますが、ある意味、それは局所的なリスクで、戦争とパンデミックが世界中に広がる方が恐ろしいということです。

アパホテルのように、借金を最小限にして事業を展開することは不動産投資には鉄則と言えます。

おそらく今後、コロナ禍で経営が厳しいホテルが出てくれば、アパホテルには買収や銀行から売りの話の打診があるでしょう。

そうなれば、かなりの低いレートでの資金調達ができ、しかも価格は高値で買うことはありません。

銀行から見れば、アパグループは不動産の担保余力が多大なために、融資条件はかなり優遇されることになるでしょう。

宿泊需要をメインとした不動産投資を行っていると言えるアパホテルには、お金と不動産の運用を学ぶべきところが多々あります。

安く買って高値で売る、借りたカネは資金ができたらさっさと返す、非常に単純なことなのです。

不動産投資の曲がり角で、どうする? ーー損切りするか、保有し続けるか。
寺岡 孝
1960年東京都生まれ。アネシスプランニング株式会社代表取締役。住宅コンサルタント。住宅セカンドオピニオン。大手ハウスメーカーに勤務した後、2006年にアネシスプランニング株式会社を設立。住宅の建築や不動産購入・売却などのあらゆる場面において、お客様を主体とする中立的なアドバイスおよびサポートを行い、これまでに2000件以上の相談を受けている。東洋経済オンライン、ZUU online、スマイスター、楽待などのWEBメディアに住宅、ローン、不動産投資についてのコラム等を多数寄稿。著書に『不動産投資は出口戦略が9割』『学校では教えてくれない! 一生役立つ「お金と住まい」の話』(クロスメディア・パブリッシング)がある。

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